奴隷少女、事情を説明する。
突然の叫び声によりギルド内に静けさが駆け巡った。
しかし、しばらくするとギルドは再び騒がしさを取り戻していった。
「あー、あん時の女剣士か。久しぶりやなー」
「『吊り目』って何よッ! 私にはエリーゼって名前がちゃんとあるのッ!」
私の側までやってくると女剣士は、私の顔の前でビシッと指差しそう述べた。
「すまんすまん。私あんたらの名前知らんかったしー」
「カオルぅ、知り合いなの?」
凄い剣幕の女がいきなりやって来たので、シャルジュは私の後ろに隠れていたようだ。
今はひょこっと後ろから顔を出している。
「んー、難しいけど。知り合いっちゃ知り合いやな」
「はぁ!? そんな訳ないでしょ、貴方のお陰で私達の被害は尋常じゃないのよ!?」
私がやんわりと関係を説明すると、女剣士は再び凄い剣幕で迫って来る。
その姿に、シャルジュは慌てて私の後ろに隠れていた。
「今すぐ表へ出なさいッ! あの時の決着を今着けて上げるわッ」
「あ? やんのか、コラぁ」
女剣士はシャルジュの事は関係なしに、私に喧嘩を吹っ掛けてくる。
「カオル、ダメッ!」
「エリーゼ、止さないかッ!」
私が喧嘩を買おうとしたところで、シャルジュに止められた。
そして女剣士も別の誰かに制止され、私を睨むだけに留めている。
「カオル、先輩冒険者と喧嘩しちゃダメだよ」
「はーい。すんませーん」
私がご主人様(仮)の説教を聞き終わり、顔を上げると見知った顔が増えていた。
「久しぶりじゃの、カオル殿」
「カオル君、元気そうだね」
私たちの目の前にいたのはアイヴォンとサンディスだった。
***
「それじゃあ、カオル殿は彼の奴隷なのじゃな?」
「そやでー。ほら」
私はこれまでの経緯を一通り話し、奴隷の印をアイヴォン達に見せた。
「ほぉ、それでこちらの少年は?」
「シャルジュやで。えーっとなんやっけ?」
「もぉ、ちゃんと僕の紹介してよー」
アイヴォンにシャルジュの事を聞かれたので、私は名前だけアイヴォンに伝えた。
「シャルジュ……ん? もしかして、貴方はシャルジュ=アスティーナ王子ではありませんか!?」
シャルジュの名前にサンディスが思い出したように話を切り出した。
「はい。僕はシャルジュ=アスティーナ、この国の第三王子です」
突然の王子様の登場で、皆が静まり返った。
シャルジュも気まずそうに私に助けを求めている。
「シャルジュは王子様を辞めて、冒険者になるんやって。私はその手伝い!」
「そ、それは誠でありますか?」
私の説明にアイヴォンが恐る恐るシャルジュに尋ねた。
「はい」
その返事にアイヴォンは納得した様子で何度か頷いた。
「将来有望な冒険者が増える事は、儂にとては嬉しいことじゃッ!」
「ありがとうございます」
アイヴォンへの説明も終わり、私たちは再び受付へ向かった。
【今回のストーカーの呟き】
「ひょこっと顔を出すシャルジュ様、ふぁーーーッ♪」
「流石、シャルジュ様。奴隷に対して…なッお前のその態度はなんだッ!」
「あの騎士、中々鋭いな。冒険者には惜しい……」
「凛々しいシャルジュ様も、これはこれで……ッ♪」
※どのシーンでのストーカーの呟きかは、ご想像にお任せ致します。




