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脳筋乙女の異世界花道  作者: 藤沢正文
第9章 女伯爵様はご機嫌斜め? 〜我に気品を求めるな〜
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女伯爵、と貴族のお仕事(前編)



 馬車を降り、目の前に聳え立つ立派な王城を前に私はゴクリと生唾を飲み込んだ。


 以前、王城(ここ)に来た際は未だ幼く父上に連れられての来訪だったので、実質は今回が初めての王城訪問となるのだ、多少の緊張も致し方ない。



「お待ちしておりました。アルジェフ=ハンプール様」



 私の名はアルジェフ=ハンプール、アスティーナ王国内にあるトアイトンという町を統治するハンプール辺境伯の息子だ。


 辺境伯とは聞こえはいいが、先代がアスティーナ王国を守っていた『王国の盾』と呼ばれていただけで、魔王の姿が無くなり隣国とも友好な関係を築いている平穏な今では只の田舎の貴族である。


 しかし、辺境伯の名は伊達ではなくその動向は少なからず国政に影響する。


 今回の来訪の目的は、次期辺境伯として次期国王候補と交友を深めると共に、今回のムラン帝国との騒動で活躍した『転移者(ストレンジャー)』との交友を深めることである。


 今後の王国を築いてゆく方を見極め、王国の力となる人物の人柄を知ることは、辺境伯として重要なことなのだ。


 まあ、要は田舎にいたら中央の情報があまり入って来ないから聞いて来いと言うことなのだが……




 ***




 それから、王城に滞在して数日が経った。


 お忙しい中私の為にお時間を作って下さった、第一王子のドナシェル様、第二王子のヴァレジス様との面会も先日終了した。


 今日は面会の予定もなく明日の第三王子のシャルジュ様との面会の為に……



『ひゃッほーーーーーッ!』



 凄まじい爆音と共に、外から何者かの叫び声が聞こえてきた。


 私は慌てて窓を開け声の主を探したのだが、もう既にその者の姿はなく、城の者たちも多少騒ついていだが慌てている様子ではなかった。



王城(ここ)にも、叔母様の様な方がいらっしゃるのですね……」



 私は窓を閉め、再び椅子に腰掛け飲みかけの紅茶を啜った。



「そういえば、叔母様……いや王妃様も相変わらずでしたね」



 面会の予定にはなかったのだが、急遽叔母様が甥である私に会いたいと予定を捻じ込んで来た時は驚いたのだが、いつもの事を思い返すと平常通りでした。


 そういえば最近仲良くなった女伯爵がいると言っていたのだが、しまった……名前を聞き忘れてしまった。



 まあ、仲が良い方ならいずれお会いする機会があるだろう。



 私はそう思い、明日のシャルジュ様と転移者(ストレンジャー)との面会に備えた。




 ***




 な、なんと言う事だ……。



 シャルジュ様との面会を終え、私は転移者(ストレンジャー)であるカオル=アサヒナ殿との面会を行っていた。



「お、お初にお目に掛かります。カオル=アサヒナで御座います」



 私は目の前で不慣れながらもドレスの裾を摘みお辞儀をする女性に見入ってしまった。


 ムラン帝国との騒動で帝国軍の一個連隊を相手に一人で奮闘した者と話を聞いていたし、シャルジュ様も「カオルは少しお行儀が悪いけど許して上げてね」と仰っていたのでどの様な方が来られるのかと心配していたのだが、これは見当違いだったようだ。



 …………。



 美しい闇夜の様な黒髪に整った容姿、女性らしい華奢な腕とボディーライン。


 一見すると彼女が本当に一人で戦ったのかと疑いたくもなるが、その瞳は力強い何かを内に秘めている。


 きっと彼女はとてつもなく強いのだろう。



「あのー。ハン……プール様?」



 彼女の声に私は我に返った。



「あ、ああ。私の事はアルジェフで構わない、カオル殿」


「はぃ。アルジェフ……様」



 私の言葉にカオル殿は恥ずかしそうに俯きそう答えた。




【登場人物紹介】


【アルジェフ=ハンプール】


 ハンプール辺境伯の息子 男 19歳


 アスティーナ王国内のトアイトンという町の領主の息子。

 ハンプール家は先代より『王国の盾』として王国の領地を守ってきた家系であり、アルジェフ自身も武芸に長けている。


 今回の面会で、カオルに一目惚れする。




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