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脳筋乙女の異世界花道  作者: 藤沢正文
第12章 正義ノススメ 〜我らが貫く正しき道〜(後編)
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捜索隊、新たな転移者と出会う。

 日が登ってすぐ、伯爵邸にはテオドリク子爵を王都まで移送する護衛騎士の一団がやって来ていた。


「お役目ご苦労だったな。シャルジュ」

「ええ。これでようやく。自由に動くことが出来るよ」


 テオドリク子爵の身柄を護衛騎士に預けた事によって、この街での僕の役割は終わった。

 しかし、厄介なことに『事後処理』が残っているため、もうしばらくはこの街に滞在しなければならない。


「しかし、意外とすんなりと許可が降りたよな」

「王族の視察を断るような貴族がいるわけないだろう」


 肩をすくめるジョゼにルベルレットが怪訝な視線を向ける。


「ともかく、今日の視察が終われば一段落するんだからいいじゃないか」


 今回の誘拐事件。テオドリク子爵に誘拐された人々は奴隷商に売られていた。

 そこまでは彼の供述から判明し、その裏も取れている。

 問題だったのはその後その全員、というよりも奴隷商が扱っていた奴隷全てをジェレーノ伯爵が買い上げていた事だ。

 本人曰く、鉱山の作業員の補填の為に奴隷を全て買ったという事なのだが、もしかすると今回の一件を隠すために伯爵が裏から手を回していた可能性もある。

 その為に一度、鉱山の視察としてその現状を確認しに行くつもりなのだ。

 誘拐された人たちが作業に従事していれば解放しなければならない。

 そしてこれが意図的に仕向けられた事であれば、伯爵にも王都へ赴いてもらわなければならないのだ。


「シャルジュ殿下」

「これは伯爵、どうかされましたか?」


 件の伯爵が僕の元へとやって来た。

 本日はこのあと鉱山へ向かうのでその話だろうか?


「何やら不穏な動きがあるようで……」

「今日の予定に問題がありそうなのかな?」

「いえ、そういう訳ではございません。何やら先日の『賊』が鉱山の襲撃を企てているとの話を耳にしたものですから」


 彼の言う『賊』とは『義賊』の事だろう。と言うことはカオルの手がかりが掴めるかも知れない。

 そう思った僕はジョゼとルベルレットに視線を送る。

 二人とも理解したようで、コクリと頷いてくれた。


「陛下の身に何かあってはなりませんので、私の私兵を護衛につけさせます」

「感謝します」

「それとサルヴィオ卿から賊の一件が収まるまでと数名の騎士……というより私兵ですかね、をお借りする事になりまして、彼らも殿下の護衛につけさせますので何卒よろしくお願いします」

「サルヴィオ卿から?」


 僕は内心で悪態をつきつつも、わざとらしく首を傾げた。

 サルヴィオ公爵は王都を立つ前の面会でカオル達の捜索に名乗りを上げた人物だ。

 まさかこんな所で彼に借りを作る羽目になるとは思っても見なかった。

 しかし、義賊の件もあり伯爵の厚意を断ることはできない。


「はい。彼らがその私兵です」


 伯爵が示す先から青年と少女がこちらへ歩いて来ていた。

 彼らは私兵と言うにはあまりに平凡な、いや普通の一般人に思える。

 というより、少年の方は腕や足に包帯を巻いているが大丈夫なのだろうか?


「ふふふ、我が名は……」

「はいはーい、厨二はいいから」


 僕の前にやって来た少年は意味不明なポーズをとって名乗ろうとしていたが、少女にそれを止められた。

 それから少女の方はニッコリと笑顔で僕の手を握り挨拶をしてくれる。


「初めまして〜、葛木ミコトでーっす! ミコトって呼んでくださーい」

「ちょ、俺の自己紹介が……ふふ、我が名はシュウジ=ワカナ! 異世界より来る混沌を呼びし者!」


 ミコトと名乗る少女はそう言ってウインクし、シュウジと名乗る少年は改まって変わった挨拶をしてくれる。

 そして彼の言葉に僕は違和感を感じた。


「異世界より……来る?」

「おお、さすが殿下です。彼らはこう見えて『転移者(ストレンジャー)』で御座います」

「そう。我らはこの世界を救う勇者であるのだ!」


 伯爵の話に再び変なポーズで応えるシュウジ、それを見た全員が苦笑するのであった。



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