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557.あたしも欲しい

「じゃあもうすぐ会えるのかな」


 夕方の屋敷、サロンの中。

 一番最初に帰宅してきたさくらに、ニホニウムで起きた出来事を話した。


「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。最初のニホニウムと色々かわってるからな」

「大丈夫大丈夫、いけるいける」


 さくらは陽気に、気軽にそういって、俺の背中を叩いた。


「おじさんならいけるって」

「そうかな」

「おじさんはチーレムおじさんだからね」

「うん、チーレムおじさんはやめて」


 俺は微苦笑しつつそういった。


 チーレムとおじさん。

 その二つをくっつけられるのは複雑な気分にならざるを得ない。


「それで、アリスちゃんのと同じ能力になったんだよね」

「ああ、そうだと思う――おっ」

「どうしたの?」

「ミーケが帰ってきた。なるほど、精霊はわからないのか」


 脳内のミニレーダーに、転送部屋から現われたモンスターの存在をとらえた。

 転送部屋を平気で使えるモンスターは、このファミリーではミニ賢者のユニークモンスター、ミーケただ一人だ。


「ミーケだけかもね――」

「ただいま戻りました」

「たっだいまー」


 さくらの言葉を遮るかのようなタイミングで、ミーケとアウルムがサロンに入ってきた。

 いつものように、ユニークモンスター化して得た特殊能力で、アウルムの送迎をしたミーケ。


「あはは、ごめんしておじさん」

「いいさ、むしろありがとう」

「え?」


 きょとん、と小首を傾げるさくら。


「その指摘はありがたいよ。思い込みだけで判断するところだった。ありがとう」

「……そか」


 さくらはちょっとはにかんで、まんざらでもなさそうな表情をした。


 彼女のこの指摘はありがたかった――特に今は。


 状況的に判断して、モンスターが転送部屋からでてきたってとらえた段階で、それがミーケという判断で、他になにもないということは精霊の存在はつかめないという判断が普通だった。


 このタイミングで転送部屋から現われるモンスターはミーケのみで、ミーケがこの時間帯で精霊の送迎をしないであそこから現われることもほとんどない。


 だが、絶対という訳でもない。

 それをさくらが指摘してくれた。


 そして、残りのニホニウムの攻略には、こういう考え方が必要だ。

 前と共通しているところもあるニホニウム。

 だがまったく一緒ではない。


 「これが当たり前」だと思い込むのを、結果的に諫めてくれた形のさくら。


「本当にありがとう」

「どーいたしまして」

「何々? なにかあったの?」


 アウルムが楽しそうに話しに合流してきた。

 俺はニホニウムで起きたこと、アリスとほぼ同等の能力を身につけた事をアウルムに話した。


「ふむふむ、じゃあもうすぐだね」

「そうかもな」

「その次はあたしね」

「へ?」


 いきなりなんだ? と、俺はびっくりしてアウルムを見た。


「だって、今回の事で、リョータは新しい力を身につけたじゃん?」

「そうだな」

「あたしも、そういうのやりたいんだよ」

「そういうのって、ニホニウムみたいな?」

「そうそう。だってリョータ、あたしの力をつかってくれないんだもん。さみしーのよ?」

「いや、それは……」


 確かにここ最近はアウルムの力をまったく使っていない。

 というより、仲間のようになっている精霊のなかでも、彼女の力を一番使ってない。


 バナジウムはいうに及ばず、このダンジョンを使わせてもらってる。

 フォスフォラス達は姿を変えて、アリスと一緒に戦っている。


 ニホニウムにしたって、前は俺の能力や特殊弾。

 今は草薙の剣と八咫鏡のおかげで能力がふえた。


 それにくらべると、アウルムは何もしてない。

 最初はドロップついでに砂金を出してもらってたけど、それも今はやってない。


「あたしも、リョータに何かしてあげたいの。ねっ、いいよね」

「えっと、ダンジョンをかえる……ってことか? アウルムも」

「うん!」

「それは……まあ、いいけど」

「やた」

「ただし」

「ただし?」

「いきなりはダメ。アウルムは今いろんな人の生活を支えてるから。ちゃんと俺が根回しをしてから」

「オッケー」


 まるで安請け合いをするかのようでちょっと不安だが――。


「ふふふーん♪」


 アウルムが楽しそうにしてるのを見て、まいっか、って思うんだった。


 こうして、次のダンジョン攻略の予約が入ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] こうしてアウルムは金の代わりに真鍮を生産するようになりました
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