お尋ね者、浮かれる。
「フ、フゥ〜〜ンッ♪」
最近は何事も無く、日々賞金稼ぎどもから所持金を奪う生活が続いていた。
その為、私の懐は思った以上に暖かかった。
それに伴って、今日は以前から鍛冶屋に頼んで作って貰っていた物を引き取りに行っていたのだ。
「やっぱ戦闘と言ったら、コレやんな〜」
実は、この間の傭兵どもとの戦闘で身にしみたのが、得物の重要性だ。
結局、あの時は連中から得物を奪いながら戦った。
あの時は、私のユニークスキル『天才肌』のお陰で、どの得物も何不自由なく使用する事は出来た。
が、私としては余りしっくりきていなかったのだ。
「特注ってのが、またええよな〜」
今回、鍛冶屋に無理を言って作って貰ったので、結構な額を請求された。
それでも、異世界でただ一つの私専用の武器が完成したのは事実だった。
「早速帰ったら、ヤヌックで試し振りせな〜」
そんな冗談を言いながら、上機嫌で酒場への道を歩いていた時の事だった。
『……ぁ……さん』
ふと、路地裏から声が聞こえたような気がしたのだ。
念の為に覗いておくか、と私は路地裏に足を踏み入れた。
***
「ぁね……さん……」
…………。
路地裏にはヤヌックが、見るに堪えない姿で倒れていた。
…………ぁ。
一瞬で血の気が引いた。
「ぁね……さん。……ずぃ「しゃべんなッ!」」
私は乱暴にヤヌックを担ぎ、酒場へ急いだ。




