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脳筋乙女の異世界花道  作者: 藤沢正文
第9章 女伯爵様はご機嫌斜め? 〜我に気品を求めるな〜
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女伯爵、はじめてのお茶会!



「ほ、本日はお招き頂きまして、ま誠にありがとうごひゃいます」



 緊張の余り何度も言葉を噛みながらも、本日のお茶会の主催者に私はスカートを摘み上げ会釈した。


 普段は緊張などしないのだが、こう言った公の場だと何故が緊張してしまうのだ。



「お待ちしておりましたわ、カオルさん」



 国王第一夫人であるベルナベルは、未だ所作がぎこちない私を見詰めフフフと嬉しそうに笑みを浮かべた。



「さあ、カオルさん。こちらにいらして。美味しいお菓子を用意しましたのよ?」


「マジでッ!?」


「……カオル様」



 お菓子と聞いて思わず素が出てしまい、透かさずロゼッタに注意される。



「あ、えっと……本当ですか?」



 慌てて言い直したのだが、ベルナベルは楽しそうにクスクスと笑っていた。


 どうやらロゼッタの言う通り、彼女は懐の広いタイプの人物らしい。



 …………。



 王城の庭園の中に設けられたお茶会の会場には、私以外にも他に招待されたのだろう貴族が優雅に紅茶を嗜みながら、談話を楽しんでいた。


 私とベルナベルは、そこから少し離れた場所に用意されたテーブルで紅茶を嗜んでいる。



王城(ここ)の生活には、もう慣れて?」


「……はい。まだ所作とかは……などは難しいですが、」



 テーカップと格闘していた私はプルプルと震えるカップを一度置き、ベルナベルの質問に答えた。



「無理しなくて大丈夫よ? この間まで、平民の生活していた人がいきなり貴族らしく振る舞えなんて無茶な話ですもの」



 私の事を優しく見守るようにそう述べる彼女は、私がイメージしていた妃様とは全く違った。



「そうそう、このスコーンとても美味しいの食べてみて下さい」



 彼女から差し出されたお菓子を手に取った私は、そのお菓子に一口齧った。


 すると、口の中に蜂蜜の甘さと香りが一瞬で広がった。



「うまッ! あッ……」



 余りの美味しさに、再び素で話してしまった。


 しかし、ベルナベルはそんな事は気にしていない様子だった。


 ……寧ろ彼女は、満面の笑みを浮かべテーブルから身を乗り出していた。



「でしょッ!? このスコーン私の大好物なの〜」


「あのー、ベルナベル様?」



 そう述べると、ベルナベルも嬉しそうにスコーンを大口で噛り付き、頬張り始めた。



「あら? 私がこんな事するのはおかしくって?」


「いや、そんなわけちゃうけど……あ」



 意外な彼女の反応に、私は再び素が出てしまった。


 しかし、そんな事は御構い無しに彼女は夢中でスコーンに齧り付いている。


 スコーンに夢中になる王妃様、その姿が可笑しくて私は思わず笑ってしまった。




 ***




 その後、なんだかんだ打ち解けた私とベルナベルは、優雅とは言い難いが紅茶を嗜みながら、談話を楽しんだ。


 ベルナベルが辺境の下級貴族の出身という事、実は貴族らしい振る舞いが苦手な事、息子と娘が可愛くて仕方ない事など、様々な話をした。


 勿論、私の話もした。


 自分でも貴族様にはちょっと刺激が強すぎる気がしたので、出来るだけオブラートに包んで話をした。


 そんな優雅でもなんでも無い野蛮な話でも、ベルナベルは楽しそうに話を聞いていた。



「はぁ。こんなに笑ったのはいつ以来かしらね?」



 …………。



 ゆっくりと一呼吸置いた後、ベルナベルは先ほどとは違った空気を纏った。



「……カオルさん。結婚するつもりはないかしら?」



 唐突な話に、私の思考は一時停止した。


 そして、しばらくした後、我に返り叫んだ



「けッ、ケッコンッ!?」


「はい。我が息子、ドナシェルと!」



 ベルナベルはそう述べて、優しく微笑んだ。




【登場人物紹介】


【ベルナベル=アステーナ】


 アスティーナ王国王妃 女 38歳


 アスティーナ王国国王の第一夫人

 公務の際は厳格な雰囲気を纏っているが、普段は温厚な優しい女性。


 辺境の貴族出身で平民にも理解があり、少々庶民的な一面も持っている。


 今回のお茶会でカオルの事を物凄く気に入ったらしい。



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