就活生、勘違いに気づく。
私の隙の無い完璧な謝罪にお兄さんは為す術を知らない様子だった。
勝った。
私はそう確信し、顔を上げた。
「それじゃあ、有り金全部出しな」
「はい?」
このお兄さんは何を言っているのだろう。
まさか面接中に恐喝するなんて……
いや、もしかすると社会人には、恐喝にあった際に必要な立ち振る舞いがあるのかもしれない。
(クソッ何で先生は、そんな事も面接の練習で教えてくれんかってん)
まあグタグダ言っても仕方ない。
ここは私自身の力で乗り切るしかないだろう。
覚悟を決めて、お兄さんに向かって再び視線を向ける。
「だ・か・ら! 持ってる金目の物を出せって言ってるんだよ」
「申し訳ありません。今持ち合わせが無くて……」
「別にお嬢ちゃんの身体で払ってもらってもいいんだぜ〜」
もう一度謝罪し、事情を説明すると取り巻きの男性が割って入ってきた。
(あー。完璧に変なこと考えてるわーコイツ。マジキモい)
「俺は嬢ちゃんみたいなのも好みだぜ〜」
「すいません。そうゆーのはちょっと……」
「取り敢えず一緒に来てもらう」
(あれ? なんかやってもた?)
もしかすると私は失敗してしまったのかもしれない。
あ、でも単純にこれで面接は終了で、この場所の出口へ案内する為にお兄さんは誘導してくれている……
でもでもでも、明らかに取り巻きのコイツは私をいやらしい目で見てくるし、ここで逃げなきゃ確実にヤバい気が。
(あーもぉ! どうしたらいいねんッ!)
***
っという訳で、付いて来てしまいました。
明らかに路地裏です。
薄暗いです。
他に人がいないです。
…………。
これはもう聞くしかないですよね。
「すいません。これって面接……です、よね?」
私は先を歩く二人を呼び止めて質問した。
すると、強面のお兄さんの方が振り返って首を傾げた。
「はぁ? 何言ってんだ。お前馬鹿なのか?」
…………。
どうやら私は勘違いをしていたらしい。
先程のやり取りは面接でもなんでも無く、ただチンピラに絡まれて恐喝されていただけらしい。
更に言えば、お兄さんは私の事を『馬鹿』と言いやがった。
『阿呆』ならまだしも『馬鹿』と言ったのだ。
「人が下手に出てると思って、調子に乗んなやワレ!」
【登場人物紹介】
【朝比奈薫】
府立入江高校三年生 女 17歳
趣味:喧嘩
特技:空手
備考:一刻も早く卒業してほしい生徒(担任談)