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脳筋乙女の異世界花道  作者: 藤沢正文
第10章 ローリング☆ストレンジャーズ 〜嗚呼、転がり続ける我が運命〜
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流浪人、老夫婦と出会う。



 おじいちゃんを魔物(モンスター)から救った私達は、ボロ小屋で昼食を摂っていた。



「大した物は無いけど、遠慮せず食べて下さいね」



 そう言って、一緒に暮らしているおばあちゃんが申し訳無さそうに追加の料理を運んできた。



「そんな事ないでーめっちゃ美味いで!」


「それねー。ガチで美味しい!」



 久しぶりの真面なご飯に私たちは遠慮無く、料理に手を付けていく。


 その光景をおじいちゃんとおばあちゃんは嬉しそうに眺めているのだった。



 …………。



 昼食を終えた後、私達は老夫婦とたわいも無い会話をしていた。


 私達がバーウィッチという街にいた事、そこで冒険者をしていた事、今は2人で旅をしている事……



「そう言えば、じいちゃん達は何でこんな森ん中に住んでんの?」



 私の何気ない質問に、老夫婦は顔を見合わせ少し困った様な顔をした。



「……よくある話じゃよ」



 そう切り出したおじいちゃんは、徒然と話をし始めた。



 …………。



 アスティーナ王国は、周辺諸外国の中でも広大な領地を有している。


 故に領地を王国が一括で管理している訳ではなく、領地を分割しそこに代表となる領主を任命し、各領主に領地の管理を任せているらしい。


 そうなると、各領主によって領地の統治方法も変わってくる。


 領民と相談しより領地が豊かになる様に政策を行う領主もいれば、自らの富を優先して領民を苦しめる様な領主もいる。


 そして老夫婦がいた領地の領主は、領民に重い税を課せる領主だった。


 収入も少なく老いていた夫婦は税を払えず、住んでいた家を追い出され、人里離れたこの場所で隠れるように生活しているらしい。



 …………。



「……それって、国王さんは知ってるん?」


「そんな事、儂らが知るはずもなかろう。しかし、知っているのであれば悲しいことじゃの」



 私達は元々この世界の人間じゃないし、バーウィッチではそこまで暮らす人々が苦しい生活をしている様には感じなかった。



「バーウィッチは観光地じゃからのぉ、住んでおる人も儂らが居た所より豊かじゃったんだろ」



 羨ましそうにそう呟くおじいちゃんの言葉には、半ば諦めの様なモノが込められている気がした。



「つか、おじいちゃん達もバーウィッチに行けばいいんじゃね?」


「儂らに、そんな気力は残っておらんよ」



 日々の生活を送るだけで精一杯と老夫婦は私達に微笑み掛けた。



「さて、引き留めてしまって悪かったの。お主らは旅の途中だったのだろ?」



 そして、おじいちゃんはそこで話を打ち切った。



 …………。



「シラクイラへはお主らの足じゃったら後2日程歩けば到着するじゃろう」


「あんがと。お昼、ご馳走さん。じいちゃんらも元気でなー」



 後ろ髪を引かれる思いで、私達は老夫婦が暮らす小屋を後にした。


 私達が老夫婦に出来ることは少ない、せいぜい魔物(モンスター)から身を守ってあげる事ぐらいだ。


 それは老夫婦も理解しているだろう。



 …………。



 ブウォンブウォンッ



 老夫婦の小屋から少し離れた所で、私達はバイクに乗り込み再び森の中を走り始めた。



「カオちー、どうかした?」


「……何もないでー」



 今まで何でも出来ると思っていた私にとって、老夫婦との出会いは心をギュっと締め付けられる様なそんな風に感じる出来事だった。



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