元就活生、異世界に馴染み始める。
「まいどー」
なんとかピンチを切り抜けた私は意気揚々と店を後にした。
「なんでこんな事に……」
「兄貴ぃ……元気出して下さい」
お兄さんは自分の財布であろう皮袋の中を眺めながら意気消沈している。
「どんだけ食ったらあの店で銀貨一枚になるんだよ……」
「えーとッなー。スープが3杯に黒いパンが5つ、あと肉を焼いたやつが3つやったかなー」
「「どんだけ食うんだよ……」」
私の説明に二人はほぼ同時に溜息を吐いた。
そんなに食べた覚えはないけど、確かに3回目の注文の時は従業員も苦笑いしてたようなー。
「あ、そうや!」
私が思い出したように声を上げると、二人はビクッと反応した。
「服屋さん知ってる? そんな高くないとこ」
「し、知ってはいるけどな」
「そんじゃ、連れてってッ!」
そう言って、私は再び微笑む。
***
お兄さんに連れてきてもらったお店で私は店主に相談を始めた。
勿論、彼らには店の前で待っているようにお願いしてある。
「おっちゃん。この服いくらぐらいになるー?」
「ふむ。見た所、上等な布を使った服ですな」
「当たり前やんッ! 私の大事な一張羅やからな!」
店主の話に私は胸を張ってそう述べた。
彼は先程からジロジロと服の至る所を観察している。
「……これなら、金貨2枚……いや3枚でどうかな?」
「ん〜私はあんま詳しないけど、もうちょっと高くならんかな?」
「むむむ、これ以上は……」
「じゃあ一回別の店でも聞いてく「4枚でどうじゃ!」」
店主の反応に私はにっこりと微笑む。値段交渉は関西人(私たち)の十八番なのだ。
なぜ私が一張羅を売ろうと思ったかというと、コレが目立ち過ぎるからだ。
お兄さんたちと歩いてる時もそうだったが、通行人に物凄く見られる。
なので取り敢えず、動きやすくて、ここに馴染む服装で色々調べようと思ったのだ。
「じゃあそれで! あと女の子が着るオススメの服ってありますか?」
「それじゃったら、エプロンドレスはどうじゃ?」
そう言って、選んでくれたのがいかにも町娘っという感じの、ブラウンのワンピースにエプロンが付いたような服だった。
「じゃあそれと、短パンを」
「ズボンのことかい?」
私の言葉に、店主は疑問を持ちつつも私のサイズにあるズボンを選んでくれた。
「ほほー。スカートの下に履くのじゃな。成る程、似合っておるのー」
「へへー。当たり前や」
その他にも革靴とビジネスバックの代わりに、こっちの革靴とショルダータイプの鞄を買った。
結局、一張羅の他に靴とシャツと鞄を買い取って貰ったので、買い取り金額は金貨7枚になった。
そこから、エプロンドレスとズボン、革靴、鞄の代金を差し引いて、金貨6枚と銀貨2枚が手元に残った。
***
「おまたー」
店から出ると、彼らは健気に私の事を待っていてくれていた。
「一体どれだけ……お前、さっきの服は?」
「売った。それでコレ買た」
お兄さんに買った服を見せびらかすように、私はその場でクルリと回って見せた。
「あとコレ」
私はお兄さんの手を取り、その中に銀貨を一枚入れた。
「これで貸し借りなしな」
「え? いいのかよ」
「男がグタグタ言うなや」
「「はい!」」
私が睨みを利かせると、二人は姿勢を正して返事をした。
「あ、そういやアンタらの名前は?」
「お、俺か? 俺はダラムだ」
「俺はヤヌック。兄貴の子分だい」
私の質問に二人とも素直に答えてくれた。
「私は薫や。そんじゃ、ダラム、ヤヌック。私を酒場まで連れてってッ!」
「「はい?」」
二人は首を傾げて返事をする。どうやら訳がわかっていないようだ。
「付き合ってくれたお礼や。私の奢りで好きなだけ飲みぃーッ!」
【買い取り内訳】
リクルートスーツ 金貨4枚
ワイシャツ 金貨1枚
革靴 金貨1枚
ビジネスバッグ 金貨1枚
エプロンドレス −銀貨4枚
ズボン −銀貨1枚
革靴 −銀貨2枚
鞄 オマケ
合計 金貨6枚、銀貨2枚
【現在の薫の所持金】
金貨6枚
銀貨1枚
日本円4,327円(使用不可)