奴隷冒険者、新たな力を得る!
『ターン・アンデッドッ!』
シャルジュの神聖魔法によって、不死者を浄化し続けてどれくらいの時間が経ったのだろう。
流石にシャルジュにも疲労の色が伺える。
「どうなってるんだよ。次から次へとッ!」
「もしかしたら不死者を作ってる奴がいるのではないか?」
ジョゼとルベルレットは敵を斬り伏せながら口々に思った事を述べていた。
「せやけど、この辺に変な奴はおらんで?」
私は迫ってくる不死者を薙ぎ払いながら千里眼を使用し、周囲を確認する。
しかし怪しい者の姿は確認できず、寧ろ見渡す限りの不死者の軍団に私は嫌気がさした。
「カオルぅ、不死者はあとどれくらいなの?」
「聞かん方がええと思うで」
…………。
私の言葉に全員が一瞬固まった。
無理もない、この不毛な戦闘を最悪明け方まで続けないといけないのだ。
それでも気を取り直して再び戦闘を始めた時だった。
『此の世を彷徨う尊き魂よ、……』
「シャルジュ、後ろッ!」
いつの間にか不死者がシャルジュの後ろに回り込んでいたのだ。
突然の事に他の全員は出遅れてしまい、カバーに間に合わない。
「わぁぁぁーーッ!」
慌てたシャルジュは魔法の詠唱を途中で止め、不死者に向かって素手の鉄拳を喰らわした。
すると、攻撃を喰らった不死者はバラバラと形が崩れ、最後には消えて無くなってしまったのだ。
「シャルジュ、今のどうやってん?」
私は魔法を使わず素手で不死者を浄化したシャルジュに問い詰めた。
「え? 僕もよく分からないけど、神聖な力を纏った状態だったからかな?」
「それ、どうやんねんッ!?」
私は顔を近付け、シャルジュに迫った。
「す、すぐには無理だよ。普段から神様に祈りを届けている人じゃないと神聖な力は使えないんだよ」
神聖力は、神様を信仰し、亡くなった者を憂い尊ぶ事ができる者にしか使えない。
例え、大魔導士だとしても、神聖魔法が使用できないのはこの事がネックになっているらしい。
「あ、それやったら大丈夫やで」
「へ?」
私の返事にシャルジュは情けない声を上げた。
「私、初詣は絶対行くし、お彼岸とお盆は墓参り行くしなー」
「ちょっと待って、その『ハツモーデ』とかってなんなの?」
「せやから、毎年神様にも挨拶してるし、仏さんも大事にしてるって!」
私の説明にシャルジュは一向に納得しないので、私は試しに神様に祈ってみる事にした。
『神様仏様、どうか私に聖なる力を貸して下さい』
私が手を合わせて祈りを述べると、私の体が淡く光始めた。
「ぇえーッ!? どうなってるの!?」
「って事で、私にもさっきのアレが使えるって事やッ!」
【スキル解説】
【神聖挌闘術 Lv.1】
聖なる力を纏った挌闘術を使用できるスキル。
不死者や魔族などに有効攻撃を与える事ができる。
※魔法攻撃ではない為、使用者の攻撃力に威力は依存する。




