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462/611

462.レベル∞だけどまだ強くないです

 俺はグランドイーターのポケットからポータブルナウボードを取り出して、さくらに差し出した。

 イヴとほとんど抱き合った、百合のような姿勢のまま、さくらはポータブルナウボードを受け取ってまじまじと眺めた。


「何これ」

「こっちの世界のアイテムだ。使えばステータスが確認できる」

「アイテムを使うの? ステータスオープンとかじゃだめ?」

「昔やってみたことはあるけどだめだった」


 俺は苦笑いしつつ答えた。

 最初の反応もそうだったけど、やたらと適応してくるな。

 いやまあ、それはそれで助かるからいいんだけど。


「そっか、じゃあ使ってみる」


 説明を聞いて、その通りにポータブルナウボードを使った。

 すると、彼女のステータスが浮かび上がる。


―――1/2―――

レベル:1/∞

HP F

MP F

力  F

体力 F

知性 F

精神 F

速さ F

器用 F

運  F

―――――――――


―――2/2―――

植物 F

動物 F

鉱物 F

魔法 F

特質 F

―――――――――


 能力は見事に全部Fだったが――レベルのところがはじめて見る表記だった。


 ∞


「これって……どういう事なのです?」


 『∞』を見て、首をかしげるエミリー。


「無限って意味だ」

「レベルの上限がないってことです?」

「そう思う。そういう表記だから」


 頷くと、エミリーが驚きに目を見開いた。


「なるほど、だからイヴちんが『高レベル』って言ったんだ」

「高レベルしゅき」


 イヴは更にさくらに頬ずりした。


「……思えば、イヴががっつり低レベルって呼んでるのって俺と、ごくごくたまにアリスだけだもんな。その辺にいる街の人とかにはいわないんだよな」

「そっか、今のレベルじゃなくて上限のことだったんだ」

「ああ」


 頷く俺。

 さくらの出現で、初めて、イヴのいう「低レベル」の本当の意味を分かったような気がした。


「でも、本当に無限なの? どこかで上がらなくならないじゃないのかしら」

「試してみたいよな」

「屋敷に経験値のクリスタルがいっぱいあるです」

「マーガレットの時以来、ずっと溜めてたものね」

「はいです、それを使うと良いです」


 なるほど、と俺は頷いた。


「よし、じゃあ屋敷に戻ろう。ここでちょっと待ってて」


 俺は来た道を引き返して、転送ゲートに駆け込んだ。

 フェルミウムで一回掃討した部屋は、再入場するまでモンスターがまったく出現しない安全地帯になる。


 その道を引き返して、屋敷――バナジウムダンジョンにもどる。


 サロンでケルベロスと遊んでいるバナジウムを見つけた。


「バナジウム」

「……(こくこく)」


 バナジウム(ついでにケルベロス)は俺に駆け寄ってきた。


 バナジウムは俺の裾をつかんで、こくこく頷きつつ微笑んだ。


 お帰り、の仕草だ。


「ただいま。バナジウムに頼みたい事があるんだ」

「……?」

「一人、ここのダンジョンに入れて欲しい。俺と同じ出身の女の子、何があっても俺が何とかするから」

「…………」


 ここしばらく、メンタルが落ち着いてきたバナジウムが見せる、久しぶりの逡巡だった。


 それは五秒間ほど続いた。

 たっぷり迷ったバナジウムは、しかしゆっくりと頷いた。


「ありがとう」

「……(にこっ)」


 頭を撫でつつお礼を言うと、バナジウムは嬉しそうに微笑んだ。


 みんなを迎えに、俺は再び転送ゲートを使ってフェルミウムに飛んだ。


 出現するところでみんなが待っていた。


「お待たせ」

「エリエリ、いいって言ったの?」

「ああ」

「よし、じゃあレッツゴー」


 アリスが真っ先に転送ゲートに飛び込んだ。

 その後にセレスト、エミリーと続いて、最後にイヴがさくらと腕を組んだままゲートに入り、俺も一緒に踏み込んだ。


 一瞬のうちに、フェルミウムからバナジウムにまたもどってきた。


「わお、これって屋敷だよね。やるじゃん、もう屋敷手に入れてるんだ」

「ただの屋敷じゃないよ。ここエリエリの中。ダンジョンなんだよ」

「うそ? ダンジョンを改造したの?」

「改造って言うか……その辺の事はのちのち説明するよ。この世界の仕組みも含めて」


 それよりも、って感じで話を変えようとした。


「エミリーとセレストは?」

「もう準備に行ってるよ。テストをするいつものところに行っててだって」

「そっか」


 俺がゲートで戻ってきた時にはもう二人のすがたはなかったので聞いてみたが、どうやら早速動き出してくれたようだ。


 さくらをつれて、かつての地下室を模して作らせた、テスト部屋に入った。


 その直後くらいに、エミリーとセレストが魔法カートを押してきた。


 カートの中身を部屋の床にぶちまける。

 大量のクリスタルがでてきた。


 ニホニウムのダンジョンマスターがドロップしたもの。

 カンスト以降の経験値をこのクリスタルという形にするという効果の指輪で、俺は延々とクリスタルを作っては、ため続けていた。


「これは?」

「使うと経験値が上がるアイテムだ。みんなカンストしてるから、ずっと溜めてた」


 なるほどと納得するさくらに、経験値クリスタルの使い方を説明する。


 かつてマーガレットがしたとき以来、ため続けたクリスタルを仲間達が次々に運んできて、さくらがそれをつかった。


 延々と繰り返す事――数時間。

 全部のクリスタルを使いきった後、再びポータブルナウボードでステータスチェック。


―――1/2―――

レベル:147/∞

HP F

MP E

力  F

体力 F

知性 D

精神 D

速さ F

器用 F

運  F

―――――――――


―――2/2―――

植物 F

動物 F

鉱物 F

魔法 F

特質 F

―――――――――


「「「おおー……おおぅ?」」」


 歓声のあと、その歓声が中途半端な形でしぼんだ。


 レベルは本当に無限と思わせる147まで上がったが、能力はそれほど上がらなかった。


「……なるほどなあ」


 なんとなく、分かってきた感じだ。

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