協力者、嘆息する。
クリスの話が終わり、私達は正式にナイトレギオンという秘密結社に協力者として参加することになった。
デブは弱者を助ける『正義の味方』と言っていたが、ココはそんな生温いところではない。
正真正銘の秘密結社。
その証拠に『鑑定』でクリスのステータスを確認したところ、『職業』の欄に妙な肩書があったのだ。
まぁ、彼女の口ぶりからそれらは予想できたが、恐らくカオちーは理解していないだろう。
…………。
案の定、カオチーは馬鹿みたいに呆けていた。
「はぁ」
「フゥー」
私の溜息とクリスが吹かした煙が重なった。
そして、椅子に座り背もたれに体を預けていたクリスが思い出したように開いた。
「そうそう折角だからメンバーの紹介を……」
「はいはーいッ! それ、リアがする〜ッ!」
クリスの言葉を遮って、私達の前に女の子が飛び出してきた。
「ん? 正義の味方はガキンチョでもなれるん?」
「むぅー。今、リアのこと子供扱いしたでしょッ!」
カオちーに煽られ、彼女は頰を膨らませながら猛抗議をしている。
二人が言い争いをしている間に、私は『鑑定』で彼女のステータスを確認した。
【名 前】 リアマリア
【年 齢】 12
【職 業】 シルバーランク商人 工作員
【レベル】 22
【状 態】 通常
【体 力】 123
【魔 力】 65
【攻撃力】 98
【防御力】 79
【俊敏性】 81
【スキル】
アイテムボックス 交渉術 Lv.5 錬金術 Lv.3
ん? レベルの割にステータスが引くくない?
ステータスを確認しつつ、慎ましい胸を張りながらカオちーと口論を繰り広げる女の子を見つめた。
彼女の話から若干12歳でシルバーランクの商人なのは実家が王都に店を構える大商人だかららしい。そして、一般人では珍しいアイテムボックス持ちという事で商人として大成したのだろう。
しかし、なぜそんな子供がわざわざ秘密結社で工作員をしているのだろうか……私がふと思った疑問はすぐに解決されることになった。
「もぉ! カオルちゃん嫌いッ!」
そう言ってリアは手に持っていた不恰好な人形をカオちーに押し付けその場から離れた。
すると、その様子を見ていた全員がすぐさまその場から逃げるようにいなくなる。
なんかヤバメな感じ?
危機感を感じ取った私はすぐさまカオちーから離れ、防御壁を展開させる。
突然の状況に混乱する彼女を他所に、不恰好な人形は爆発した。
***
「改めて紹介する。彼女は工作員のリアマリアだ」
爆煙が収まり、机の下から這い出てきたクリスが咳払いをしてそう述べた。
「まあ普段はいい子なんだが……機嫌を損ねると今みたいに見境なく爆破するので気をつけてくれ」
そう言われたカオちーは顔を引きつらせながらも、あまりダメージを受けているようには見えなかった。
とは言うものの、彼女の煽り耐性は低いので見る見るうちに怒りゲージが上がっているのは確かだった。
「ベー」
そこへ件の爆弾娘はソファーの後ろからひょこっと顔を出し、あっかんべーをして更に彼女を煽り始めた。
「あ?」
「まー落ち着きたまえ、折角のびぼぉ……「うっさいねんッ!」」
やっすい挑発に乗ったカオちーを止めようと思ったのか、部屋にいた冒険者風の男性が無謀にも彼女に声をかける。
案の定、彼はカオちーの一撃を喰らい、現代アートの様に壁に埋もれた。
【名 前】 アーノック
【年 齢】 23
【職 業】 Dランク冒険者 剣士 諜報員
【レベル】 28
【状 態】 瀕死
【体 力】 9 /154
【魔 力】 90
【攻撃力】 124
【防御力】 133
【俊敏性】 127
【スキル】
剣術 Lv.5 交渉術 Lv.4 危機感知 Lv.2
あーね。その勇気に免じて、あとで回復薬あげるわー。
瀕死の状態の彼のステータスを確認し、私はカオちーへと視線を移した。
「ちょっと顔貸せや」
声色を変えたカオちーが指をボキボキと鳴らしながら、ソファーに隠れる爆弾娘へと躙り寄る。
その間にメイドが立ちはだかった。
「あ〝?」
「リア、虐めるの、だめ」
凶悪な重圧に物怖じせず、彼女はカオちーを睨んでいた。
【登場人物紹介】
【クリステル】
ナイトレギオン リーダー 女 ??歳
ナイトレギオンを指揮する軍服の女性。
知謀に優れている他、剣術にも秀でており、
アスティーナ王国にいる剣聖の一人とも言われている。
【リアマリア】
ナイトレギオン 工作員 女 12歳
大商人の娘で若干10歳にしてシルバーランクの商人になった商売の天才。
しかし、自作した爆弾や危険な薬品を作ってはイタズラを繰り返す悪童でもある。
ナイトレギオンでは、破壊工作や自白剤を使用した尋問などを行なっている。
【アーノック】
ナイトレギオン 諜報員 男 23歳
冒険者として潜伏し諜報活動を行う自己陶酔者。
剣の腕も確かで、緊急時には戦闘員としても活動する。
どんな女性でも口説こうとする性格で、諜報員には向いていなさそうなのだが
意外に上手く立ち回っているらしい。




