表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
552/611

552.地下十階へ

 雪女が消えた後、いつものようにフルーツがドロップされた。


「これは……なんだ?」


 落ちているそれを拾い上げて、マジマジと観察する。

 ギザギザの葉っぱと、松ぼっくりみたいな果実の部分。


 見た事のない果物だった。


 ニホニウムがリニューアルされてから、見た事の無い果物が次から次へとでてきている。

 四階のミラクルフルーツを始めとする、あまりなじみのない果物ばかりだ。

 知ってるものもあれば、さくらに聞いて判明するものもある。


 俺が知らない――つまり日本にはあまりない果物のためか、名前が「○○フルーツ」ってパターンが結構ある。


「異世界だし、ドラゴンフルーツでもでてくるのかな」


 なんとなくそんな事をつぶやいてみた。

 ドラゴンフルーツっていうのは、れっきとして元の世界にも存在している果物だ。

 漢字で書くと「火龍果」ってなって、更に格好良くなるそれは、サボテンの一種の果実だ。


 もっとも、この異世界で「ドラゴンフルーツ」って言う名前が出てきたら、それは違う何かになるって気がしなくもない。

 こう……食べたら火をふけるようになるとか、そういうの。


 そんな他愛もないことを考えながら、ドロップした果物を吟味する。

 ギザギザの葉は完全に食用に適さない感じだ。

 葉と松ぼっくりの部分が、大根とその葉の感じと似てるから、もしかして地中に成るものなのかなって思った。

 まつぼっくりっぽい部分はものすごく硬くて、とげとげしくて防御力が高そうだから、そんな感じがした。

 この場合、松ぼっくりっぽい外側をむいて、中に果実が入ってるんだろうと簡単に予想がついた。


 俺はそれを縦に真っ二つに割った。

 硬くてとげとげしい果実だが、力SSの前では無力。

 簡単に二つに割ることが出来た。


 途端、果実の香りが漂い出す。

 甘酸っぱい感じの、見た目からは想像出来ない美味しそうな香りだ。


「って、パイナップルじゃんこれ!」


 断面の黄色い果肉にそっと触れて、果汁を口に運ぶ。

 やっぱりパイナップルだった。


 パイナップル自体、そんなに縁がないわけではない。

 ピザではカットしたものを見かけるし、ジュースとか居酒屋のサワーなどでパインなんとかが出てくる事は結構ある。


 ちなみに酢豚に入れるのは何があろうと許せない派だ。


「へえ……パイナップルってこうなんだ……」


 松ぼっくりのような外見なのはまったく知らなかった。

 でもまあ、なんとなく納得ってきもする。


 そして、このパイナップルも――。


「うん、甘酸っぱい」


 これまでの例に漏れず、すっぱい果実だった。


 リニューアルした新・ニホニウムは、これまでミラクルフルーツという例外を除いて、ほとんどすっぱさが特徴の果物がドロップされている。

 このパイナップルもそうだ。


「もしかして……ドロップステータス次第で酸っぱさが変わるのかな」


 なんとなく、その可能性もあるんじゃないかって思った。

 今度仲間のみんなに協力してもらって、そこも検証していこう。


 俺はそう思い、更に何体かの雪女を倒していった。

 ニホニウムによく似た見た目だが、雪女というモンスターだし、攻撃をしかけてくる相手だから、容赦なく倒す事ができた。


 ドロップしたパイナップルを拾いながら、ダンジョンを進み、階段を見つけて、下に降りる。


 新・ニホニウム、地下九階。

 相変わらずの、脈動する内臓的なダンジョン。


「――っ!」


 変わらない事を理解した次の瞬間、俺は目がカッと見開くほど驚いた。


 俺の能力、まだ発展途上で、アリスの下位互換の能力。

 ダンジョンの構造のみを把握する能力。


 普段使いするには足りないところもあって、色々工夫したりする必要があるのだが、今はそれだけである事が分かった。


 脳内に投影される感じでのダンジョンの構造は、俺が立っているところと、ダンジョンの全体構造と、そして二つの階段がある。


 上から降りてくる階段と、下に降りていく階段。


 下に降りていく階段。

 始めから存在するということは、それは十階に続く階段だろう。


 ニホニウム――十階。


 新・ニホニウムでも、特殊弾は戦闘ステータスと関係していたから、てっきり九階までだと思っていた。


 それに出てきた、十階の可能性は、驚きとともに、興奮を感じさせるものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] パイナップルの外見を知らないのはさすがに無理がある
[気になる点] 生のパイナップルなんてそこらのスーパーで普通に売ってるようなものを見たことないって前世はどこの幼稚園児だったんですかこのおっさんは。 ピザとか居酒屋のサワーはともかくジュースのパッケー…
[気になる点] 生のパイナップル見たことないって、それ魚が切り身で泳いでるレベルじゃないかな。 カットでも売ってるけど、今までの描写からしてリョータが生パイナップル見たことない生活をしている確率とい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ