609.佐藤さくら
夜、一日の仕事を終えて、仲間のみんながサロンに集まっていた。
いつもの集合、誰かが音頭をとるでもなく、自然とみんなが集まっている。
冒険者組、商人組、精霊組。
最近加わるようになったマーガレットを含め、今日も全員集合して、三々五々とそれぞれ楽しんでいる。
俺はと言えば、さくらと話し合っている。
サトニウム(仮)をもっと形にするために、両方の世界の知識を持つ彼女の力をかりることが多い。
今日も、ガイドキャラのことで色々話し合っていた。
「ソシャゲ的に考えるとさ」
「うん」
「ちょこちょこ『飴』を与えた方がいいよね」
「あめ?」
「美味しい思いをさせるって事。ほら、ログインボーナスとかあるじゃん。ああいうの」
「ふむふむ……ガイドキャラ的な飴、か。着せ替えとかかな」
「あっ、いいかもそれ。連続入場十日ごとに新しい服一着とか。ちなみに服は何種類もあるけど、十日ごとに何をもらえるかは完全ランダム」
「えぐいな」
「これくらいいいじゃん。集めたい人、欲しいのがある人は地道に通ってればいいんだから」
「それもそうか」
あごを摘まんで、さくらの提案を考える。
実際の稼ぎとはまったく関係のない所だが、こういうまったく実益と関係のない見た目というのは結構侮れないものがある。
好みの見た目の方が操作しててテンションがあがる、それに伴って動きがよくなったり強くなったりするのは珍しい話じゃない。
「よし、それを採用しよう。服は……エルザ、いろんな女の人の服を仕入れてくれないか。実物をみて参考にしたい」
「はい、分かりました。すぐに手配しますね」
「ありがとう」
「え? なんでそこあたしに頼まないの?」
「さくらにももちろん頼むさ。さくらには向こうの服を頼む」
「向こうの?」
「いかにも向こうなキャラだから、順当に似合う服と、ギャップがあってこれはこれでいいって服。どっちも用意したい」
「なるほどね。わかった」
さくらは納得して、了承してくれた。
ひとまず、これでガイドキャラに関する打ち合わせは終わった。
同時に、若干延長戦気味だった今日の仕事も完全に終了だ。
俺は一息つこうと、エミリーが入れてくれたお茶に口をつけた。
「そういえば、精霊付きってあるよね」
事件は――さくらのこの一言から始まった。
「うん? ああ、あるけど、それがどうかしたのか?」
「精霊付きになったら、精霊というか、ダンジョンの名前を名字に名乗るんだよね?」
「なんかそういうことになってるな」
今までのことを思い出す。
精霊付きになった冒険者達のことを。
最初はたしか……エミリーかな?
その後はレベッカ・ネオン。
ネプチューン達のH2Oトリオはある意味面白かった。
「おじさんのだとどうなるの?」
「俺の?」
「例えば、あたしがおじさんの精霊付きになったとして」
「うん」
「佐藤さくらになるってこと?」
「佐藤さくらって……」
「あはは、結婚したみたいだね」
ガタッ!
さくらがいうと、複数の仲間達が一斉に反応した。
エミリー……セレスト……エルザ……マーガレット……。
この四人ほど激しいわけではないが、アリス、イヴ、イーナらも反応した。
全員が一斉に、「その手があったか」的な顔をしている。
「えっと……いやあの……」
俺は迷った。
どうごまかすべきか、と迷った。
しかし、さくらが楽しそうに笑って、更にぶっ込んでーー話をはっきりさせた。
「あはは、おじさんモテモテだ」
さくらは思いっきり楽しげにーー事態を楽しむような笑い方をしたのだった。




