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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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93.風が吹いて桶屋が儲かる

 この日は更に稼いで、キリよく100万ピロになったところでダンジョンを出た。
 地下三階への道は確認したが、そこの探索は明日に回すことにした。

     ☆

 ダンジョンの前、集まってきた村人が見守る中。
 買い取り屋・燕の恩返しから急遽派遣されてきたイーナに魔法カートを預けた。
 イーナは魔法カートから砂金を取り出し重さを量る。

「はい、102万2134ピロですね」
「「「おおお!」」」

 集計が終わった後、別の店員から金庫をもらい、そこから金を数えておれに渡した。
 ダンジョンのドロップ、そして買い取り。
 この世界の生産活動の一番オーソドックスな場面をみて、村人たちは歓声を上げた。

「こうやって稼ぐのか」
「すぐに金が手に入るのはいいな」
「おれも明日ダンジョンにもぐるぞ」

 村人は感心したり、テンション上げたりした。

「こ、これも頼む」

 おれの次はアランがイーナの前にやってきた。
 かれも何回かアウルムに潜ってて、それでゲットした砂金を査定してもらった。

「全部で24932ピロですね」
「おおお……」

 手渡された現金に、アランは感動し身が震えた。
 他にも何人かダンジョンに入った人間が砂金を買い取ってもらった。

 これでインドールの村人たちもダンジョンからドロップしたものを換金するまでの流れが分かっただろう。
 なら、次は……。

「アリス、この村に酒とかあるか? 出来れば多く」

 おれは横に立っているアリスに聞いた。

「お酒? うーん、村長とカロンさんとミラウさんちにあると思うよ。年に一回の村の祭りのために備蓄してるの」
「お祭りのためか、なら量は足りるかな。これでそれ全部買えそうか?」

 今日の稼ぎ、約百万ピロをアリスに見せた。

「足りると思うけど……」

 どういう事? って不思議そうな顔で見られた。

「せっかくだから宴会やろうぜ、このお金で」
「そんなとんでもない」

 背後から女の人が話かけてきた。
 杖をついている、70歳くらいのおばあさんだ。

「あなたは?」
「ミラウといいます」
「あっ、アリスがお酒を備蓄してるといった」
「そうです。恩人様が宴会を開くというのなら、うちのお酒を是非使ってください」
「ありがとうございます、では――」
「お金などとんでもない、恩人様から頂くなんて」
「「「そうだそうだ」」」

 ミラウおばあさんがいうと、何人かの村人がそれに付合した。
 気持ちは嬉しいが、それじゃ意味がない(、、、、、)

「ありがとうございます。でも受け取ってください」
「いいえ恩人様からは……」
「じゃないと開きません」

 おれはぴしゃりと言い放ってやった。
 ミラウおばあさんは一瞬困った顔をしたが、その後受け入れてくれた。

「分かりました、恩人様のお言葉に甘えます」

 おれは代金を聞いて、ミラウおばあさんに金を渡した。
 カロンさんや村長さんにも話が伝わり、二人はやってきて同じように「金はもらえない」と言ったが、おれは無理矢理代金を押しつけた。

 村の酒はやすく、100万ピロは酒代払っても余ったから、他は料理に回してもらう様に村長に預けた。
 そうして、宴会に向かって村人たちが動き出す中。

「ねえねえリョータ、なんでお金出す事にこだわったの?」
「おれ、昔半年間だけ海外出張してたんだ、その時の出張先がここと同じ様な村だった」
「???」

 アリスは首を盛大にかしげて不思議がった。
 すぐには分からないだろうけど、多分、すぐに分かるとおれは思った。

     ☆

 村の広場で行われた宴会が大いに盛り上がり、亮太が村人と飲んでいる中。
 ミラウはプレイという村人を呼び出して、広場の隅で話した。

「どうしたミラウ婆」
「プレイや、大工の腕はさびてないかね」
「もちろんだ、家の修繕か?」
「こんな婆の住む家なんかどうでもいいさね。それよりもうちの裏あたりに家を一軒建てたいのさ。ダンジョンが出来た時いて、息子が街から帰ってくるって連絡があったのさ」
「おー、それはめでたい」
「恩人様がうちの酒をまとめて買い上げてくださったおかげでね、これくらいで足りるだろ?」

 ミラウはプレイに紙幣を渡した。

「いっとくがこれじゃおれの働き分だけだぜ」
「わかってさ、材料費はこっち、ちゃんととってある。明日になったら注文するさ」
「なら引き受けた。任せて、息子さんのためにいい家を建ててやるぜ」

 プレイは金をポケットにしまい、ミラウは杖をついて人の輪に戻っていった。

「プーレーイ」
「どわっ! なんだリーシャか、脅かすなよ」
「はい」

 リーシャと呼ばれた中年女が手のひらを上にしてプレイの前に差し出した。

「な、なんだよ」
「とぼけない、今の見たからね。収入が入ったらとりあえずうちのつけ払いなさい」
「こ、これを持ってくのか? 全部持ってかれたらおれは――」
「ツケは払いなさい、明日からまたつけてもいいから」
「うっ、わ、わかったよ……とほほ……」

 プレイはしまったばかりのお金を取り出し、リーシャにわたした。

「ひのふのみ……はい、これおつり」
「おつりって500ピロもねえじゃねえか」
「またつけてもいいっていったでしょ。ツケでもいい、でも金を持ってる時はちゃんと払う。間違ってる?」
「間違ってないです」
「よし」

 シュンとなったプレイを置いて、リーシャは人の輪の中に戻っていった。
 その中から一人の青年を見つけた。
 名前はギニス、リーシャの実の弟だ。

 リーシャはちびちびとお酒を飲んでいる物静かな弟の横にどかっと座った。

「ほら」
「姉さん……え? どうしたのこんな大金」
「プレイから徴収してきた、あいつがうちでたまりにたまったツケの分」
「へえ、よく払えたねあの人」
「これくらいあれば足りるだろ?」
「え?」
「あんたとキキの結婚のことさ、これくらいあれば足りるだろ」
「そ、それはそうだけど、でも……」
「女を待たせない、そして姉弟の間で遠慮しない。とっとと結婚してキキを幸せにさせてあげな」
「そ、そうだね……」
「わかったらとっととプロポーズしてきな! 金はあたしが一旦預かっとく。結婚式とかいろいろ先に動かすところにはらっとくよ」
「で、でもキキがうんっていうか……」
「村中やきもきさせてる二人がなにをいうのさ、早くいきな」
「わ、わかったよ!」

 ギニスはリーシャに追い出されて、働き者で、お酒注いで回ったり料理を取り分けたりしている幼なじみのキキのところに向かって行った。

 そして――。

     ☆

「サ、サトウ様!」

 村長たちとお酒を飲んで、ダンジョンを中心になり立つ経済活動をおれなりに説明してやってると、一組の男女がやってきた。
 片方は何回か酒を注ぎにきたキキという少女で、片方ははじめてみる線の細い少年。

「キミは?」
「ギ、ギニスっていいます。あの、サトウ様!?」
「うん」
「おれ達の仲人になってください!」
「仲人? キミたち結婚するのか」

 ギニスは頷き、キキはさっきまでの働きっぷりとは裏腹に恥ずかしそううつむいた。
 だが嫌がってるそぶりはない、むしろ今が人生の絶頂期と言わんばかりに嬉しそうにしている。

「そうか、おめでとう」

 おれは酒の入ったグラスを掲げて祝福の言葉を継げた。
 そして思い出して、村長に聞く。

「おれが仲人になっていいのか? 村的になんかまずいってことはないのか?」
「何をおっしゃいますか、恩人様になって頂けるなんてこの上無い名誉。だからギニスもこうしてきたのです」
「そうか。ちなみにおれは独身だがそっちも大丈夫か」
「それも大丈夫です、このあたりでは既婚者じゃないとダメということはありません」
「そうか」

 頷き、誰も口をつけてないコップを二つとって、酒を注いでギニスとキキに渡す。

「仲人やらせてもらう。おめでとう」
「ありがとうございます!」
「ありがとうございます」

 感謝する二人と乾杯した。
 二人は手をつなぎ合って、酒なのか幸せからなのかわからない、真っ赤な顔をしていた。

 おれはそれをみて、隣に座っているアリスにいった。

「ってことだ」
「???」

 アリスはやっぱり分かっていなかった。
 こういう半ば停滞している村の場合、一気に大量の金を放り込むと劇的に動くものだ。
 おれが前に海外出張したところがそうだった。日本企業が持ち込んだ数百万レベルの金が呼び水になって、街の止まっていた経済が一時的にものすごく回転した。

 そしてそういう回転が行き着き先はいくつかある、その一つが結婚だ。
 幸せいっぱいのギニスとキキ。
 流した百万ピロがどのように動いたのはしらないが、巡り巡ってこうなったとおれは確信していて。

 なにより、100万ピロは使い回されて、100万ピロ以上の経済効果をうんでると確信していた。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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