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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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89.雇われ協会長

 ドロップした金塊を持って、アランを連れてダンジョンを出た。
 入るたびに構造が変わるダンジョン、出るのも一苦労だ。

 アランは悪魔にやられて、体は回復弾で治ったが心に傷を負って、立ち直れずにいる。
 小悪魔が襲ってくるたびにビクってして、怯え体がすくむ。
 それを守りつつ、ダンジョンから連れ出した。

「サトウさん! アラン! 大丈夫だったのか!」

 カルロが真っ先に走ってきて、他の村人もよってきた。

「す、すまない。心配をかけた」
「服がぼろぼろじゃないか、モンスターにやられたのか」
「ああ……サトウさんが来てくれなかったら危なかった」

 アランの言葉を聞いた村人たちが「おぉ……」と感嘆の声を漏らした。
 夜のダンジョン前、無数のたいまつの中。
 村人がおれを尊敬の眼差しで見つめて来た。

 そんな中、アランの息子のリックが一歩前に出て、おれに頭を下げた。

「ありがとうございます! 父さんを助けてもらって」
「気にするな。それよりもアラン」
「な、なんだ」
「『まだいける』、ってのがどれだけ危ない事なのか分かっただろ?」
「あ、ああ……痛いほど思い知った」
「それをみんなに伝えてくれ、お前の口からいった方が説得力あるだろう」
「わかった、任せてくれ。おれの様な人間を二度と出さないと約束する」

 まだすこしだけ顔に怯えが残ってるが、アランは強く頷いた。
 軽くトラウマになった分、それが村人に伝わればいいと思った。

 おれを囲む尊敬の輪の外にクリントと村長の姿が見えた。
 人垣を掻き分けて二人に近づく。

「クリント、これをみてくれ」
「これは……金塊?」
「レアモンスターからドロップした」
「……なるほど」

 さすがはダンジョン協会長、それだけで理解したようだ。

「通常のモンスターは砂金を、レアモンスターはこんな金塊を。このダンジョンは相当価値のある金の鉱山だ」
「そのようだな。下の階はどうなんだ?」
「存在も確認してない、ダンジョンの構造はコロコロ変わるから」
「そうか、それはこっちで確認しよう。どちらにせよこんな風に金塊が出るのなら金を出せる。この村をシクロの傘下に引き入れよう」

 おれはちょっとだけホッとした。
 億単位の話が動くのだ、こうしてクリントを動かすのが今のおれに出来ることの限界。
 クリントが動いてくれるみたいで、ホッとした。

「ありがとうサトウさん、今回の事は全てキミのおかげだ。それなりの謝礼を払わせてもらう」
「期待しないで待って――」
「砂糖をとりあえず2000トン送っておこう」
「本当に期待しない方がいいやつだな!」
「遠慮はしなくていい、砂糖はいいものだ」
「遠慮じゃなくて本当にいらないから! そんなにもらっても処分に困るから」

 その価値は知ってるけど、砂糖2000トンなんて想像しただけで胸ヤケするから全力で拒否した。

「そうか。まあ、キミへのお礼は後日あらためて考えるとして、今はサメチレンとの交渉だな」
「そうしてくれ」
「あ、あの!」

 それまで黙っていた村長が話に割り込んできた。

「どうした」
「わ、我々はシクロではなく。恩人のサトウさんの元につきたいのだが」
「サトウさんの?」

 クリントは眉をしかめた。
 というか、何を言い出すんだ村長だ。

「待ってくれ村長さん。おれはただの冒険者だ、サメチレンと交渉する力も金もない。それにそもそもおれをここに派遣したのはこのクリントなんだ」
「し、しかし……」

 村長はクリントをちらっと見る。
 いきなりのワガママにクリントが眉をしかめているせいか、それに気圧されて目をそらした。

「ま、街というものは信用できないのだ……」

 村長は消え入りそうな声でいった。
 気づけば、ダンジョン前にいた村人たちが全員こっちを向いていた。

 すがるような目をおれに向けてくる。

 街が信用出来ない。
 この村、インドールは長い間サメチレンから冷遇されてきたからそう思うようになったのか。

 何もない貧しい村、よく見れば質素を通り越してツギハギだらけの衣服、一様に痩せている村人。
 そして、村を出たアリス。

 サメチレンに長年冷遇された結果が今のインドールか。
 それを考えるとなんとかしてやりたくなった、冷遇され、不遇なインドールの村を何とかしてやりたくなった。

 どうすればいい、と考えてると。

「なら、インドールダンジョン協会を作ろう。そして会長はサトウさんだ」
「え?」

 驚くおれ、村人もざわざわし出した。

「シクロの下じゃない、ここインドールに協会を作ろう。その会長がサトウさんならみんなも安心だろ?」
「ああ! もちろんだ」

 村長が真っ先に頷くと、村人たちも口々に追従した。

「サトウさんなら文句はねえ」
「二回もおれ達の事を助けた恩人だからな!」

 おれを持ち上げる声をバックに、クリントはおれをみた。
 と、ということだが。って無言のメッセージが聞こえてくる。

「だ、だけど、おれはただの冒険者で」
「冒険者は続けていいとおもう。わたしもよくシクロを離れてダンジョンにもぐってるからな」
「そうなのか!?」
「最近の冒険者はなってないからな、モンスターはただ倒せばいいというものではない」
「ただ倒せばいいというわけではない?」

 どういう事だ? 思わず眉をしかめつつ首をかしげた。

「愛だよ愛、愛を持って倒してこそ最高の砂糖をえらえるのだ」
「……あ、はい」

 真面目に聞いて損した。
 クリントの妄言だろうなと思った。
 この世界で愛がドロップ率を超えられるとは思えない。
 あのイヴがおれにニンジンをおねだりする時点でそれははっきりしている。

 ドロップ率>愛

 それがこの世界なんだ。
 そうなんだが、突っ込まなかった。

 それをやるために時々ダンジョンに行ってるってのはよく理解できた。
 つまりおれも今まで通りでいい、クリントは言外にそう言ってる。
 当然といえば当然だ、金を出すのはシクロなんだ。

 おれはいわば雇われ店長ならぬ、雇われ協会長ってところなのだ。

「おれが……インドールのダンジョン協会長か」

 頷くクリント。
 村人たちは全員おれを見つめてる。
 すがるような、期待する様な目で。
 今まで冷遇されてきた村人たち。

「……方針をいくつか決めておきたい」

 クリントを見て、限りなく方針(条件)というニュアンスで言う。

「聞かせてくれ」
「今いる村人たちの買い取り税を大幅に安くする」
「ゼロでいい」

 クリントは即答した。
 おれでもそういうだろう。
 今の村人の数、その力。
 税金を免除したとしても誤差のレベルになるだろう。

「最初の内は税金を投入してインフラとか整える」
「それは自然とそうなる」

 これも即答された。そんな気がしてた。
 砂金と金塊を産み出すダンジョン、金の鉱山。
 鉱山の街に冒険者がわらわらと集まってくるはずで、そうなると勝手にインフラやらや整えていくだろう。

 おれはいくつか条件をだした。
 今なら出せる、おれが間に入ってないとクリント――シクロはこのダンジョンを手に入れられないだろうから。
 そして今出さなきゃって気分になった。クリントなら大丈夫だろうが、この先村人がサメチレンの下にいた時代のような不遇の時代にならないために。

 おれは、考えうる方針(条件)をクリントにだした。
 あたり前の事しか言ってない、無茶なことは何一つないからか。
 クリントは全部即答で受け入れた。

「他には?」
「もうない、これで充分だ。サメチレンの方はたのむ」
「任せてくれ」

 クリントはそう言って、身を翻して歩き出した。
 あとは、彼が向こうの人間との交渉を待つだけか。

 いや、任せっきりじゃだめか。
 セレンの時の様に、まだ力が必要になる場面が出てくるかも知れない。
 その時のために、おれは気を引き締めた。

「ありがとう、ありがとうサトウさん」

 そんなおれに、村長と村人たちが押しかけてきた。

「さすが恩人様だぜ」
「ああ、シクロみたいなでっかい街のダンジョン長と対等にやり合うとかすげえ」
「おれ、サトウさんのために働く! 頑張って強くなる!」
「というか弟子にしてくださいサトウさん!」

 残されたおれは村人たちにもみくちゃにされて、ちょっとだけ困ってしまったのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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