表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
551/611

551.雪女

 新・ニホニウム、地下八階。


「うおっ寒っ!」


 降りてくるなり、俺は両手で自分を抱きかかえる仕草で、縮こまってしまうハメになった。

 初めてかもしれない、階をおりたらこんなに気温が変わったのは。

 ものすごく寒くなって、息が真っ白だ。


 いきなり真冬の寒さくらいになった。


「地形効果か? それとも……」


 俺はぎゅっと縮こまって、手のひらをこすり合わせながら、ダンジョンを進む。

 防寒の準備無しに、この階にはあまり長居したくない。

 一回でもいいからモンスターとエンカウントして、情報を持ち帰ろうと思った。


 そうしてぐるぐる歩く。


 普段と違って、すぐに撤退出来るように、当てもなく歩くんじゃなく、階段の周りをぐるぐる回っていた。


 そのせいなのかなかなかモンスターと出会えなかった。


「うぅ……もうちょっと遠出(、、)した方がいいのかな。でもそうなると戻るのが大変だし……いや、急がば回れともいうし、いやでも……」


 寒さがどんなモンスターよりも手ごわい敵になってしまったこの状況。

 俺は階段の周りでぐるぐる回って、決断を出来ずにいた。


「あれ?」


 ふと、階段の所に人影を見つけた。


 さっきまでにはなかった人影。


「いつの間に現われたんだ……? って、ニホニウム?」


 そこにいたのはニホニウムだった。

 彼女はいつもの着物じゃなくて、白一色の着物をまとっている。


「どうしたんだその格好。それよりもなんでここに?」


 俺はそう言いながら近づいていく。


 寒さのせいで頭が回っていなかったのかもしれない。


 だから、きづくのが遅かった。


 ニホニウム――ダンジョンの精霊はたしかにダンジョンの主だが、この世界の「理」の元では、自分のダンジョンの中を自由に歩くことも出来ない存在だ。


 それがここにいる――という事にわずかな違和感を覚えた頃には――もう手遅れだった。

 ニホニウムの外見をした女は、ピースサインを自分に向けて口元に添えて、ふうぅ、と何かを吹き出す仕草をした。


 吹きだした白い息はたちまち吹雪のように変化して、俺に襲いかかった。


 とっさに横っ飛びしたが、気づくのが遅れた分完全によけきれなかった。


「くっ!」


 俺の左半身が凍ってしまった!


 とっさに無炎弾を離れたところに打ち出した。

 それをうった場所に自分から突っ込んでいって、見えない炎で凍った体を溶かす。


 体がじりじり焼ける。それなりのダメージを負ってしまう。

 だけどそのおかげで凍った箇所が溶けた。


 自由を取り戻した体で回避する。


 そして、改めて見る。

 ニホニウムと同じ見た目をしたそれは、白い着物を着ていて、髪がふわりと無風なのになびいて、氷の粒子――ダイヤモンドダストがこぼれ落ちる。


「……雪女っ!」


 一瞬で理解した。

 新・ニホニウム、妖怪縛りの新しいダンジョン。

 そこに現われた氷を操る、白い着物の女。


 雪女という妖怪の特徴そのものだった。


 俺は銃口を向けた。

 びくっ、と止ってしまった。


 妖怪・雪女とは言え、見た目はニホニウムそっくりだ。


 このままトリガーを引くのはちょっとだけ気が引ける。


「……」


 だが、俺は引き金を引いた。


 無炎弾がとんでいって、雪女に当たって、相手を燃やした。


 「燃える」と「溶ける」の間くらいの感じで、雪女が消滅していく。


「うーん、みてて気持ちのいいものじゃないな」


 俺は苦笑いした。

 座敷童ほどじゃないけど、攻撃にためらう相手だ。


 差は、攻撃をされたからだけ、って言ってもいいくらいだ。


 八階の雪女も、やっかいなモンスターだ――俺だけには。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 草薙の剣がゴミ性能な件
[一言] 梅ってそのまま食べると食中毒になるんじゃなかった? りょーたは大丈夫なのか? 異世界だからそのあたりはザル設定なのかなぁ?
[一言] ニホニウム「躊躇なく撃たれた」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ