協力者、影の魔物に遭遇する。
どこからともなく声が聞こえ、私たちは身構えた。
すると、漆黒の霧が私たちの前に発生し、その中から燕尾服を着た老年の男性が現れたのだ。
これガチでヤバいやつだ。
ぱっと見は普通のおじいちゃんだが、身に纏っている雰囲気が只者じゃないと言っている。
「どうも初めまして、私はドッペルゲンガーのディールと申します」
「やったらお前は敵やな!」
自身を魔物だと述べる男性に、間髪入れずカオチーが殴りかかった。
「あれ?」
しかし、彼女の一撃は空を切っただけだった。
「無粋な方ですね……私は彼女と話をしているのです。あなた方は彼らとでも遊んでいて下さい」
先ほどいた場所とは違う場所から現れたディールがそう述べると、スライムの大群がカオちーたちに群がった。
「さて、これでゆっくりとお話ができますね」
そう言って彼がゆっくり振り返っている隙に、私は急いで魔力回復薬で魔力回復を……
「おっと、妙な真似は辞めて下さい」
突然、耳元で囁かれ、取り出した魔力回復薬が奪われた。
そう彼は一瞬で私の背後に回り込んだのだ。
「ふむ。この特殊な形状……やはり異世界のモノですね。つまり、貴女は転移者ということで間違いありませんね?」
値踏みするようにディールは魔力回復薬と私を交互に見つめる。
「…………だったら?」
「我々の仲間に加わって欲しいのです」
「はぁ? 意味不」
「逆に考えて下さい。なぜ異世界の貴女がスライムすら碌に倒せないこちらの世界の人間の味方をする必要があるのですか?」
そう言って、彼はカオちーたちを見つめた。
彼女たちは襲いかかってくるスライムの群れを何とか去なしている。隙を見て彼女達を助けないと手遅れになりそうだ。
「人を守るのは人として当たり前じゃん」
「ふむ。確かに同族の味方をするのは当たり前です。ですが……」
不意に彼が背を見せた。その一瞬を私は待っていた。
「『利用されている』としたらどうです?」
「……!!」
しかし、その一言で好機を逃してしまった。
「おや。心当たりがお有りの様で」
「さー」
素っ気無い私の返事に彼は肩を竦めるも話を続けた。
「まぁ、いいでしょ。貴女も以前、転移者がいたことはご存知ですよね? じゃあ、彼らはどこに行ったのですか? 子孫は?」
「…………」
確かに、以前の転移者の話は少し妙だ。
その話には魔王を倒した後の彼らの話が一切ない。
「その理由は一つです。……消されたのですよ」
「……」
「話を戻しますが、我々の仲間になりませんか?」
「つまり、アンタはぁいらのスカウトに来たわけ?」
『アイラ! なんか知らんけど、そいつの話には乗んな!』
スライムを去なしながらカオちーが私に声をかけて来た。
「むむ。人間にしてはしぶといですね。……おっと、話の途中でしたね」
ディールは少し顔を歪めたが、気を取り直すと再び話を続けた。
「スカウトで来たわけではありません。私はこの村で『生贄』を集めていたのですよ」
「『生贄』?」
「そう。『魔王様』復活の為の生贄をです!」




