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脳筋乙女の異世界花道  作者: 藤沢正文
第10章 ローリング☆ストレンジャーズ 〜嗚呼、転がり続ける我が運命〜
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捜索隊、接待を受ける?



 翌朝アンダイエの町を早々に出発した僕たちは隣街であるシラクイラへと街道を早馬で走っていた。


 アンダイエで野盗に追われたカオル達の足取りは未だ掴めていないが、大きな街であるシラクイラであれば内外から何かしらの情報が手に入ると考えたからだ。



「シャルジュ。前方に馬車が走っているが、どうする?」


「構わず通り過ぎよう!」



 本来なら、貴族が使う様な馬車の横を通り過ぎるのはマナー違反であり、馬車を迂回して先に進まないと行けないのだ。


 申し訳ないと、心の中で謝罪しながら僕らは先を行く馬車の横を通り抜けようとした。



『そこの馬、止まれ!』



 やはり貴族の従者であろう人物に、行く手を阻まれた。



『貴公達はこの馬車に乗っているのがジェレノー伯爵と知っての狼藉か?』


「それは申し訳ありません。しかし、我々は先を急ぐのです」


『成らぬ!』



 良く教育された従者だと褒めたい所だが、今はそんな事をしている暇はない。



「それでは伯爵殿に謁見させて貰えませんか? どうしても先を急ぐのです」


「暫し待たれよ」



 僕の申し出に従者は馬車へと近づき、中にいる伯爵へと話を通してくれた。


 すると、馬車の窓から伯爵らしき男性が僕らの事をチラリと覗き見た。


 そして慌てた様子でジェレノー伯爵とテオドリグ子爵が馬車から降りてきた。



「これはシャルジュ王子ではありませんか! 私共の従者がご無礼を働き申し訳御座いませんでした!」


「いえ、此方が無理を言ったのです。それにしても貴公の従者は良き教育を受けているようですね」


「勿体なきお言葉」



 僕の前に(ひざまず)いた彼らは、深々と頭を下げている。


 出来れば王族という事を伏せてカオル達の捜索をしたかったのだが、こうなっては仕方ない。



「そう言えば、伯爵らには無駄足を踏ませてしまったらしいね」


「いえ、私共もカオル殿の安否を心配していた次第であります」



 彼らはカオル達が失踪した当時に面会を予定していた貴族なのだ。


 そして、伯爵は僕らが今から向かうシラクイラの領主なのである。



「実は、僕らはその彼女達の行方を追っているのです」



 領主である伯爵の協力が得られれば、カオル達の行方も探しやすくなるだろう。


 そう思った僕は伯爵に捜索の協力を申し出た。


 勿論、伯爵は2つ返事で申し出を受け入れてくれた。


 そして、ジョゼと伯爵の従者が先行してシラクイラで情報を集めることになり、僕は伯爵と共に馬車でシラクイラへ向かう事になった。




 ***




「王子自ら捜索なさるとは、やはりカオル殿は王国にとって重要な人物なのですか?」



 馬車の中で伯爵は探るように僕に尋ねる。



「そういうのじゃなくて、僕個人として彼女には借りがあるからね」


「成る程。そういえばカオル殿は、シャルジュ様が冒険者をなさる際に協力してくれた恩方とお聞きしていたのですが、そういう事でしょうか?」



 僕と彼女の情報は未だ一部の貴族にしか知らない筈だ。


 流石、領地を統治する領主とあって情報収集もお手の物と見える。



「まあ、そういう事だね」



 しかし、彼女が転移者(ストレンジャー)だという事までは知らないようだ。


 僕はそれ以上彼らに情報を与えないように注意しながら、雑談を続けた。



 …………。



「あの、シャルジュ様。よろしいでしょうか?」



 先程まで父親であるジェレノー伯爵の陰に隠れていたテオドリグ子爵が恐る恐るといった様子で僕に尋ねてきた。



「カオル殿は絶世の美女だとお聞きしたのですが、それは誠でしょうか?」



 …………ッ!



 子爵の発言に思わず吹き出しそうになった。


 一体どこから、そんな話が上がって来たのだろうか?


 確かにカオルは黙っていれば、絶世とまではいかないが顔は整っている方なので美人の部類に入るのだろう。


 しかし、彼女の本質を知っている人間からすれば、その言葉はあまりにも彼女には似合わない。


 どちらかと言うと、勇猛な猛女といった方が良いと思う……



「大丈夫ですか、シャルジュ様?」



 笑いを堪えて顔を伏せていた僕を心配して、伯爵が声を掛けてくれた。



「いや、大丈夫です。少々、疲れが溜まっているだけです」


「そうでしたか。屋敷に到着いたしましたら、ごゆっくり休息を取られて下さいませ」



 どうやら笑っていたのはバレていないようだった。


 そして僕の身を案じてか、屋敷に到着するまでの間は彼らから僕に話しかけてくる事はなかった。



【登場人物紹介】


【ジェレノー伯爵】

 シラクイラ周辺の領地を統治する領主 男 48歳


 国王から領主に任命され、領地を預かり統治している。

 領地内に鉱山を有しており、伯爵ながら貴族の中でも莫大な富を得ている。


 カオルとの面会を申し出ていたが、カオルの失踪により領地へトンボ返りする羽目になった。



【テオドリグ子爵】

 ジェレノー伯爵の息子 男 23歳


 女好きで有名。

 今回の面会も父親であるジェレノー伯爵だけの筈だったが、我儘を通し付いてきた。


 貴族の権限を使い、街ではやりたい放題に振舞っている典型的なダメ息子。



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