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536.甘酸っぱい

 セルのところをでて、ニホニウムにやってきた。


 ニホニウムの入り口に四人の武装した門番がいた。

 ちょっと離れたところに、短時間で建てたと思しき小屋がふえていた。


 俺は首をかしげつつ、入り口に近づいていく。


「お疲れ様です!」

「「「お疲れ様です!!」」」


 門番達が俺をみて、ビシッ、と背筋を伸ばして敬礼してきた。


「お、お疲れ様。えっと、あんた達は?」

「ステム閣下の配下の者です。これよりしばらく、サトウ様以外のだれも立ち入らせないようにと仰せつかりました」

「ステム閣下……ああ、セルか」

「はっ」


 セル・ステム。

 閣下っていうから一瞬誰の事かと思った。


「厳重なんだな」

「ニホニウムはただでさえ不安定なダンジョン、それが変化の時を迎えている。サトウ様が安定させるまでは、誰も立ち入らせないようにすべきだ、と仰せになった」

「なるほど、それはそうかもな」


 セルの言うことは一理あった。

 たしかに、他の冒険者達は立ち入らせない方がいいと思う。


 今回のニホニウムの変化は、明らかに俺が主な原因だ。


 ……いや、ピンポイントに俺だけが原因かもしれない。

 他の冒険者が今このタイミングでニホニウムに入るのは変に刺激する恐れがある。


 セルのこの処置がベストだと俺も思った。


     ☆


 ダンジョンに入る前に、一旦家に戻った。

 転送部屋を使って、アルセニックに飛んでエミリーを探した。


 見つけたエミリーに、ニホニウムの現状を説明して、暖かい料理などを差し入れてくれと頼んだ。


 エミリーが快諾したところで、いったん屋敷にもどって、転送部屋で直にニホニウムの一階に飛んだ。


「うっ」


 ちょっとだけ声が洩れてしまった。


 新しいニホニウム、屋敷から直接飛ぶのはちょっとダメージが大きい。


 屋敷はエミリー空間だ。

 エミリーが手入れして、維持しているその空間は、温かくて明るい。

 雰囲気だけじゃなくて、本当に温かくて明るいって感じがする。


 その屋敷から飛んだ先が、内臓チックのダンジョン。


 まるで生きているかのように、脈動している肉壁のダンジョン。


 ただでさえ気持ち悪いところが、落差で気持ち悪さ倍増だ。


 とはいえ、いつまでもこうしてる訳にもいかない。


 俺は気を取り直して歩き出した。


 早速モンスターとエンカウントした。

 一本足のお化け傘、それをサクッと通常弾で撃ち抜いて、青リンゴがドロップするのを確認。


 そして、ダンジョンを進む。


 特殊能力で、頭の中でレーダーのように、ダンジョンの構造を把握している。

 完全に攻略しきっていないダンジョンだが、構造を把握して、最短ルートで次の階に向かう。


 途中で三体ほどお化け傘を倒した。アリスならそれもよけられたのになあ、と思いつつ、地下二階に到着。


 ダンジョンの見た目は同じだった。

 肉の壁、脈動する内臓の中。


 一階と、なんら変わらないダンジョンだ。


 モンスターはさすがに違った。


 ろくろ首。


 体が和服をきた女で、首がめちゃくちゃ長くて、うねうねしている。

 和の妖怪の中でも、かなり有名なモンスターだ。


 なるほど、新・ニホニウムは和風モンスターで統一されていくのかな?


 銃を抜いて、トリガーを引く。

 銃弾は外れた――というかよけられた。

 考えないで普通にヘッドショットを狙ったら、うねうねする首がヘッドショットを軽くよけた。


「なら」


 今度は冷凍弾を装填。


 ろくろ首の首をしっかり狙って――撃つ。


 長くて細い首が、冷凍弾によって完全に凍った。


 首が凍れば、頭も動けなくなる。


 その頭に、落ち着いてヘッドショットを決めた。


 そして、ドロップする。


「これは……なんだ?」


 拾い上げてマジマジとみる。

 手の平サイズの、丸い果実だ。

 色は濃い紫か、薄い赤って感じだ。

 外皮は分厚く、硬い。


「わって食べるものか?」


 始めてみる果実をおそるおそる割ってみる。


 中は黄色くて、ざくろみたいに種が一杯はいっていた。

 みかんかオレンジの、房の中のさらに細かいあれに、種がついたようなフルーツ。


 おそるおそる一口食べて見る――味は知ってた。


 甘酸っぱい(、、、、、)それは、昔一度だけ食べたことのある。


 パッションフルーツ、という果物の味と同じだった。

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