607.SD社長秘書
サト二ウム(仮)の中、俺は一人で「モンスター作り」に専念していた。
色々試してはみたけど、やっぱり「会社の中にいてもおかしくない」見た目のモンスターならすんなりと作れる。
それ以外のだと、現実世界にいそうな見た目だとギリギリ何とか作れる。
例えば制服を着た小中高生とか。
だけどそういうのを作ると、微妙に何かがおかしくなってしまう。
いわゆる「不気味の谷」のあれにひっかかったような、なんとも不気味な外見になってしまうのだ。
何度やってもそれは変わらないから、俺は諦めて、会社にいる人達を作る事にした。
ちなみに、こっちの世界にいそうなのは作れなかった。
例えば鎧を着た戦士とか、ローブを纏った魔法使いとか、さくらが大好きな「くっ殺」な姫騎士とか。
そういうのは、違和感以前にまったく作れない。
なんというか、そろそろ「サトニウム(仮)」から(仮)を獲ってしまってもいいんじゃないか、って思えてくる。
そうしないのは、本当に稼働するまで慎重に行こう、という気持ちが働いているから。
「さて、次はどうするか……」
俺はダンジョンの中を歩きながら、いろいろ考えてみた。
まったくなにもない所で想像するより、歩き回りながら「トイレか、掃除のおばちゃんいたな」「給湯室だとステレオタイプだけどOL達がくっちゃべってそうだな」って感じで、あっちこっち見て回って連想した方が作りやすい。
そうして、お偉いさんがいそうな所にやってきた。
俺が新入社員だった頃、お偉いさんのエリアに度々こっそり来ては、トイレを使っていた。
あの頃、ウォシュレットがお偉いさんのいる階のトイレにしかなかったんだよな。
その時の記憶が、このお偉いさんのいる階を作った。
「お偉いさんはもちろん、秘書もいるよな」
そうつぶやきながら、イメージして、秘書のモンスターを出した。
タイトなスーツを纏って、ひっつめ髪にメガネと、いかにもキツくて、有能なタイプの社長秘書だ。
「うん、これははずせないな」
俺は自分が作り出したモンスターのできに満足した。
学生をつくるのとは違って、この社長秘書はものすごくリアルだった。
「こういう秘書にいろいろ管理されるのってどういう気持ちなんだろう」
されたことがないから、それはまったく想像がつかない。
なんかイメージだと、普段はむしろ秘書の方に主導権がありそうな気がする。
……まあ、そういうイメージだから、こういう見た目キツくて有能そうな社長秘書になってしまったんだろうけど。
考えても出なさそうな疑問は捨てといて、この社長秘書は絶対に配置しよう――と思ったその時。
「リョータ!」
「ん? アリスか、どうしたんだ?」
いきなり名前を呼ばれて、振り向くとエレベータじゃなくて階段の方からアリスがやってきた。
彼女はいつも通り数々の仲間モンスターを肩に乗せながら、興奮気味の顔でこっちにやってきた。
「呼ばれた」
「呼ばれた?」
「うん!」
アリスは深く頷き、社長秘書の方に目を向けた。
「おー、なんかかっこいい!」
「かっこいいか・・・。綺麗とかじゃないんだな」
俺はちょっとだけ苦笑いした。
俺からすれば綺麗もかっこいいも大体半々くらいなかんじだが、かっこいいをより強く感じるっていう気持ちもわかる。
「ホネホネ、いけ!」
アリスの号令とともに、肩からSDサイズのスケルトン――ホネホネが飛び降りて、元のサイズに戻った。
元のサイズに戻っても、デフォルメされた可愛い姿だった。
そのホネホネが――社長秘書に飛びかかった。
まったく動かない社長秘書を一方的に攻撃を加えて、そのまま倒してしまった。
すると――ポンッ!
音を立てて、社長秘書の姿が変わった。
「おおっ」
なんとホネホネ――いや仲間モンスター達と同じような、デフォルメされたSDサイズになった。
「おいで、キリキリ」
デフォルメされた社長秘書は、アリスにトコトコと向かって行き、その肩に乗っかった。
「ありがとうねリョータ」
「どういたしまして――はいいけど、こうなるんだ。ってか俺――精霊の意志とはまったく関係がないんだな」
アリスがモンスターを仲間にする所を、今までと違う立場から見たのは結構新鮮なものだった。




