流浪人、妙な噂を耳にする?
老父婦と別れた後、彼らに教えて貰った方角へとしばらく進むとシラクイラの街が見えへてきた。
前の町での反省を踏まえ、私たちは徒歩でシラクイラの街へ入ることにした。
「そやけど、でっかい街やなー」
「それねー」
シラクイラの街に到着したのは、丁度日が暮れる頃だった。
小さな町であれば、店も少なくこの時間でも外を歩く人は殆どいない。
だが、この町はそれなりに酒場や食事処があるらしく、この時間でも多くの人が街中を行き交っている。
「先に飯食うか」
「だねー、ちょーお腹減ったしー」
ということで、宿を取る前に適当な店で夕食を摂ることになった。
「ほんじゃ、ここでええか?」
早速、賑やかな声が漏れている酒場を発見し、私はアイラに尋ねる。
なんでもいいとアイラから適当な返事が返ってきたので、夕食はこの店に決まった。
***
「「カンパ〜イッ」」
お互いのジョッキを打ち合わせ乾杯した後、私たちは注文した料理に手をつけて行く。
「つか、カオちー。野菜も食べなよー」
「へふひへへはんへ」(別にええやんけ)
肉のブロックに囓りつく私に、ムシャムシャと生野菜を食べるアイラがそう呟く。
そしてアイラは、私の身体を爪先から頭までまじまじと眺め始めた。
「てゆーか、そんなに食べて太らない訳?」
「ほやなー」(そやなー)
私が適当に返事を返すと、何故か彼女は舌打ちをし、ガツガツと生野菜を口へ運んでいく。
…………。
『おい、知ってるか? また行方不明者が出たらしいぞ』
『本当か? これで何人目だよ』
私たちの隣のテーブルにいた男性客達の会話が不意に聞こえて来た。
『6人目だよ』
『ウチの娘にも気をつける様にいっておくか……』
『しかし、なんで若い女ばかり行方不明になるんだろうな?』
…………。
聞き耳を立てていた私は不意に視線を感じ、隣を振り向いた。
すると、アイラが何か言いたげな目をして私を見つめていた。
「カオちー、余計な事に首突っ込まないでねー」
そう述べるとアイラはニッコリと微笑んだ。
「わ、わかってるでー」
私は慌ててジョッキに手を伸ばし、残っていたエールを煽った。
そして空になったジョッキを勢い良くテーブルに置き、おかわりを注文しようと顔を上げた。
『ねぇ君? 見かけない顔だけど……旅の人?』
すると、見知らぬ男性が声を私に掛けてきたのだ。
【組織情報】
【シラクイラ】
アスティーナ王国、第4の都市。鉱山が近隣にあり、鉱山都市として栄えている。
しかし、その富は殆どが富裕層が独占しており、住民の貧富の差は凄まじく大きい。
最近では、女性の失踪事件が相次いでいるらしい……




