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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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73.ドロップの呪い

 テルルダンジョン、地下一階。

 オール+1の指輪、植物+3の赤いポーション、植物ドロップをフルブーストしてAにしたエミリーがハンマーをもって飛び込んだ。
 飛びつくスライムにそれ以上に速さで迫って、カウンターの一撃で叩き潰す。

 スライムは消えて――消えただけだった。

「やっぱりダメなのです」
「これで十体目……Aで十連続ドロップ無しだなんてな」
「今までになかった事です」
「と、いうことは……」

 頷きあうおれとエミリー。
 紙幣のハグレモノの存在をしって、ポーションでドロップをブーストする様になってから、エミリーはドロップAの世界を体験してきた。
 そんな彼女もあきらかにおかしいという。

 そしてダンジョンの奥からイヴが歩いてきた。
 自前のウサミミを垂らし、肩を落としている。

「どうだった?」
「ニンジンが死んだ……」
「ニンジンは死なないけど……地下二階もダメか」

 イヴには手分けしてイヴには地下二階の眠りスライム、ニンジンドロップを調べてきてもらったが、そっちもダメみたいだった。

 意気消沈しているのはイヴだけじゃなかった。
 まわりにいる他の冒険者たちもそうだった。

「なんでドロップしねえだよちくしょー!」
「やべえよやべえよ、今日の夕方までの借金かえせねえよ」
「けっ! やってられっか! おう飲み行くぞ飲み!」

 あっちこっちから切羽詰まった声とか、やけっぱちの声が聞こえてくる。
 一人また一人とダンジョンから引き上げていく冒険者たち。
 ダンジョン内の人間は普段よりもだいぶ少ない。

 ドロップ消失現象。
 減少ではない、消失だ。
 聞いていたが、実際に現場に来ると状況は予想以上に悪いと体感した。

「リョータさん」

 今度はセレストがダンジョンの外からやってきた。

「どう?」
「結構まずいわ。ドロップがなくなった事からあっちこっちで買い占めが起きてる。市場から野菜系が全部消えたわ」

 街の様子を見てきたセレストが重々しく言った。
 買い占めか、もしかしたらって思ったけど、予想以上に起きるのは早かったな。

「これはまずいな」
「そういえばヨーダさんはどうなのです?」
「おれか、どうなんだろう」

 ちょうどスライムが一匹やってきたので、銃を抜いて通常弾をうった。
 弾はスライムを貫通して吹っ飛ばす――もやしがドロップした!

「すごい! ヨーダさんはドロッ――」

 おれはとっさにエミリーの口を押さえた。
 もやしをサッと拾って魔法カートに放り込みまわりを見た。

 幸い、今のドロップ誰にも気づかれてないみたいだ。

「むぐっ……むぐむぐ……」
「ああ悪い、今のは黙っててくれ」
「むぐ」

 うなずくエミリーの口から手を放す。

「ぷはー……死ぬかと思ったです」
「悪い悪い。セレストもイヴも今の黙っててな」
「もちろんよ」
「うさぎは打ち止めを要求する」
「終わったら倍付けで」

 頷くイヴ、彼女はチョロい。

「でもどうしてです? ヨーダさんだけ……やっぱりあれ(、、)だからです?」
「あれ……だからだろうな」

 うなずき合うおれとエミリー。
 二人の頭に浮かんでいるのは「ドロップS」だった。

「Aでもダメでヨーダさんだけ……まるでハグレモノみたいなのです」
「それかニホ――まさか」

 一瞬のひらめき、おれは身を翻して駆け出した。

「ヨーダさん!?」
「どこ行くの?」

 エミリーとセレストの声を振り切ってダンジョンを飛び出す。
 テルルを出た瞬間アリスと遭遇した。

「リョータ? どうしたのそんなに慌てて」
「ちょうどよかったアリス! 昨日の夜『新しい子?』とか言ったよな」
「う、うん。言ったけど……」
「それどっちだ?」
「えっと……あっち?」

 アリスは一旦まわりを見回してから、自分の右手方向を指した。

「あっち……やっぱり!」
「あっ、待ってリョータ!」

 アリスの声も振り切って更に走るおれ。

 全速力で駆けぬけて――ニホニウムにやってきた。

「はあ……はあ……おれの考えが正しければ」

 上がった息を整えて、二丁の銃に弾を込めてからダンジョンに踏み込む。
 ニホニウム、地下一階。
 普段ならスケルトンがうようよいる場所だが、今は一体も見当たらなかった。

 歩いても歩いても見当たらない、モンスターがまったくいない。
 この光景をおれは知ってる。

「ダンジョンマスターか」

 現われた時ダンジョンから全てのモンスターが消える。
 そして長くいると生態系を変えてしまう――ダンジョンの主。
 それが出ていた……セレンの時とまったく同じ状況だ。

 ニホニウムのダンジョンマスター。
 おれだけがドロップするここみたいな状況がシクロ全体に広まった。

「つまり、シクロからドロップが消えたのもダンジョンマスターのせいってことなのか?」

 確証はない、状況証拠しかない。
 が。
 ニホニウムの空気は前にセレンで感じた空気と一緒だ。ダンジョンマスターが現われた時とまったく同じ空気。
 そして……今朝家を出たときに感じていた空気。

「なんでもっと早く思い出せなかったんだ、まったくもう!」

 悪態をつきつつ、銃を構えたままダンジョンを進む。
 間違いなく、ニホニウムのダンジョンマスターがこのドロップ無し減少の元凶だと確信する。

 地下一階をくまなく捜索、いなかった。
 二階、三階と回って見たやはりいなかったが、四階に入った途端。

「むっ」

 今までで一番濃いダンジョンマスターの気配を感じた。
 間違いなく――この階にいる。

 一旦立ち止まって銃弾を入れ替えた。
 通常弾、冷凍弾、火炎弾、回復弾、拘束弾、追尾弾。

 もっている六種類の弾丸を全て込めた。
 初めて出会うダンジョンマスター、なにか聞くのかわからない、どんな相手が出てきても対処出来るようにする。

 そうしてから、気配の濃い方向に向かって進んでいく。
 しばらく歩いてると――出会った。

 人型のモンスターだった。
 身長は160センチ弱で、見た目は女。
 髪は長くて地面に垂れていて――おそらく二メートルは超えている。
 服は何も着ていない、素っ裸だ。

 が、エロスは感じない、むしろ寒気が背中を駆け上る。
 それもこれも、そいつの無表情と、青白い肌と放っている燐光から来るものだろう。
 生気が一切感じられない、ゾンビか死霊の類だと直感的に思った。

「ここのダンジョンマスターだな、しゃべれるか?」
「……」

 銃を突きつけながら問う、が返事はなかった。
 人型だからつい対話を試みたが――それは間違いだった。

 ダンジョンマスターの姿が揺れた。

「――っ!」

 次の瞬間燐光が目の前に出現した、とっさに腕をクロスしてガード。
 衝撃が全身を突き抜ける、ぶっ飛ばされてしまう。

 空中で態勢を整えて着地、ダンジョンマスターが蹴りを放っていたのが見えた。
 ガードした腕がしびれる、HP体力Sでも相当のダメージがきた。

 が、これはこれはやりやすい。
 見た目人型でも完全に敵対するモンスターなら倒すまでだ。

 銃を構えて銃弾を連射。
 全ての弾丸を一気に撃った。

 何が聞くかわからない、とりあえず全部撃ったのだが。

「すり抜けただと!?」

 悲鳴じみた声を上げてしまった。
 左右あわせて12発の弾丸がダンジョンマスターの体をすり抜けていき――何もない後ろの壁に打ち込まれた。
 追尾弾までもがまっすぐ壁にめり込んだ。

 ダンジョンマスターが更に飛んできた。
 やはり速い! 今度はジャンプした上から振り下ろされる蹴り。
 腕を上げてガードした、ガードを突き抜けて衝撃が側頭部に貫通した。

 そのまま吹っ飛ばされて、壁に突っ込む。

 12発の通常弾を込めて乱射した。
 相変わらず全弾すり抜けた、何発かは洞窟の壁に当たって跳弾した。

 三度飛びつかれる、速さに少し慣れてきたおれは回避しつつまた乱射。
 銃弾は全部すり抜けてまた跳弾した、おれは前蹴りをもらった。

 何とか着地するが、膝をついてしまった。
 蹴られた腹を押さえる、腹の中からリバースしそうななにかを強引に胃の中に呑み込む。

 つよい、それにやっかいだ。
 どうにか攻撃出来る方法はないか。
 そう思っていたら、ダンジョンマスターの足から血が出ている事に気づいた。

 おれを蹴った足から血が出ている。
 ダンジョンマスターは足を上げて、見てる方が痛くなるくらい、指で血が出ているところをほじくった。
 足の中から一発の弾丸がほじくり出された。
 おれを蹴った足に当たったのか。

 しかもあの弾はさっき撃った――。

 ダンジョンマスターの姿がまた揺れた。
 四回目の光景、目が慣れてきた。
 すっ飛んでくる蹴りにあわせてカウンターで銃弾を放つ。

 一発きりをカウンター。通常弾が足の甲に当たって貫通した。

 勢いが衰えない蹴りを受けとめて、その勢いで距離をとる。
 やっぱりそうか。

 普段は実体ないけど、攻撃する瞬間だけ――。

 真横から衝撃がきた。
 何がおこったのかも分からず吹っ飛ばされて壁に突っ込む。

 頭がぐわんぐわんと揺れる、眼がチカチカする。
 知覚する以上のスピードで攻撃されたと遅まきに理解する。

「またスピードが上がるのか」

 膝を押さえながら立ち上がり、銃弾を十二発込めて連射。
 全部ダンジョンマスターの足元を狙った。
 それらは全部すり抜けて地面にめり込んだ。

 更に十二発込めて連射、やっぱり地面にめり込んだ。

「(ニヤリ)」

 それまで無表情だったダンジョンマスターが口の端を片方持ち上げた。
 あざ笑う顔だ。そんなの無駄無駄……と言われた気がした。

 そして次の瞬間ダンジョンマスターの姿が更に揺れた。
 知覚不能な速さがさらに来る。

 おれは動()なかった。
 淡い閃光と共に、二十四の流星が後を追う!

「――――」

 聞いた事もないような悲鳴と共に光がとまった。
 つんのめったかの用に前向きで地面にたおれるダンジョンマスター。
 その右足と、両腕が蜂の巣でボロボロになっていた。

 ダンジョンマスターは自分の手足を信じられない顔で見た。

「足だけじゃなくて手も使ってたのか」

 キッ、と睨まれた。何をした、って問われた気がした。

「最初に当たってほじくり出されたヤツ、あれ跳弾だと思ったけど……違ったな。お前がほじくり出したのは通常弾じゃない、追尾弾だ」

 説明するおれに、ダンジョンマスターは理解不能な顔をする。

「お前の攻撃、実体化した瞬間に反応して最初にうった二発の追尾弾だ。そいつが実体化した瞬間壁から飛び出して自動的に追尾した。それに気づいて、おれは残ったありったけの追尾弾をお前の足元に打ち込んだ」
「――っ!」

 ダンジョンマスターがパッと振り向き、自分が立っていたところを見た。
 銃弾が撃ち込まれたそこは、角度を変えて銃弾が飛び出たから穴が大きくえぐられていた。

「その24発がお前の攻撃に反応したって訳だ。お前は速い、おれよりも速い。でもさすがに銃弾より速くはなかったようだな」

 弾を込めて近づく。
 倒れているダンジョンマスターは大ダメージを負ったからか、体が最初の頃よりもはっきり(、、、、)と見える。

 おれは銃を構えた、込めた通常弾を撃った。
 弾は同時にダンジョンマスターの眉間と胸を貫通(、、)した。

 憎悪の表情を一瞬剥き出しにした後、ダンジョンマスターは消えた。
 ダンジョンの空気が戻った、普段の空気に戻った。

「ふう……」

 ふらつき、その場で尻餅をついた。
 しこたま攻撃をもらってしまった、最後の一発に至っては多分蹴りだけじゃなくて殴られてた。
 その証拠に体のあっちこっちが死ぬほど痛い。

 ぎりぎりの勝利だった。
 速度Sの人間よりも速くて、攻撃する一瞬のみ実体化するやっかいな相手。
 本当にギリギリの勝利だった。

「もう……今日は何もしたくない……」

 そのまま仰向けになって倒れこんで、大の字になって天井を見あげた。
 ダンジョンのドロップが戻ったと、探しにきたエミリーが知らせてくれるまで、おれはしばし体を休めた。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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