当事者、冒険者を圧倒する!
僕は悪夢か何かを見ていた。
ここに集まっているのはバーウィッチでもトップクラスの冒険者ばかりだ。
それが、たった一人。
たった一人の、『人間』に押されているのだ。
「大丈夫、翠?」
「うん。でも自分の魔法にやられるなんて……」
僕は妹の翠を抱え、回復役が控えている後方へ移動する。
そこには既に白竜団のダルベルトさんとダミアさんが運び込まれていた。
隅には聖なる盾ハナが頭を抱えて蹲っている。
戦闘が始まってまだ数十分、討伐隊の4人が負傷しているのだ。
「何なんだよアイツは……」
今はタイラーさんとエリーゼさんが、何とか前線で押さえ込んでくれてい……
「あッ……タイラーさんが……」
思わず言葉を失った。
討伐対象は、鎖がついた鉄球を振り回しタイラーさんの刀に巻き付けると、そのままタイラーさんを蹴り飛ばし、刀を奪い取ったのだ。
「無茶苦茶だ……」
遠距離攻撃である、弓も魔法も効かない。
剣も全て往なされ、反撃される。
近距離、中距離、遠距離、全ての範囲で攻撃を仕掛けて来る。
「ここは一旦引くぞッ!」
タイラーさんがやられた事もあり、一先ずの撤退をサンディスさんは指示した。
『何や、もう終わりかいな』
僕らが撤退すると、討伐対象は残念そうに僕らの事を見送っていた。
***
「ありゃー化け物だぜ」
脇腹に一撃を喰らった、ダルベルトさんが夕食を食べながら語っていた。
取り敢えず、負傷した全員の回復は終わり、明日に向けての作戦会議が行われていた。
「状況に応じて武器を変えてくるのよッ」
「俺たちの攻撃が一切通らないのが、ヤバいよな」
みんな各々で感じた意見を述べている。
『戻りました』
突然、暗闇から声が聞こえ、全員が一瞬身構えた。
「ああ、ヴィンセント。彼女はどうだった?」
どうやら偵察に行っていたヴィンセントさんが帰って来た様だ。
「対象は呑気に焚き火をしながらエールを飲んでました」
「そうか、それ…『おーいッ!』」
報告を聞き終えサンディスさんが指示を出そうとした瞬間、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『おーいッ! なぁ、一緒に飲まへん?』
突然の出来事に、全員がその場で凍りついた。
【討伐対象の第一印象 その2】
【ダルベルト】
剣聖 男 37歳
「黒髪なんて珍しいな」
【アルマルク】
弓使い 男 21歳
「結構タイプかもッ♪」
【ダミア】
魔法使い 女 32歳
「……若い子ね」
【玄】
魔法剣士 男 13歳
「阿呆そうだなー」
【翠】
魔法使い 女 13歳
「頭悪そう……」




