女伯爵、の憂鬱。
その日、私は柔らかなベットから起き上がる事なく、1日を過ごすと固く決意した。
故に、しっかりとシーツとマットレスを掴み、断固としてベッドから降りないという意志を身体で示しているのだ。
「カオル様ぁ! さぁ、降りて着替えを始めますよ〜ッ」
「嫌やッ! 私は絶対ここから離れんからなッ!」
使用人のロゼッタは、私に馬乗りになった状態でベッドから私を無理やり引き剥がそうとしている。
それに抵抗する様に、私は必死で争っていた。
「もうお約束の時間まで1時間もないんですよ! さあ、早くお召し物をお着替え致しましょう!」
「絶対嫌やッ! なんで私がお茶会なんて行かなアカンねんッ」
「ベルナベル様のご好意を無下にするおつもりですか!?」
実は、晩餐会の際にベルナベルという国王の第一夫人にお茶会に誘われたのだ。
そして、今日がそのお茶会の当日。
私は体調不良を理由に欠席するつもりだったのだが、そんな仮病はロゼッタにすぐさま見破られ今に至っている。
「そんなつもりはないで、けど貴族様のお茶会なんて私の性に合わんねんッ」
「何を仰るんですか。誘いを受けたのはカオル様じゃありませんか、誘いを受けた以上最後まで責任を持って下さいませ!」
確かにロゼッタの言う通りだ。
しかし、初めての晩餐会でいきなりお茶会に誘われるなんて思っても見なかったので、つい条件反射で快諾してしまったのだ
「せやけど……」
「さあ、覚悟を決めて下さいませ。私もお茶会の際はお側にいますので」
「ホンマ?」
ロゼッタの話に私は顔を上げで尋ねた。
「はい、御席からは離れていますが後ろで控えさせて頂きます」
不安でいっぱいの私に、ロゼッタは優しく微笑みそう述べた。
「大丈夫ですよ。あれだけ所作は練習したじゃありませんかッ」
「でも、まだ全然やで?」
「た確かにそうではありますが、ベルナベル様も多少の事は目を瞑って下さりますよ」
…………。
「わかった、じゃあ頑張るわ」
ロゼッタの説得に応じた私は、彼女にされるがまま服を着替え始めた。




