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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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91.10億の男

 拘束したサメチレンの協会長と暗殺者を見張った。
 二人とも話さない、それどころかおれをまともに見ようとしない。

 しばらくして、アリスがクリントを連れて戻ってきた。

「ほう、これはこれは……」

 到着したクリント、拘束されてる二人を見て目がきらりと光った。
 ちょっとだけゾクッとした、獲物を見つけた肉食獣の目だったからだ。
 獲物じゃないのにこっちまでゾクッとする様な鋭い目だ。
 それでいて笑顔だ、ものすごくいい笑顔だ。

「勘違いするな、これは――」
「もちろん、勘違いなど致しませんとも。ここには誰もいませんし、勘違いのしようがございませんな」

 なんか白々しいクリントだ。
 目は相手をまっすぐ見てるのに、「ここには誰もいない」とうそぶいている。

「誰もいませんし、何も起きてはいません。ですな、サトウさん」
「うん? ああ……そうだな」

 いまいちクリントが何をしたいのか分からないけど、直感的に話を合わせた方がいいと思った。

「ですので、わたしが今から話すのも独り言になりますな」

 と、前置きをした上で、クリントはまっすぐと、笑っていない目で話した。

「インドール、十億で手を打とうじゃないか、とあちら様に申し入れるつもりだ。難しい交渉だが、なに、必ず実現すると信じている(、、、、、)よ」

 うわー、すげー。
 脅迫だ、おれ初めて脅迫の現場を目撃したよ。

 サメチレンはインドール解放の代価として100億ピロを突きつけてきた、それをクリントは10億ピロと脅迫――もとい交渉しているのだ。

 100億から10億、10分の1、というか向こうが最初に出した金の十倍か、まあ、妥当だな。
 そしておれの偶然な働きが90億ピロ相当になるって訳か。
 そう考えるとすげえなって思った。

 目が笑ってないクリント、苦虫をかみつぶしたサメチレン協会長。
 二人はしばし睨みあったが、やがて向こうが折れた。

「わかった、10億にしてやろう。支払いはいつでもいい」
「むぅ、なーんかまた独り言いいたくなったなあ、糖分が足りてないのかな」

 クリントは芝居がかった仕草で大量の角砂糖を取り出して、見てるだけで胸ヤケするほどの量を口の中に放り込んで、ボリボリとかみ砕いた。
 その行為におれもあいつらもあっけにとられる、場の空気はクリントが完全に支配した。
 やがて、角砂糖が完全に呑み込まれると。

「10億ピロをもらわなければ忘れられそうにないなあ、なにかを(、、、、)
「んな――」

 うーわー。
 すごい、っていうかエグいぞクリント。
 10億ってのは値引き交渉じゃないのか! むしろ向こうに口止め料で払えって意味か!
 鬼だ! 鬼だこの人!
 しかもこの人

「そ、そんなに払えるか!」
「なにか聞こえた様な気がするけど、空耳だろうなあ。そうだ、今聞こえたことをサメチレンの協会や冒険者たちに感想を聞かなくてはな」
「そ、それはやめてくれ」
「……」

 クリントは何もいわなかった、ただただ、笑っていない目で相手を見つめるだけ。
 顔がものすごい笑顔なのがアンバランスで、かえって怖かった。
 それを見て、「この人を怒らせるのはやめよう」、とおれは本気で思ったのだった。

     ☆

 相手がいなくなった後、クリントは満足げな顔で念書を懐に入れた。
 向こうに書かせたもので、インドールの放棄と10億ピロの支払い、両方を書いた契約書だ。
 相手がそれを書いた途端紙に魔法陣が広がったから、契約に魔法の力を――多分強制力的な物を加えたものなんだろう。

 アリスが呼びにいったこの一瞬でそんなものまで用意してきたクリントがますます怖くなった。

「これはインドールの件はほぼ解決だな」
「そうなのか?」
「サメチレンはここ放棄したし、冒険者を迎え入れるためのインフラ作りも10億ピロがあれば当面は足りる。その先はダンジョンからの税収次第だな」
「そうか」

 ちょっと意外だった、クリントの口ぶりだと10億ピロは丸々インドールに使うって口ぶりだ。

「このインドール、そしてアウルムはこれから稼ぐダンジョンだ。10億ピロ、最大限に利用しないとな」
「アウルム?」
「ダンジョンの名前だ」
「決まったのか」
「え?」

 きょとんとするクリント。おれ、なんか変な事を聞いたか?

「ダンジョンの名前は人が決めている、という誤解を抱いているのです?」
「ちがうのか」
「ダンジョンは生まれた時からそれぞれ名前を持っている、人間はそれを魔法で確認するだけだ」
「へえ」

 それは意外だった。

「大地の神がなにかの法則でつけているという説もあるのだが、正直よく分からない」

 クリントがよく分からないっていう法則はおれには何となく分かる。

 テルル、アルセニック、シリコン、ニホニウム、セレン、そしてアウルム。
 そのうちヘリウムとかウランとか生まれそうな法則だ。

     ☆

 クリントとわかれて、村に戻ってきた。
 村に入るとすぐに見つかって、村人がわらわらと押し寄せてきた。

「ありがとうございますサトウ様!」

 村人の先頭に立つ村長がいきなりお礼を言ってきた。
 さすがに心当たりがなくて、きょとんとしてしまうおれ。

「あ、ありがとうってなんの事だ?」
「アリスから聞きましたぞ、インドールをサメチレンから解放しただけではなく、村を発展させるための資金、十億もとってきてくださったとか」
「え? なんでもうそんな事を知ってるんだ? クリントとわかれたばかりだぞ」
「ありがとうございますサトウ様」
「ありがとう!」
「ありがとう恩人様!」
「あなたはこの村の救世主だ!」

 村人は口々にお礼を言ってきた。
 恩人から更に救世主へ、ますますオーバーになっていってるぞ。

「恩人様のご恩に報いなきゃな」
「ああそうだな! カネもあるし、ダンジョンもある! おれ達の手で村を大きくしていこうぜ!」
「ここまでされてダメだったんじゃ顔向けできないよな!」

 意気込む村人たち、ふと、おれはクリントの言葉を思い出した。

――10億ピロ、最大限に利用しないとな。

 クリントはそう言った。
 10億の話は一部曲解(脅迫が援助に)されているが、村人たちにはおれの功績として伝えられた。
 そして、村人たちはやる気があっぷした、ものすごくアップした。

 きっと、これもクリントがいう「最大限に利用」の一環だろうな。
 それはいい、いやいややるよりはこれくらい意気込んでやる方がいい。

 いい……んだけど。

「モンスターをガンガンたおさねえとな!」
「あんなチビ悪魔楽勝だぜ」

 一部の若い男のセリフがどうにも不安だ。あれだとまた事故りそうだな。
 ……仕方ない。

「少し待っててくれ」
「どこに行きなさるのですかサトウ様」
「すぐ戻る」

 そう言って村人たちを待たせて、来た道を引き返した。
 人気のない森に戻ってから、おれはポーチの中から砂金を地面に落とした。

 きらきら光る砂金をおいて距離をとって、しばらく待つ。
 砂金はハグレモノになった。

 あらかじめスタンバっていた銃で拘束弾を撃ち、五体の小悪魔――ハグレモノを拘束した。
 そして、そいつらを連れて村人の元に戻る。

「さ、サトウ様? これはどういう……」
「今からトレーニングしよう、みんな輪になって広がってくれ」

 村人たちが言われたとおり距離をとったのをみて、一人の青年に話しかける。

「そこのお前、さっき楽勝って言ったな」
「う、うん」
「よし、ならこいつと戦ってみろ」

 小悪魔を一体、光の縄を引きちぎって(撃ったおれは簡単に解ける)送り出した。
 大口を叩いた青年はあっさりやられた。
 小悪魔にトドメを刺されそうになったのを拘束弾で救出して、回復弾で直した。

「今のは急ぎすぎ。前に言っただろ、こいつらは結構意地悪い、死んだふりとかもやってくるんだ」
「は、はい……すみません」
「まだやれるか? じゃあ二回戦だ」

 おれは村人たちにトレーニングをつけた。
 クリントがたきつけたせいで無謀に突っ込む村人が増えたから、せめて、無駄死にしないように鍛えなきゃと、おれは思ったのだった。

     ☆

 亮太と村人のトレーニングを、離れたところからアリスとイヴが眺めていた。

「低レベル、お人好し」
「それがリョータだもん」
「至れり尽くせり」
「そのせいでみんなますますリョータの事尊敬する様になってるもんね。もう神様扱いだよ」
「あそことあそこのメス、目が発情してる」
「ホントだ、イヴちゃんがニンジン見てるときの目だ」

 イヴは無言で速い(、、)チョップでアリスを叩いた。
 二人が見守る中、亮太は無意識に村人からの信頼度と好感度をますます高めていくのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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