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476.共有財産

「いっけえ、りょーちん達!」


 アリスは指輪を抜き放ち、号令をかけた。

 三体のりょーちんが一斉に動き出した。


 オリジナル――俺とまったく同じスペックのが三体。

 動き出した瞬間、三方向に散った。


 左右に、上。


 俺と同じ速度で三方向に散った三体、どれを追ってどれを対処すればいいのか。

 なまじ同レベルであるだけに、俺は迷った。


 そして、俺同士(、、、)の戦いでは、その瞬きする程度の迷いすら致命傷になった。

 気がつけば、俺のこめかみ、背中、そして心臓の三カ所に、銃口が突きつけられていた。


 ぐうの音がでないほどの完敗。

 こっちの世界に転移してからの戦いで、一番手も足も出なかった完敗だ。


「すごいです、気がついたらヨーダさんが負けてるです」

「なんかしたよねりょーちん」

「そうね、飛びかかった時手元がブレたから何かしたとは思うのだけど」

「全部の弾をチラ見せしてた」

「見えたのイヴちん!?」

「途中まで。……低レベルのくせに生意気」


 仲間達がわいわいと、今の戦いについて言い合った。


 イヴが話した通り、りょーちんは飛びかかってくる途中で全種類の弾丸を取り出して、ちらりと俺に見せた。

 膨大な選択肢、それも俺の判断を遅くした原因の一つだ。


 そうこうしている間にりょーちんの召喚時間が過ぎて、三体が同時に消えた。


「リョータが負けるのは珍しいね」

「さすがにね。自分とまったく同じ強さのが三人もいればどうしようもないわ」


 セレストが助け船を出してくれた。


「……」

「だからリョータさん、気にしなくてもいいと思うわよ」

「え? ああいや。今負けたのは気にしてないんだ」

「じゃあどうして難しい顔で考えごとを?」

「今こうしてこれが現実になったんだ。同じことが、いつかどこかで、『本番』があるかも知れない。そういう時はどうすればいいのかを考えてたんだ」

「「「…………」」」


 まったく自分と同じ能力が三体、あるいはもっといた場合、先手か、完全に後手に回った方がいいのかもしれないな。

 そこまで行くと、選択肢も極端まで突き詰めたものの方がいいだろう。


 先手ならまずは全力で数を減らす事からはじめるかな……などと、考えていると、仲間達がシーンと静まりかえって、俺を見つめていることに気づいた。


「どうしたんだ?」

「ヨーダさんらしいです」

「そうね、そこで可能性について先に考えておくことが出来るのが、リョータさんの一番の強さだわね」

「さすリョ? さすリョかな?」


 わいわい言い合う仲間達の中に、ものすごく自然に、しかしいらんネタを持ち込んで溶け込むさくら。


 なにか言いたかったが、楽しそうだからいいかなと思った。


「さて……指輪の能力は大体分かったし。多分個人差はあるけど、みんなが使えるものだろう」

「私はちょっと難しいです」


 そう話したエミリーは、指輪をつけて、持ってきたハンマーを振るって、空きスペースの床を叩いた。


 床が振動した、床を叩いたのが一回なのに、震動が二回分来た。

 ただし、震動はいつものに比べて、はっきりと分かるくらい威力が弱くなっている。


「衝撃波の数か。発生とダメージがほぼ同時だから瞬時に付け替えしてもダメだろうね」

「はいです」

「イヴはどうなんだ?」

「試してみる」


 イヴは指輪をつけた。

 さてあの手刀はどう変化するのか――と思ったら何故かニンジンを取り出した。


 そしてニンジンをじっと見つめるイヴ。


「……それは本人の技じゃないからダメなんじゃないのか?」

「そんなことない。ニンジンはウサギの一部」

「だとしても、数が増えて味が落ちるって事になるんじゃ?」

「かえす」


 まったくもってわかりやすく、イヴは指輪をはずして差し出してきた。


 まあ、イヴとエミリーは同じタイプの肉弾戦キャラだ。

 完全な肉弾戦だとエミリーみたいにこの指輪を活かしにくいだろうな。


「よし……とりあえず指輪の効果は分かった。今のところ貴重品。ふえるまで、屋敷においといて、使いたい人が持ってって使う。使い終わったら元の場所に返す。でいいかな」

「さんせー」

「異議無し」


 俺の提案があっさり通った。


「ねえねえおじさん、いいものがあるんだけど」

「いいもの?」

「はいこれ」


 さくらは得意げな笑みを浮かべながら、何かを差し出してきた。


「これは……俺の?」


 彼女が差し出したのは、首が左右にリズミカルに動く、首振り人形

 俺の姿をした首振り人形だ。


「うん。ジェネシスで作ったんだ」

「へえ、上手いな」

「そうじゃなくて、それを叩き割ってみて」

「たたき割る?」

「うん」


 なんでいきなり……とは思ったが、魔法ジェネシスで作り出したものを、何の意味もなくそうしろという事もない。


 俺は言われたとおり、人形を床に叩きつけた。


 バリン、と割れた後、それが光になった。


 光が収まった後、人形のかけらはなく、代わりに指輪がそこにあった。


「え? あっ、ない」


 最後にイヴから指輪を受け取ったセレストが驚く。

 今まで持っていた指輪がなくて、代わりに人形を持っていた。

 叩きつけた人形は割れてなくて、セレストの手にあった。


「どういうことなんだ?」

「ほらさ、みんなカート使ってるじゃん? あのテレポするヤツ」

「ああ、魔法カートな」

「アレみたいにテレポするのを魔法で出来ないかなって思って色々試してて、それがこれ。つかったら設定したいものと入れ替えることが出来る」


 さくらはそう言って、更にジェネシスを唱えた。

 彼女が持ち歩くようになったスケッチブックから、同じ人形が大量に現れる。


「これをみんなに」

「「「おー」」」


 仲間達が一斉に声を上げた。


 この人形があれば、指輪を使いたい時に使える。

 そういう能力のアイテムだ。

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