当事者、我に返る…
気が付いた時には辺り一面が瓦礫の山となっていた。
今朝、奇襲を掛けられ無理やり起こされた所までは覚えているが、その後の記憶が曖昧だった。
「もしかして、これ全部私がやったんか?」
辺りを見回し、唖然とした。
ヨーロッパを彷彿させる美しい街並みは、私も気に入っていた節があった。
しかしそれが、今や見るも無惨な瓦礫の山となっているのだ。
「あちゃー、これ弁償とかせなアカンのかな?」
全て修復するのにいくら掛かるのだろと考えていると、あることに気が付いた。
「冒険者はどこ行ったんやろ?」
辺りを見回しても、人影は確認できない。
…………。
グゥーー〜〜ッ。
「そういや、朝飯食ってなかったなー」
太陽は昇り切り、これから傾こうとしていた。
「飯食ってから考えるかーッ!」
私はアイテムボックスから食事を取り出し、遅めの朝昼食を摂った。
そしてその日、冒険者共が私の所にやってくる事はなかった。
***
「今日はえらい遅かったなー」
翌日、ようやくやって来た冒険者共に私は言葉を投げかけた。
…………。
しかし、彼らから返事は返って来ない。
「……チッ。無視かいな」
私は金属バットを取り出し、いつでも動けるように臨戦態勢を取った。
「ん?」
離れていたのでわからなかったが、よく見ると魔法使いが既に呪文の詠唱を始めていた。
「クソッ! もう始めとったんかッ!」
私は慌てて、冒険者共に向かって突っ込んで行った。
「おっと、行かせないよ」
すると、サンディスが私の行く先を塞いだ。
私は何度も金属バットで彼に殴りかかるが、盾で簡単に防がれてしまう。
それは、明らかな時間稼ぎだった。
「クソッ! 何やってんねん、お前らッ!」
私が慌てた様子で尋ねると、サンディスは爽やかに微笑んだ。
「君を倒す『秘策』さ」
サンディスがそう言い終えると同時に、後ろにいた冒険者共に光の粉が降り注いでいた。
これはヤバイと感じた私はすぐに冒険者共から距離を取った。
…………ッ!!
それと同時に冒険者共が一斉に攻撃を仕掛けて来た。
私は飛んでくる矢をギリギリで躱し、降りかかってくる大剣を寸前で避けた。
一昨日までの彼らとは何かが違った。
「前より速なってるやんッ」
「当たり前でしょッ、強化魔法で強化してるんだからッ!」
女剣士の突きをギリギリで去なしながら呟くと、彼女は嘲笑うかの様にそう述べた。
【スキル解説】
【強化魔法】
術者又は味方、もしくは味方全員のステータスを上昇させる魔法。
レベルや種類によって、効果と対象範囲が異なる。
今回使用されたのは、ベテラン魔法使いダミアの強化魔法で、
詠唱時間が長くなるが、全てのステータスが40%上昇する。




