協力者、組織の謎を追求する!
グビグビグビ……
私は事の成り行きをエールを飲みながら眺めていた。
なんかアイラがけったいな事言い出したで……
アイラは普段から意味不明な事を言っているが、突然キレる事など殆どない。
私が知っている限りは植田とかいう転移者と鉢合わせした時くらいだ。
「アイラ。まず落ち着こう、貴女は何か誤解している」
「は? 誤解? あんたが私たちを利用してる事の何が誤解なわけ?」
「私は貴女達を利用していない『協力』して貰っている立場だ」
「協力ぅ? じゃあそれ相応の態度を示してくれない?」
「もし先程の私の態度が気に食わなかったのであれば謝罪する。申し訳なかった」
アイラの高圧的な態度にクリスは額に脂汗を掻きながら頭を下げた。
「そーゆー問題じゃないの。そもそも何で私たちの素性を知ってるわけ? あの奥野には何にも言ってないんだけど?」
確かに、クリスは私が女伯爵である事を知っていた。
それにムラン帝国が領土侵犯を犯した事も知っている様子だった。
それらの質問にクリスは口を閉ざした。
「それにあんたは家名を持ってる貴族。どうせ何もかも知っていた上で良いように利用しようって魂胆でしょ?」
「それは違う」
「何が違うわけ? カオちーや奥野を騙せても、私は騙されないから。」
ん? 私達、騙されてんのか?
話の意図が全く理解できないまま、私はエール樽からジョッキにエールを注いだ。
「あのディールとかいう魔族。あれ、騎士団どころかSランクの冒険者でも倒せない相手っしょ」
「……その通りだ」
「ははっ! やっぱそうじゃん。最初から魔族の存在は知ってた上での話ってわけだ」
「……」
「魔族の討伐、貴族の派閥争いに利用して、不要になれば処分する……以前の転移者のように。あながち魔族の話も間違ってなかったわけだ。……あは、あはははははっ、まじウケる!」
アイラは独り言のようにそう呟くと突然笑い始めた。
「はぁ。マジでこの世界もエンドってる」
ひとしきり笑うと彼女は溜息を吐いてそう呟いた。
「アイラ。やはり貴女はいくつか勘違いをしているようだ」
「はぁ? これのどこが勘違いな訳!?」
一瞬穏やかな表情に戻っていたアイラが再び激昂する。
「……わかった。私が知っている事は全て話そう。この組織に関して、そして王国が置かれている状況を」
そう言ってクリスは椅子に座り煙草に火を着け、アイラにも座るように促した。
「「「…………」」」
だが素直にアイラがいう事を聞くはずもなく、誰も話さないまましばらくの沈黙が続いた。
やがて根負けしたアイラが椅子に体を預けると、クリスはようやく口を開いたのだった。
「私は元王国騎士団の騎士であり、この組織の先駆組織であったある部隊の隊長を務めていた」
どうやら話はまだまだ続くようなので、私は新たな料理をテーブルに出した。
【索引】
【植田清司】
第8章 緊急事態発生、街道の安全を確保せよ!
「調査隊、突然の事態に混乱す。」
https://ncode.syosetu.com/n2224dw/104/
結構前に登場した3人目の転移者ですね。
そろそろ再登場? するかも! ……いやないか。




