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脳筋乙女の異世界花道  作者: 藤沢正文
第9章 女伯爵様はご機嫌斜め? 〜我に気品を求めるな〜
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女伯爵、の苦悩?



 アルジェフとの面会から数日後、私は久しぶりにシャルジュとアイラに会っていた。


 今日はシャルジュが魔導バイクに乗りたいと言うことで、魔術士団の研究所に向かっているのだ。



「カオルぅ? 何だか凄く疲れてる見たいだけど、大丈夫?」


「大丈夫ちゃうわッ! なんやねん貴族ってこんな忙しいんかいな!」



 実はあの『事件』以降、私への面会の申し込みが鬼の様に増えているのだ。



「カオちー、モテモテだねー」


「…………」



 半笑いでそう述べるアイラを睨み私は、王城の廊下を無言で歩く。



『第一王子の婚約者候補と噂され、次期辺境伯が想いを寄せる転移者(ストレンジャー)



 その噂は瞬く間に貴族達の耳に入り、私との関係を築こうとする者達が大勢現れたのだ。



「カオルは本当にドナシェル兄様と婚約するの?」


「言っとくけど、(ウチ)は第一王子と会った事ないんやで?」


「貴族の間では、見ず知らずの男女が婚約するのって別に珍しいことじゃないよ?」



 それは初耳だ。



「でも、あれやん。普通、け結婚って先ずはお互いが好きになって、付き合って、そんで……」



 自分で話をしている内に、身体が熱くなって来た。



「カオちー、顔赤いよ? 何なに? カオちー、そーゆーの経験無いの?」



 私の顔を覗き込んでアイラがニヤニヤと微笑んでいる。



「う、うっさいねん! は、早よ行くで!」



 図星を突かれ、どうしていいか分からず、取り敢えず私は逃げる様に急ぎ足で歩き出した。



 …………。



 別に私だって、そういう事に興味が無かった訳ではない。


 けど、小学校中学校と道場に通い詰め空手漬けの毎日で、更に男勝りな性格が災いして中学からはガラの悪い先輩達に目を付けられたのだ。


 それからと言うもの喧嘩ケンカの毎日で、恋愛どころでは無かった。



 (ウチ)だって、普通に……



 …………。



「カオルぅ、待ってよー」


「カオちー、ごめんって!」



 シャルジュ達が慌てて私の後を追いかけてくる。



 …………。



 そもそも、普通に憧れて連合の連中とも縁を切って就職活動してたのに、突然異世界(こっち)に来ることになって。


 それでいつの間にか悪者になって。


 捕まって牢屋に閉じ込められて。


 奴隷になって。


 冒険者やってたら英雄になって。


 そんで貴族になったら、急に結婚って。



 (ウチ)の人生って何なん?



 …………。



「カオル様ぁッ! 見つけましたよ!」



 聞き覚えがある声が廊下に響く。


 顔を上げると、私の行手には鬼の様な形相のロゼッタが仁王立ちで立ち塞がっていた。



「本日も面会のご予定があると、私は言いましたよね?」


「い、言ってたっけ?」



 コツコツと足音を立てて、近づいて来るロゼッタから私は視線を逸らす。



「さあ、参りますよ。お客様がお待ちです」



 ロゼッタは躊躇なく私の襟首を掴み、そう述べた。



「嫌やッ! シャルジュ助けてくれ」


「シャルジュ様、アイラ様。カオル様はこの後、面会のご予定がありますので失礼いたしますね」



 助けを求める私を無視して、ロゼッタは礼儀正しくシャルジュ達へ一礼すると、私を引き摺りながらその場を去ろうとする。



「そ、それなら仕方ないね。カオル、『ばいく』はまた今度乗せてね」


「ガンバッテー、カオちー」



 そして、無情にも2人は引き摺られて行く私を引き留めるとこなく、手を振って見送っていた。



「もー無理! こんな生活もういややッ!」



 私の心の叫びは王城に虚しく響き渡った。




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