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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第二章

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57.自家発電のための土下座

 ニホニウム地下四階。
 今日も朝からマミーを狩り続けた。

 流れ作業でマミーを倒して、残った包帯を回復弾で浄化。
 ドロップした種で体力を上げる。
 このダンジョンもだいぶ慣れて、ものすごく順調に狩り続けていった結果、昼前にはもう体力がCからBに上がった。

 あとは集荷箱を使って特殊弾を補充するか――と思ったその時。
 背筋が一瞬で凍りついた、ものすごい悪寒がおれを襲う。

「この殺気――ダンジョンマスターか!」

 しまいかけた銃をサッと抜いて殺気の方に向ける。

 ……そこに猛獣がいた。
 バニースーツをまとった、自前のウサミミをもつ小柄な猛獣だ。
 彼女はいつの間にかおれの真横に立っていて、腕をガジガジかじっていた。

「……あの、何をしてるんですかイヴさん」
「ニンジンオアアライブ」
「相変わらず物騒な事を」
「ニンジンオアアライブ」
「うっ」

 ガジガジしながらまた殺気を出してきた。
 食べものの恨みはヤバイ。おれはイヴに逆らわないようにした。

     ☆

 テルルダンジョン地下二階、眠りスライムを倒して大量にドロップさせたニンジンをイヴに渡した。
 魔法カートがないから目算だけど、ざっと10万ピロ分はある。
 そんな山ほどのニンジンを、イヴは齧歯類の小動物の如くかじっていた。

 さっきまでの殺気はどこへやら、とばかりにほくほく顔だ。

「すまないな、しばらくシクロを離れてたんだ」
「クリントから聞いてる」
「クリント……ああダンジョン長の名前か。うん、その人の依頼で行ってたんだ。ニンジン生産出来なくてごめんな」
「気にしない、ニンジンさえあれば」

 イヴはニンジンをガジガジかじる。
 その姿は妙に愛らしくて、思わず見入ってしまった。

 おれが見入ってることに気づいたイヴはニンジンの山を背中に隠した。大量にあるのでちっとも隠せてないが。

「ニンジンあげないよ」
「とらないからお食べ」

 何となく口調と気持ちが優しくなってしまうおれだった。
 イヴが再びニンジンをかじりはじめたのをみて、おれはある事を思い出した。

「そういえばイヴって仲間がいるんだよな。おれも最近仲間が出来て亮太一家ってのを結成したんだぜ」
「彼らとは別れた」
「わかれた!? なんで!」
「ダンジョン性の不一致」
「バンドかあんたらは!」

 思いっきり突っ込んだが、イヴはいたって真顔で答えた。

「良くある事、冒険したい人とか、安定をとりたい人とか。同じ階層をずっと潜りたいとか、色々潜りたいとか。同じ街にいたい人とか、違う街で色々な洞窟を巡りたいとか」
「あー……なるほど。そう考えるとダンジョン性の不一致は普通にありそうだ」
「うん、ある」
「イヴたちのはどういう不一致だったんだ?」
「あたらしい女が仲間になって、男達がみんな彼女についていった」
「それむしろ姫かサークルクラッシャー的な話だよな!」

 またまた盛大に突っ込んだ。
 詳しくは聞かない、こっちは聞かなくても想像つくし生々しいから聞きたくない。

 そうこうしてるうちにイヴは山ほどのニンジンを平らげた。
 あきらかに自分の体の体積以上はあるニンジンを全て平らげてしまった。

「全部食べたのか……」
「こういうの残すと思った?」

 イヴは最後の一本のニンジンに残った、ヘタの部分も口の中に入れてかみ砕いて呑み込んだ。

「ニンジンは綺麗に食べるもの」
「いやそういう問題じゃないから、量の問題だから」
「ごちそう様、ありがとう」
「どういたしまして」
「……低レベルきらい」

 チョップしてきた。

「思い出した用にせんでも……しかも微妙に前より優しいチョップだし」
「ニンジン&ピースで力が出ない」
「なんか色々混ざってるな……そういえば、イヴはよくおれにニンジンをたかるけど、自分じゃ狩らないのか?」

 イヴは答えず、すぐそばにあるナウボードを操作した。

―――2/2―――
植物 D
動物 A
鉱物 E
魔法 C
特質 C
―――――――――

「植物ドロップDから自分で狩っても美味しくない」
「その前になんでそのステータスでシクロにいるんだよ!」
「そこにニンジンがあるから」
「迷言だよそれは!」

「これのせいでついたあだ名が『肉食うさぎ』」
「動物Aだもんな!」

 本当なんでシクロにいるんだよ。
 ……それだけにんじんが好きなんだな。

 ナウボードを眺める、あることに気づいた。

「イヴ、これを飲んでみて」

 赤いポーションを取り出して彼女に渡す。

「キャロットジュース?」
「ニンジンから離れて! いや離れなくていいけど」
「どっち?」
「飲めば分かるから」

 イヴはおれをじっと見つめた後、薬を飲んだ。

「ふぇ?」
「聞こえたか」
「どういう事?」
「もう一回ナウボード操作してみるといいよ」

 イヴは驚いた表情のまま頷き、ナウボードを操作した。

―――2/2―――
植物 A(+3)
動物 A
鉱物 E
魔法 C
特質 C
―――――――――

「A……植物ドロップがAに……」
「それで――」
「『草食うさぎ』になれる」
「元々草食だろ! それよりもスライム倒してみろよ」
「うん」

 イヴは頷き、スライムを探しに歩き出した。
 すぐにニンジンをドロップする眠りスライムとエンカウントした。

「ふっ!」
「だから手刀でモンスター粉々にするなって」

 苦笑いするおれ、相変わらずイヴの手刀はとんでもないな。
 一方で倒された眠りスライムからニンジンがドロップされた。

 イヴはそれを拾って、かじった。

「美味しい……このまったりとしながらもしつこくなく、ほどよい甘さですっきりとした後味」
「グルメかよ!」
「これは――ニンジン!」
「いやニンジンだろ」
「ドロップDのニンジンはニンジンに非ず」

 イヴはそう言い切った。
 確かドロップのステータスは量だけじゃなくて質にも差が出るんだっけな。

 イヴは更にもう一匹眠りスライムを手刀で粉々にして、ニンジンにした。
 それをかじって、至福の顔をした。

「美味しい……」
「それはよかった」
「自分で狩って自分で食べる……自家発電」
「自産自消っていいなよ!」

 イヴは自分のニンジンを平らげた後、近くのナウボードを操作して、ドロップステータスの画面をだした。
 +3ランクでAになったそれを、何故かおれと交互に見つめて。
 やがて、流れる様な動きで土下座した。

「仲間に入れて」
「いや土下座するほど?」
「足りなかったら体で払う」
「脱がなくていいから! バニースーツの上をペロンとやるのはエロすぎるから」
「そ、それでも足りなかったら耳で払う」
「なんでそこは顔を赤らめるの!? 脱ぐ以上に恥ずかしいこと!?」

「お願いします仲間に入れてください仲間に入れてくれたらあなたの為になんでもするから」

 イヴはものすごいマシンガントークでせがんできた。
 仲間に入れて、その目的が赤いポーション――というかニンジンなのははっきりしているがここまでだといっそすがすがしかった。

「わかった、仲間に――」
「低レベル大好き!」

 イヴはパッと飛び上がって、おれに抱きついて、好き好き大好き、と繰り返した。
 仲間と言うより、文字通りうさぎを餌付けした、そんな気分でちょっとだけ苦笑いしたのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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