協力者、報告の補足をする。
「ふぁから、ほわひはってひっへるへん」
皆が司令室から出て行った後、私は長椅子に座り左手にはエールジョッキを右手にはフォークを握って、口いっぱいに肉を頬張りながらクリスの質問に答えた。
私たち以外、司令室にはアイラが残っていたが、指令室の隅に置いてある豪華な椅子に腰掛けながら一人で爪の手入れをしていた。
「食べながら喋るな、それでも貴女は女伯爵か?」
「ん? 私が女伯爵って言ってたっけ?」
「貴女達の事は前々から知っている。そんな事より、何故そんな重要な事を報告しなかったのだ」
「あー忘れとった」
私の返答にクリスは呆れた様子で煙草に火を付けた。
そもそも任務内容は調査だった訳で、『スライムを作る機械』をどうこうしろとは言われていなかった。
だが一応、アーノックにはよく分からない機械を壊したと説明はした。だが彼は『今回の件と関係なさそうだから大丈夫』とすぐにその話は流したのだ。
「よし。奴は後で呼び出す。それで、その『機械』とはなんだ?」
これで報告に関しては納得したらしい。
「機械って言ったら機械やんけ」
「それは転移者の言葉だ。私たちにも分かる言葉で説明してくれないか?」
「こっちの奴に分かる言葉でって言われてもなー」
「魔導具」
私が説明に困っているとアイラが横から口を挟んで来た。
「ああ、魔導具か。済まない助かった」
「別に……」
アイラはそう述べると素っ気ない態度で再び爪の手入れに戻った。
「あれやったら、その機械見るか? 一応、回収してきたんやけど」
「あるなら早く出せ!」
現物がある事を知るとクリスは再び大声を上げた。
***
「これは……」
私がアイテムボックスから取り出した『スライム製造装置』を見てクリスは息を飲んだ。
「派手に壊したものだな」
「もしもの事があったらあかんからな。念には念を入れて壊しといてん!」
私が出した元スライム製造機を見てクリスは嘆息した。
それも仕方ない。
私が取り出した廃物は元形が何であったか判らないただの鉄くずだったからだ。
「兎も角。魔道具となると、やはり今回の件の後ろにはムラン帝国が絡んでいるのか……」
「あれか、私の魔力銃とか魔導式三輪駆動馬車を作った国か!」
ムラン帝国は、魔道工学を発達させ新たな魔道具を作り急成長して来た国だ。
確かに帝国ならスライム製造機なる魔導具を作っていても不思議はない。
「……それはないんじゃない?」
私たちの会話にアイラが再び口を挟んで来た。
「なぜそう思う? 以前も帝国は領土侵犯を犯していたではないか。そして帝国でしか作りようのない魔導具によって一つの町が消滅しかけたのだぞ?」
「だからー、スライム製造機を帝国が作ったってのが『ない』って言ってんの!」
クリスの話にアイラは立ち上がり、大声を上げた。
立ち上がったアイラの口元にはなぜか魔力飴が咥えられている。
「ではどうやって……」
『AIモード、ブチアゲ!』
そしてクリスの話を遮り、彼女は唐突に異界詠唱術を使ったのだ。
「そんな事より! 『クリステル=トゥールズ』、あんたの目的は何? 返答によってはこの組織がなくなる事になるけどー」
【索引】
【女伯爵】
第9章 女伯爵様はご機嫌斜め?
「奴隷冒険者、女伯爵になる!」
https://ncode.syosetu.com/n2224dw/112/
【魔力銃】
第8章 緊急事態発生、街道の安全を確保せよ!
「調査隊員、全力で敵を叩く!」
https://ncode.syosetu.com/n2224dw/107/
【魔導式三輪駆動馬車】
第9章 女伯爵様はご機嫌斜め?
「女伯爵、最新型の魔導馬車を操る!」
https://ncode.syosetu.com/n2224dw/116/
【ムラン帝国】
第8章 緊急事態発生、街道の安全を確保せよ!
「調査隊、正体不明の一団と遭遇する…」
https://ncode.syosetu.com/n2224dw/103/
久しぶりの単語にみんなが忘れてそうだから索引にして置いておきます。
べ、別に私が忘れてた訳じゃないよ!?




