491.リョータ専用の指輪
「おはよう」
ダンジョンに行く前に、まずはプルンブムのところに寄った。
「待っておったのじゃ。おお、なにやら晴れ晴れとした顔じゃな」
「ああ、今日はあんたにお礼を言いに来たんだ」
「妾に?」
「あんたがここで回復をさせてくれたから、無事、仲間達に指輪を買うことが出来たよ」
「ほう」
プルンブムは笑顔になった。
「そなたの最初の予想より早かったな。これはめでたい」
そして、まるで自分の事のように喜んでくれた。
「あんたのおかげだよ、それも。本当にありがとう」
「妾は自分の為にやったまでじゃ」
「自分の為に?」
どういうことだ? と首をかしげて聞き返す。
「そなたが過労などで倒れれば妾のところに来れなくなる。それを避けるためにやったまでじゃ」
「そうか」
プルンブムの言うことは嘘じゃない。
強がりでもない。
他の精霊と同じように、彼女は自分がほしい物だけが欲しい。
プルンブムが欲しいのは「会いに来る」こと。
立ち去ってもまた会いに来てくれることを、プルンブムは望んでいる。
屋敷に招いたり、俺がずっとここに暮らしたりするというのは彼女にとっては無意味な事。
決して短いとはいえない付き合いの中、その事をはっきりと分かった。
「それでもありがとう」
「律儀な事じゃ」
「で、これをあんたに」
「これは?」
「指輪だ」
俺はさしだした箱を開けて、入ってる指輪をプルンブムに見せた。
「妾にくれるというのか?」
「ああ。話の流れで、アウルム達にも指輪をあげることになったんだ」
「ほう、それをもっと詳しく話してくれ」
「そのつもりで来た」
俺はにこりと微笑んで、プルンブムの前に座った。
いつものポジション、いつものトークタイム。
冒険者組に指輪を揃えたあと、さくらの提案で精霊組・商人組にそれぞれ違う指輪をプレゼントする事になった。
その事をプルンブムに包み隠さず全部話した。
「なるほどのう」
「で、これが精霊組にあげたのと同じ指輪」
「それを妾にか?」
「屋敷にこそ来てないが、毎日会ってるんだ。俺のなかでは仲間のように思ってる」
「そうか。ならば受け取ろう」
プルンブムは笑顔のまま、俺から指輪を受け取った。
すぐにつけようとしないあたり、それは彼女にとってそれほど重要なものではないのが良くわかる。
「……あんたたちはすごいな」
「なんじゃ、藪から棒に」
「あんた達精霊は自分が欲しい物をちゃんと分かってる。そして絶対にブレない。そういうの、すごく格好いいって思う」
「それが何故評価されるのかは妾にはわからぬのだが」
「だからこそだよ」
ここにさくらがいれば、「俺またなんかやっちゃいました? だよねこれ!」って興奮しているところだろうな。
それくらい、プルンブムたち精霊のそれは俺の目にはすごくて、彼女たち自身にはどうってことのない事だった。
「しかし、返礼をせねばならんのだ」
「返礼?」
「高価な物をもらい、更に褒められたのだ。人間はこういう時お返し、とやらをするのじゃろ?」
「それはそうだけど……別にいいぞ」
「ふーむ」
プルンブムは押し問答をする事なく、思案顔になった。
これまた精霊の特徴で、こうと決めたら曲げないところだ。
「うむ、こうしよう」
プルンブムはそう言って、手の平を上向きに差し出した。
手の平があわく光を放った後、そこから指輪が現れた。
「お返しじゃ」
けろっとした顔で、それを俺に渡す。
「ありがとう、つけてみる――むっ」
受け取った指輪をつけた瞬間、効果に気づいた。
「これは……あの回復といっしょ?」
「うむ、そなたが頑張っている時に妾がサポートしてやった力じゃ。その指輪をつけていると、どこにいようがあれと同じように回復する。念のためにいうとそなた専用のものじゃ。他の誰にも使わせるでないぞ」
「ありがとう、すごく助かるよ」
精霊へ贈った指輪が、ものすごい特殊効果の専用指輪になって返ってきた。
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