司令官、転移者について語る。
メイドのコスプレをしたエリザベラが部屋を出た後、クリスは話を再開した。
「……待たせて済まなかった」
「って言うか、全員集めるんだったら、話はその後でもよくない?」
「確かにここから先は全員で情報共有するつもりだが、先に貴女達が疑問に思っている事を解決した方が話が進むと思ったのでな」
「まあ別にどっちでもいいけどー」
私がそう返事をすると、クリスは姿勢を戻し一度咳払いをした。
「まず最初に述べておくが、王国は『転移者』を召喚していない」
「「は?」」
予想外の切り出しに私達は同時に声を上げた。
「ちょい待ち。じゃあ、アイラ達はどうやってこの世界にきた訳?」
「それはわからない。ただ言える事は、『異世界召喚術』が行えるのはアスティーナ王国だけであり、それを行うには膨大な期間と王族しか入ることのできない場所に保管されている魔道書が必要だということだ」
クリスの話によると、『異世界召喚術』は国家規模の大魔術で国王が中心となり魔術士団が総出で行って半年以上もかかる魔術らしい。
なので、王国以外で行われた可能性は殆どなく、仮に行われていたとしても何らかの動きがあるので、その場合はクリス達の情報網に引っかかるという事だ。
「ちょい待ち。アイラは最初、ムラン帝国内に召喚? されたんだけど」
「あー、私はバーウィッチやった」
「それが……わからないのだ」
「「…………」」
クリスの返答に私達は顔を見合わせた。
「『本来であれば』、術を行なった魔法陣の中に全員が召喚されるはずなのだが」
「あー、まーそだよね」
私は一人で納得したが、カオちーは意味不明って顔で料理を口に運んでいた。
「うむ。ただ一つ言えることは、転移者は召喚されて、この世界にいると言うことだ」
「何でそう言い切れるの?」
「貴女達の『肩書き』だ」
「あー確かにアイラの肩書きに『異世界から来た』って入ってるしねー……ってか何でそんなこと知ってる訳?」
ふと浮かんだ疑問に私は再び疑惑の目を向けた。
「貴女達は冒険者登録しているであろう? 登録の際にステータス情報を確認した書類がギルドに保管されているのだ」
「はぁ……それも調べれるわけね」
「ああ、我々が閲覧したわけではないが、冒険者ギルドの内通者から情報を得ている」
冒険者ギルドなどの各ギルドは独立組織なのでどこの国も干渉する事は出来ない。
なので、本来であればその内部情報が外に漏れる事はないと言う事らしい。
「念の為、オクノにも確認したが、彼も『異世界から来た』の肩書きを持っていた」
やはり転移者は全員、クリスの言う所の召喚によってこの世界に連れて来られたらしい。
その時、私の脳裏にあの魔族の言葉が甦った。
『……消されたのですよ』
…………。
「ていうかさ、召喚されたら死ぬまでこの世界で過ごさないといけない訳?」
「それはない」
私の問いに彼女は即答した。
「どゆこと? 帰還魔法的なのがあるってこと?」
「そうではない。召喚された理由、つまり『使命』が達成されれば、転移者は元の世界に帰還するということになっている」
召喚された者、つまり転移者は召喚主の『願い』に応じてこの世界に召喚される。
つまりはその『願い』が転移者の『使命』になると言う事らしい。
「以前の転移者は『魔王討伐』という使命が達成されたから元の世界に帰還したってこと?」
「そういうことになる」
その話を聞いて、私は溜息を吐いた。
すると既に話を理解する事を放棄したお馬鹿さんが呑気な顔で私に声を掛けてきた。
「アイラ、どないしてん?」
「結局、アイラ達が元の世界に帰る方法はわかんないってことー」
「ほー、そーなんかー」
「不明瞭な情報ばかりですまない」
クリスが言った事が本当であれば、召喚主を探し出し『使命』を達成すれば元の世界に帰れるという事なのだ。
「ま、知らなかった事ばっかだし。ここに来れたのも不幸中の幸いてきなぁ?」
「ほやな、ほひはへふひほひほふぁはっはひはふぃはひ」
「「食べながらしゃべるな!」」
口一杯に食べ物を頬張りながら喋べるお馬鹿さんは放って置くとして……
まだ絶対的にこの組織を信用した訳ではないけれど、少なくとも彼女は信用してもいいかな?
「まーこれから宜しく……てきな?」
「ああ、宜しく頼む!」
私の言葉にクリスは少し安堵したような表情を見せた。
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