545.自動援護
俺は草薙の剣を拾い上げた。
剣は俺の手の平で、すぅ、と溶けるように消えていった。
「きえちゃったね」
「前と同じだ」
「そうなんだ」
「ちなみに、前は三種の神器をゲットするごとにステータスの上限が解禁されてた」
「どゆこと?」
「えっと……」
さくらが転移してきたのは、俺がオールSSになった後だっけ。
「もともと、ニホニウムでモンスターを倒すと、ステータスが上がる種をドロップしてたんだ」
「それでおじさん強くしてったんだ」
「そう。で、最初は上限が全部Sだったんだけど、三種の神器を一つ手に入れるたびに、ステータスが三つ、上限SSに解禁されたわけだ」
「なるほど……あっ、じゃあ今回も?」
「ああ」
俺は深く頷いた。
「何かがあるかも知れない」
「そっか……いや、絶対あるよ。だって今おじさん、SSでしょ」
「ああ」
まあユキがいればSSSに上がるけど。
「ステータスと善人はSSSが基本だよ」
「言ってる事がよく分からない」
「転生チーレムだよ」
語尾にハートがつくような口調で、ウインクしながら言ってくるさくら。
なるほど、彼女のいつものあれ、異世界ネタって事か。
「試して見ようよ」
「種ドロップはもうないぞ?」
「なくても何かあるはずだよ。一階からやり直そう?」
「そうだな」
俺は深く頷いた。
たしかに、なくてもまずは確かめよう。
これを手に入れて、まったく何もないって事は、今までの経験上考えられない。
俺はさくらと一緒に、階段を上がって、一階に戻るべく引き返した。
まだ通い慣れてないダンジョンだが、能力でダンジョンの構造は分かる。
俺は更に上の三階に戻るべく、最短ルートを進んだ。
俺の能力はまだ、ダンジョンの構造が分かるだけ。
アリスと違って、モンスターの居場所までは分からない。
最短ルートを突き進む俺達は、モンスターに突っ込む形になった。
新・ニホニウム地下四階、がしゃどくろ。
巨大なガイコツが俺達の前に立ち塞がった。
俺とさくらが同時に戦闘態勢に入った――その時。
がしゃどくろの頭上から草薙の剣があらわれて、ズバッ! と斬撃をはなった。
がしゃドクロの右腕が切りおとされた。
「え? いまのおじさんが?」
驚くさくら、こっちを見つめてくる。
「いや、俺は何もしてない」
「じゃあ勝手に?」
「そうかもしれない」
「……ねえ、次のモンスターに行ってみようよ」
「ああ」
俺は頷き、リペティションで目の前のがしゃどくろを倒した。
ミラクルフルーツを拾って、更に進む。
ぐるぐるまわってのエンカウント狙いではなく、相変わらず上の階に引き返す事を目指す。
この場合のテストには、別の階、別のモンスターでためす必要もあるから、少しでも戻るようにした。
次のがしゃどくろと出会った。
再び草薙の剣があらわれて、斬撃を放つ。
一撃を放った後、またすぅ、と消えてしまう。
そのがしゃどくろを更に倒して、上の三階にもどる。
さらに進む、あっという間にカッパとエンカウント。
すると――
「またでたね」
「ああ」
草薙の剣がまたまたあらわれて、カッパに斬撃を見舞った。
一回だけきって、それで消えてしまう。
今までのとまったく同じだ。
「ねえ、別のダンジョンだとどうかな?」
「そうなるよな」
俺達は頷きあって、急いで新・ニホニウムをでた。
転送ゲートを使って、屋敷に戻って、手っ取り早くテルルに転移する。
テルル一階、通い慣れたダンジョン。
そこでしばらくまわっていると――スライムとエンカウントした。
そして――やはり草薙の剣があらわれる。
草薙の剣の一撃で――なんと。
スライムは、真っ二つに切り裂かれて、倒れてしまうのだった。