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【アニメ放送中】レベル1だけどユニークスキルで最強です  作者: 三木なずな
カーボン編

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604/611

604.縁の下の

 夕方のバナジウム、屋敷のサロン。

 帰宅したさくらが転送部屋から一直線にここにやってきた。


 部屋の中にはエミリーがいて、サロンの掃除をしていた。


「ただいまエミリー」

「お帰りなのです」


 エミリーは掃除の手を止めて、体ごとさくらに向き直る。


「お茶とか入れるです」

「あー、いいよいいよ。あたしにかまわないでエミリーさんはしたいことをしてて」

「そうなのです?」

「うん。それよりもおじさんはもう戻ってる?」


 さくらはサロンの中をくるっと見回した。


 リョータファミリーには一つの特徴がある。

 それは、就寝と外出時をのぞけば、ほとんどの者はこのサロンに集まってくるという特徴だ。


 エミリーが維持・管理している屋敷はどこもかしこも明るくて温かい空間になっているが、この皆が集まるためのサロンはその中でも群を抜いている。


 そのため、朝起きれば、夕方帰宅すれば――と、皆自然とここに集まってくる。


 それは亮太も例外ではなく、むしろ彼こそ率先してここにやってくるとさえ言える。

 その亮太が、まだ戻ってきていないようだと、サロンを見回したさくらは思った。


「ヨーダさんはお仕事なのです」

「お仕事?」

「はい、ダンジョンを作ってるです。たぶん――」


 エミリーはそう言って、ちょっとだけ複雑そうな笑みをこぼした。


「――今日は戻らないと思うです」

「またあ?」


 エミリーとは対照的に、さくらははっきりとした、あきれ顔を作ってしまう。


「はいです」

「まったく、あの人はいっつもいっつも……」


 あきれ顔のさくら。

 亮太のワーカホリックっぷりは、もっとも新参者であるさくらでさえよく知っている。

 仕事に関係する計算を、一ヶ月31日計算がデフォルトな亮太。

 さくらが転移してきてからも、既に何回も「無理」をしているのを見てきている。


 呆れるのも宜なるかなと言うものだ。


「あたしが連れ帰ってこよっか」

「うーん、今日はそのままの方がイイかなって思うです」

「いいの?」

「はいです。ヨーダさん、すごく楽しそうだったです」

「楽しそう」

「今までの頑張ってるヨーダさん、どこか追い詰められて必死だったです」

「だったね」

「今回はそうじゃなくてちょっと楽しそうに見えたです。だから、そのままの方がイイと思うです」

「ふーん。エミリーさんがそういうんならそれでいいけど」


 連れて帰るという選択肢が消滅したさくらは、そのままソファーの自分の席にどかっと座り込んだ。


「おじさんがダンジョンで何をやってるのか知ってる?」

「ガイドムービー、を、作るって言ってたです」

「ガイドムービー?」

「弱くても攻略できる方法を教えるためだって言ってたです」

「なるほどあれか……」


 さくらは納得した感じで一度は頷いたが。


「あっ、それだめだ」

「はいです?」

「おじさんがやるとたぶんTASレベルのヤツにしちゃうと思う。RTA、しかも安定チャートにしとかないとっていわなきゃ」

「はあ……」


 別の世界、しかもその世界の中でも更にディープなジャンルの話を、エミリーが理解できるはずもなかった。


 それを察したさくらは。


「つまり、おじさんができることじゃなくて、マーガレットさんでもできるようなものにしないとダメってこと」

「なるほどなのです」

「って、むしろそれだよ。ガイドムービーやるのも、おじさんじゃなくてマーガレットさんのほうがいいじゃん」

「それはヨーダさんでいいとおもうです」

「へ?」

「ヨーダさん、格好良くて素敵なのです」

「……まあ、そうかもね」


 思いがけずのろけられた形になったさくらはそのまま肯定することにした。


「でも、おじさんは強すぎるから、やっぱりマーガレットさんにしたほうがいいよ。あれは弱い人じゃないと。おじさんはもう能力もそうだけど経験もトップレベルだから、強すぎてふさわしくないよ」

「なるほど、それはそうなのです」


 亮太を持ち上げるという話にエミリーはあっさりとのっかった。


「というわけで……エミリーさんはおじさんを連れて帰ってきてよ。やるのはマーガレットさんが適任だって言ってさ」

「そうですね。分かったです」


 エミリーは掃除の手を止めて、スタスタとサロンの外に出た。

 入り口のあたりで一度足を止めた、背中越しにさくらにむかって。


「ありがとうなのです」


 といってから、廊下に出て転送部屋に向かった。


「まったく、気を抜くとすぐに仕事に没頭するんだから」


 呆れたような語気で愚痴るさくらだが。

 だれも見ていないその表情は、まんざらでもない、そういうものだった。

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