元就活生、ナンパされる。
(折角、人が気持ち良く飲んでるっちゅーのに、何やこいつらは?)
口には出さないようにしながら、私は彼らに視線を送った。
(ひーふーみー、……6人か)
「何ですか、お兄さん達?」
ここは様子見という事で、町娘のフリをしてみる。
「そんなちんけな連中と飲んでないで、俺たちと楽しもうや」
「えー、奢ってくれるんですかー?」
私は一番偉そうなお兄さんに上目遣いで尋ねてみる。
「おうよ。好きなだけ飲ましてやるよ」
「やったー」
奢ってくれると言うのだから、ここは素直に甘えるとしよう。
私は立ち上がり彼らについて行く。
彼奴らは潰れて気がついていないみたいだった。
(まぁ後で迎えに来るから、しばらくそこで寝てたらええねん)
***
先程の酒場を出た後、私とお兄さん達は、別の酒場で飲み直していた。
「嬢ちゃん見かけない顔だが、どこから来たんだ?」
一番偉そうなお兄さんが私の隣に座って、腰に腕を回してくる。
その腕をしれっと避けながら私は話を続けた。
「えーっと。日本って所なんだけど、お兄さんは知ってる? あ、おかわり下さい」
「ニホン? 聞いた事ねぇな。おい、お前ら知ってるヤツはいるか?」
彼が他のお兄さんに話を振るが、皆首を横に振る。
日本の事を誰も知らないようだ。
「そっかー」
「そんな事よりも、今晩どうだ?」
再び男は私との距離を詰め、腰に腕を回してきた。
「えー。何がですかー。あ、おかわりくださーい」
何も知らない振りをしながら、私は再び腕から逃れる。
(やっぱり身体が目当てか)
(あーあー。これやから男は嫌やねんなー)
「清純ぶんなよー。町娘が酒場で飲んでるなんて、そっちから誘ってるようなもんじゃねぇか」
(近い近いって! 徐々に顔を近づけて来んなッ!)
「えー。カオル、何のことかわかんないなー。あ、おかわりー」
再び男から距離をとり、私はしらばっくれる。
「だ・か・ら〜男と女が夜することなんてきまってるだろ〜」
(ちッ、本題に入ってきやがった)
もうちょっと飲んでから帰るするつもりだったのに!
(はぁ、この辺が引き際やな……)
「カオル、なんか怖くなって来たから帰ります」
私は立ち上がり、店を出ようとする。すると、男は私の腕を強く掴んだ。
「おっと、今更帰るなんて虫のいい話はねぇよな?」
「はなせ……」
「は?」
「離せって言ってるやろ、ボケがッ!」
私は飲みかけのエールを男の頭にぶっ掛けた。
【今晩のカオル酒】
エール8杯(1軒目4杯、2軒目4杯)
記録更新!




