表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
492/611

492.ゴブリンハーレム?

 プルンブムのところから戻ってきて、そのまま転送部屋で次のダンジョンに飛ぼうとした。


「おじさんじゃん。どこのダンジョンにいくの?」


 タイミング良くさくらと出くわして、俺は転送部屋の操作を中止した。


「カリホルニウムに。なんだかんだで止っていたから、攻略の再開をと思ってさ」

「そうなんだ。私も一緒に行っていい?」

「一緒に?」


 さくらは持っているスケッチブックを見せるように掲げた。


「いろいろ試したいことがあってさ。おじさんといっしょなら安心なんだよね」

「なるほど」


 そういうことなら断る理由もない。

 さくらは仲間だ、それに同じく日本からの転移者だ。


 そういう関係もあり、この世界で安定志向が染みついたし、俺が同行して安全に力のテストをする、ということにはなんの異論も無い。


「わかった、一緒に行こう」

「ありがとっ」


 さくらは屈託のない笑顔で近づいてきて、俺は転送部屋を操作して、一緒にカリホルニウムに飛んだ。


 植生で壁を作った巨大迷路のような見た目のダンジョン、カリホルニウム。


「なんか面白いね」

「そうか?」

「うん――ゴブリンじゃん!」


 早速モンスターが現われた。

 カリホルニウムのモンスター、ゴブリン。

 それが一二三――全部で四体、徒党を組んで現われた。


 さくらが「いろいろ試したい」といってついてきたから、俺はすぐには攻撃はせず、いつでもフォローできる態勢だけ整えて、静観することにした。


 さくらがジェネシスで絵を召喚する――かと思えば。


「本物のゴブリンだ! すっごーい!」


 興奮していて、攻撃どころではない。


「やめて! 私に乱暴するつもりでしょ! 人気ラノベみたいに!」

「たのしんでるな」

「だってゴブリンだよ!? スライムも出会った時はすごくワクワクしたけど、ゴブリンの方が断然今熱いよ」

「熱いの内訳は聞かないでおくよ」


 というかもう言っちゃってるしね、さくら本人が。


「それよりも対処した方がいいぞ。興奮するのはいいけど、あれはれっきとしたモンスターだから」

「だね。senkaは見る物であってされるものじゃないしね」

「なんか名言っぽいのでたな」


 さくらはスケッチブックを開いて、ジェネシスをとなえた。


「黄金の右足!」


 ゴブリンの一体の上に文字通り黄金色をした巨大な右足「だけ」が現われて、ゴブリンをプチッ、と踏みつぶした。

 ゴブリンを踏みつぶした直後、足は消えた。

 単発の召喚魔法か――と思ったら。


「黄金の左足!」

「黄金の右腕!」

「黄金の左腕!」


 さくらは立て続けにジェネシスを唱えた。

 その都度言葉通り、巨人を想起させるような黄金色の体の一部が召喚されて、ゴブリンを一撃で葬った。


「うん、いい感じ」

「いやいや、ありがたみがないだろそれ。というかそこまできたら黄金の全身でいいんじゃないのか?」

「ノンノンノン。この後に控えてる黄金の頭脳を召喚して、五部位全部揃ったことによって封印されしエクゾ――」

「オーケーそこまでにしようか」


 ケンカを売るには敵は強大すぎる。


「おじさん、私が冗談いってるって思ってるでしょ」

「え?」

「ほんとうだよ。五体で召喚したらものすごい強いのに合体するんだから。ちゃんとあれみたいに」

「……ああ、そうか。ジェネシスはそういうものだったっけ」


 自分の突っ込みが無粋に思えてきた。

 ジェネシスの特性、それは使用者が自分の書いた絵が傑作だと思えば思うほど、召喚した時の強さが増していく物だ。


 さくらとの付き合いはまだ短いが、おおよその性格は分かってきた。

 そのネタとノリの方が強いキャラをかける、といわれるとものすごく納得する。


「というかおじさん、ここでもチーレムなんだね」

「は? 何いってるの?」

「だって、さっきからゴブリンがずっとおじさんばっかりねらってるもん」

「え?」

「気づいてなかったの?」

「……本当に?」


 さくらは深く頷いた。

 まったく気づかなかった……。


 いや、言われてみればそうだったかも?

 さくらが瞬殺したからわかりにくかったが、たしかにゴブリン達はさくらよりも俺を狙っていたかも?


「ほら、またきた」


 思考から現実に戻る。

 さくらのいうとおり、更に数体のゴブリンが現われた。


 さくらは手出しをしなかった。

 そのかわりそっと俺から離れた。


 立ち位置をはっきり分けることで、ゴブリンがどっちを狙っているのかをはっきりする狙いだ。


 現われたゴブリンは五体――なんと全部がこっちに向かってきた。


「ほらね」

「ほんとだ……」


 倒さずに、動きで翻弄する。


 さくらに目配せで了解をもらってから、彼女にターゲット(、、、、、)をなすりつけるように動いてみた。


 しかしゴブリンは一直線に俺を狙ってくるだけ、さくらにはまったく目もくれない。


「やっぱりチーレムだ。だめだよおじさん、ゴブリンはさすがにみんなが可哀想」

「いやいやいやいやいや」


 そういう風に思われる俺が一番かわいそうだ。


 さすがにない、ゴブリンはない。


「なんで俺が狙われるんだ」

「こういう時、ゲームとかだと……」


 さくらはつぶやきつつ、思案顔になる。

 なんとも頼もしかった。


 これまでは「こういう」思考は俺だけだった。

 それがいまは、同じ考え方が出来る人がふえた。


「レベルか」

「能力か」


 俺とさくらはそれぞれ予想を立てて、同時にうなずき合った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ