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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第一章

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06.うさぎとニンジンと力の種

「えっと……そもそもなにしに来たんだ?」
「これ」

 バニーガールはニンジンを取り出して、おれに突きつけた。

「ニンジン? なんだこれは」
「ヨーダさんのニンジンですね」

 後ろからエミリーが言ってきた。
 おれのニンジン?
 突きつけられたニンジンを改めてみた。
 言われてみればおれがエルザの店で買い取ってもらった、テルル地下二階でドロップしたニンジンのようにも見える。
 みえるけど、確証はない。エミリーに念押しで確認する。

「そうなのか?」
「香りと色がそれなのです。ヨーダさんのニンジンなのです」
「ヨーダニンジン」

 ぼそりとつぶやくバニーガール。

「なんかそういう品種っぽい言い方だな」
「そういうこともあるですよ」
「そういうことって?」
「特定のモンスターをずっと狩ってる職人さんも世の中にいるです。他の人があまり生産しないものばかりドロップさせる人は物に自分の名前がついたりする事があるです」

 ああ、それはわかる。
 生産者の名前がついたものはよくあるからな。

 それはわかるけど――おれはバニーガールをみた。
 おれがダンジョンから持ち帰ったニンジンだとして、それがなんだっていうんだろう?

「ニンジンだいしゅき」
「だいしゅき?」
「うさぎ、ニンジンだいしゅき」

 こくこく頷かれて、真顔で見つめられた。
 そして今更ながら気づく。

 バニーガールの頭から生えているように見えてるうさぎの耳は、本物のうさぎの耳だということに。
『ニンジンだいしゅき』っていった時にぴょこぴょこ動いたのだ。
 その時目がオモチャをゲットした子供の様にわくわくしてた、それと連動してうさぎの耳がうごいた。

 バニーガールの格好をした少女は本物のうさぎだった……。
 この世界はまだまだ奥が深そうだ。

     ☆

 家の中、イヴって名乗ったバニーガールがエミリーの横に立って、料理するのをじっと見つめている。

「こうして、まずはニンジンの皮をむくです。剥いた後スライスして、細く切るです」
「麺……?」
「はいです。これでニンジンの麺になったのです。これを10秒間ゆでて、しゃきしゃき感を残す程度に火を通しておくです」
「おー……」
「今度はニンジンの葉を刻んで、お肉と一緒にちょっと炒めて、味を調えて片栗粉でとろみをつけるのです」
「あんかけ……?」
「最後にさっきのニンジン麺と絡めれば――はい! 三色あんかけニンジンそばです」
「ふおおおお!」

 バニーガールは目をきらきらさせた。
 キラキラしすぎて瞳が星の形になったようにみえる程だ。

 気持ちはわかる、エミリーの手際はまるで魔法か手品をみているかのようだ。
 そんな、あっという間に作られた料理を三人で食べた。

 ニンジンの麺、食べるまでちょっと不安だったけど、すすって、一口噛んだ瞬間それが吹き飛んだ。

 身構えてたニンジン臭みはまったくしなくて、ほどよい甘みだけが残ってる。
 火が通ってるのにしゃきしゃき感が残って、バリカタの細麺を彷彿とさせる食感だ。
 あんかけもニンジンの葉を使っているおかげか麺とすごくマッチしてて、優しい味が舌から全身に広がっていく。

 幸せ。
 おいしさと共に、予想外の幸せが全身を包んだ。

「美味しいなこれ!」
「お口にあってよかったのです」
「口に合うとかそういうレベルじゃないよ、これは美味しい、すごく美味しいよ! お店でだせる味だぞこれ」
「一杯980ピロ」
「リアルな値段設定! いやそれ以上の味だこれ」

 おれとイヴは絶賛しつつ、ものすごい勢いで料理を平らげた。
 二人して美味しいと褒めちぎったせいか、エミリーはものすごく照れて、食が進まなかった。

 そんな彼女の分を、イヴが物欲しげに見つめた。

「じゅるり」
「あっ、これも食べるです?」
「食べりゅ」

 エミリーは彼女に自分の分を与えた。
 イヴはものすごく幸せな顔でがつがつ食べた。

「いいのか?」
「はいです! 美味しく食べてもらえるから嬉しいです」
「そうか」

 美味しそうに食べるイヴを見た。
 ダンジョンでの出会い、そしていきなりの来訪。
 変な子だって思ってたけど、なんだか可愛らしく見えてきた。

 おれの視線に気づいて、イヴは顔を赤くした。

「低レベル、きらい」
「思い出したようにチョップしなくていいから」

 いうと、イヴは不満そうな顔をしつつも、エミリーの料理を綺麗に平らげて、最後はきちんと手を合わせて「ごちそうさま」といったのだった。

     ☆

 次の日、この日はニホニウムにやってきた。
 地下一階はHPがSになったからもう卒業、期待を胸に、地下二階に向かった。

 しばらく歩いてると、モンスターと遭遇した。
 地下二階のモンスターはゾンビだった。

 スケルトンと同じようなボロボロの服を着てて、体のあっちこっちが腐ってるいかにもなゾンビだ。

「情報通りゾンビか」

 ニホニウムのダンジョンは既に他の人間によって調査済みで、情報が共有されていた。
 冒険者という名の生産者がもっとも気になるドロップ内容とともに、モンスターの名前と特徴も共有され、公開されている。
 その情報通りに死体のモンスター、ゾンビが現われた。

 現われた……のはいいが。

「じー」

 なんかものすごくみられている。
 物陰からものすごく見つめられている。

 振り向く、隠れているが、耳がはみ出している。
 うさぎの耳がぴょこぴょこしてる。イヴだ。

「なあ、そこで何をしてる」
「……」

 返事はない、でもうさぎの耳は見えてるまま。
 本気で隠れてるつもりなのか、判断がむずかしいところだ。

 そんな事を思ってたらゾンビが襲ってきた。
 うーあー……ってうめきつつ、腐ってる腕を振り下ろしてきた。

 気がそれていた分躱すのが間に合わなかった。
 持ってる竹のヤリで受ける。

 バキッ、メキメキっ!

 エミリーからもらった竹のヤリが真っ二つに折れた。

「やべ、武器が――」
「えい」

 どうしようかと思った次の瞬間、目の前にイヴが現われた。
 さっきまで真後ろの離れた場所に隠れてたのに、一瞬でおれの前に現われた。
 おれとゾンビの間に割って入るイヴは、ゾンビに向かって手刀を振り下ろした。

 ゾンビは粉々になった。

「なんでチョップで粉々になるんだよ! しかも骨でもないのに!」

 思わず突っ込んでしまった。
 垂直に一回だけ振り下ろされたイヴのチョップ、真っ二つとかばらばらじゃなくて、ゾンビは粉々になった。

「何をやったんだ今の」
「一秒で百回チョップした」
「みじん切りじゃないか!」

「ニンジンの人にもしてる」
「あれ百回も叩かれてたの!?」
「正確には101回」
「細かい!最後の一回なんだよ!」

 盛大に突っ込むおれを、イヴは真顔で見つめてきた。

「そんなことより、ここにいちゃダメ」
「え? な、なんで……」
「ここ、ニンジンドロップしない」
「それかよ!」

 一瞬なにかまずい事が、ニホニウム地下二階に関しておれが知らない情報があるのかとおもったけど、そういう事じゃなかったみたいだ。
 イヴはあくまでニンジンの事を考えていた。

「ここじゃなくてテルルの地下二階に戻れって意味かよ」
「ニンジンの人はニンジンに帰る」
「言い方がおかしい」
「うさぎ、ニンジン食べたい」
「普通に店で買えばいいだろ」
「あなたのニンジン食べたい」

 潤んだ目で、上目遣いで訴えられた。
 うっ、ってなった。
 その仕草が可愛らしいのと、「あなたのニンジン食べたい」で邪な想像をしてしまった自分に。
 二重の意味で「うっ」ってなった。

 両方悟られたくない、特に後者はやばい。
 ごまかさなきゃ。

「わ、わかった。後で行くから」
「あとで?」
「あとで」
「……わかった」

 イヴは渋々納得したって様子で、きびすを返して去っていった。
 かと思えば立ち止まり、おれのところに戻ってきた。

「どうした、まだなにか――いて」

 ちょっぷをされた、おでこにあたった。

「低レベル、きらい」
「わざわざやりに戻らなくていいよ!」
「本当きらい」
「そんなにきらいなのかよ!」

 ちょっぷしてちょっとは溜飲がさがったのか、イヴは今度こそ立ち去った。
 おれは折れた竹のヤリを見つめた。

 武器はなくなったけど、なんとかゾンビ一体を倒してから帰ろう。
 HPはSなんだから、なんとかなるだろう。

 地下一階のスケルトンはHPが上がる種をドロップした、ここのゾンビはどうなのか、それが知りたい。

 ダンジョンを歩いて回った。
 一分くらいで、またゾンビと出会った

 気を引き締めて、ゾンビに立ち向かった。
 素手でそいつと殴り合った。
 何回か殴られたけど、意外と痛くなくて、大丈夫だと判断して、避けずに殴り合った。
 武器……ほしいなあ。殴り合いは危険が伴うから遠距離戦闘の武器がほしいな。
 おれ、ゲームとかでもガンナーとか魔法使いとか、そういうのばっかり使ってたんだ。

 そんな事を考えながら戦った。
 何発かいいのを入れると、ゾンビ倒れて、消えて――種がドロップした。
 上の階のゾンビと同じ形で、色だけ違う種。
 それを拾い上げると。

 ーー力が1あがりました。

 っていう謎の声が聞こえて。

「ふおおおおお!?」

 うさぎの声も聞こえた。
 帰ってなかったのかまだ。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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