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533.真・ニホニウム一階

「はい、それに」

「それに?」


 まだあるのか?


「ダンジョンの中も、モンスターも変わってましたわ」

「ダンジョンもモンスターも?」

「ええ」

「……別のダンジョンと間違えたとか?」

「わたくしも最初はそう思いました」


 って事は間違いなくニホニウムに入ったって訳か。


 ダンジョンの構造と、出現するモンスターと、なによりドロップが。

 それらが全て劇的に変化した。


「ちょっとニホニウムのところにいってくる」


 俺は身を翻して、転送部屋にむかって歩き出した。

 一度いった事のあるダンジョンの階層に瞬時に転送してくれる、転送部屋。


 そこで、ニホニウムの精霊部屋、と行き先を念じた――が。


「反応しない?」

「どういう事なのでしょう」

「……ニホニウム一階、二階、三階。全部だめだ」

「わたくしにもためさせてください」

「ああ」


 前の屋敷の時に、転送部屋を使ったことのあるマーガレット。

 俺は彼女に道を譲って、転送部屋を使わせた。


 彼女は同じように精霊部屋から念じた。

 ゲートは開かなかった。


 しかし――。


「一階へのゲートが開きましたわ」

「……二階は?」

「ダメですわ」

「さっき二階へは降りた?」

「いいえ。これがドロップしたので、急いでリョータ様に知らせに来ましたので」

「……つまり、さっきで一階にいったからゲートは開く。他の階層は行ってないから開かない」

「別ダンジョンになっているという事なのでしょうか」

「どう思う?」

「……見た目では、間違いなく別のダンジョンでした」


 マーガレットは少し考えたあと、そう答えた。


「……つれてってくれるか?」

「はい」


 一度行ったことのあるマーガレットに連れてってもらう形で、俺は転送ゲートをくぐった。


 指定したニホニウムダンジョン、地下一階。


「こ、これは!」


 入った瞬間、俺は盛大に驚いた。

 変わってる、なんてレベルじゃない。

 まったくの別物になっている。


 それまでは天然の鍾乳洞のような、洞窟っぽいダンジョンだったのが、一変。


 ピンク色でぷにぷにと脈動をする「肉壁」。


「内臓ダンジョン、か」

「内臓ダンジョンですか?」


 首をかしげて聞き返してくるマーガレット。

 俺はなるほど、と落ち着いてきた。


 一目見た瞬間の印象は衝撃的だったけど、この手のダンジョンは別にそんなに珍しい物じゃない。


 大抵のRPGの後半とか終盤には一つは存在している、内臓をモチーフにしたダンジョン。

 気色悪いが、「なるほど」という程度の感想の代物だ。


「こんなのに変わったのか。まあ、アンデッドモンスターには似合っているが……いや」


 俺は納得しかけたそれを思いとどまる。


「マーガレット。確かモンスターも変わったんだったっけ」

「ええ。あっ、あれですわ」


 マーガレットはハッと気づいて、俺の背後を指さす。


 でたか――と振り向いた俺がみたのは。


「お化け傘、か」


 江戸時代とかで使われた様な傘に、二本の腕と一本足、そして目玉も一つに口がついている。


 お化け傘と呼ばれる和風のモンスター……いや妖怪だった。


「あれなのか?」

「ええ、あれですわ。あれがリンゴをドロップしましたの」

「よし。リペティション……当然きかないよな」


 俺はおもむろに銃を抜いた。

 ドロップの事を確認したいから、まずは倒す。


 銃に込めた成長弾で、狙いをつけて――撃つ。


 最強の銃弾がお化け傘を撃ち抜いた。

 それはふっとんで、脈動する内臓の地面に倒れ込んで、薄くなって消えた。


「……え?」


 ドロップはなかった。


「どういう事なのでしょう」

「わからない……もういっかい試してみる」

「ええ」


 俺達はダンジョンの中を歩き出した。


 すこし探して、ふたたびお化け傘とエンカウント。


 効かないリペティションを撃ったのがよくなかったという可能性もあったから、今度は普通に銃で、しかもただの通常弾を撃った。


 連射した通常弾はお化け傘の「傘」の部分に次々と当って、骨と傘が次々と弾けとんで――倒れた。


 さっきと同じように、すぅときえていくお化け傘。

 しかし、やっぱり。


「ドロップしない、のか?」

「お待ちください。ラト、ソシャ、プレイ、ビルダー」


 四人のニンジャ騎士の名前を呼んで、そのままスカートを摘まんで駆け出すマーガレット。

 彼女のあとを追いかけていくと、徹底的に弱らせられたお化け傘に、彼女がトドメを刺している光景が見えた。


 すぅときえていくお化け傘、今度は。


「ドロップしましたわ」

「……つまり、俺だけドロップしない?」


 今までと全くの違った展開に、俺は困惑しつつも――ちょっとだけ面白いと感じたのだった。

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