流浪人、ナンパされる?
「そやでー」
私はエールのお代わりを注文してから、素っ気無くそう答えた。
私の隣にいたアイラは「何で返事するの? 頭悪いの?」的な表情で私をじーっと見つめている。
「やっぱり〜、つか『君たち』2人なら俺たちと一緒に飲まない?」
「えー、お兄さんの奢りなん?」
「勿論!」
私が上目遣いで声を掛けて来たお兄さんに尋ねると、賺さずアイラが顔を寄せて来た。
「(カオちー、ガチで言ってるわけ? どう見てもナンパだし、ちょー怪しいよあの人)」
以外にもアイラはお堅い女の子らしい、ナンパされればフラフラと付いて行くようなイメージだったのだが予想外だ。
「(そんなんわかってるわ。奢りで酒が飲めるんやったら別にええやんけ)」
「(もーどうなっても知らないからッ)」
「(そん時は逃げればええやろ)」
2人での相談を終え、私達はお兄さんに連れられて酒場を後にした。
***
お兄さんにナンパされて、連れられた先はブルジョワな雰囲気が漂う屋敷の一室だった。
一室にはお兄さんの仲間らしい数人の男性がソファーに座っており、私達の事を快く受け入れてくれた。
…………。
「「君たちの瞳に乾杯」」
「「カンパ〜イ♪」」
テーブルの上に並べられていたのは、王城のパーティの様な豪華な料理と様々な種類のお酒、しかもどれも綺麗なラベルが貼られている一級品だ。
彼らのキザな言葉には少々鳥肌が立ったが、用意されていたお酒は美味しかった。
「アイラちゃん、可愛いね〜」
「え〜? そんな事あるかも〜♪」
最初は渋っていたアイラも、相手が『貴族』だとわかった瞬間に手の平を返し、今は楽しげに彼らと会話している。
「カオルちゃんって肌綺麗だねー」
「そうかな? あ、お代わり下さい」
「うんうん。貴族出身って言われても信じるよ」
「マジ? そっかーウフフ♪ あ、お代わりでー」
あまり女性らしさを褒められる事が無いので、例えお世辞でも私は嬉しかった。
その為か、いつもよりもお酒が進んでいる気がした。
…………。
「……カオルちゃん。良く飲むねー」
「うっぷ。そぉー?」
どれくらい飲んだのだろうか?
既にテーブルの上にあるお酒の容器は殆ど空になっており、アイラは潰れてソファーで眠っている。
「今日は遅いし泊まって行けば?この屋敷、部屋は沢山余ってるからさー」
「マジで〜? じゃーそーする♪」
流石に私も酔っているので寝ているアイラを担いで宿に帰るのは億劫だった。
なので、私はお兄さん達のお言葉に甘えて屋敷に泊めてもらう事にした。
…………。
『ヤツは寝たか?』
『ああ。アレだけ飲んだんだ、しばらくは起きないだろう』
『流石にテオドリグ様に怒られるかな?』
『大丈夫だろ。ヤツらは上玉だし、酒の1本や2本くらい多めに見てくれるさ』
『それじゃあ、しばらくしたらヤツらを連れて行くぞ』
…………。




