456.パーティー格差
次の部屋に進んだ。
「げっ!」
思わず声が出てしまった。
全身に鳥肌がたって、今すぐUターンしたくなった。
3部屋目のモンスターは――「G」だった。
蜘蛛が来て、蝶々と来て、そこからの、G。
分からない話でもない、細かい突っ込みはあるが分からなくはない。
が。
「それはないだろ……」
と、愚痴りたくなるくらいの巨大Gだった。
サイズはそれほど大きくはない。
車くらいはあった蜘蛛と比べれば、Gはチワワ程度のサイズだから小さめだ。
……だからこそ、精神にかなりクる。
それが、わんさかといた。
あっちこっちでカサカサしていた。
俺は+10拳銃を抜いた、最強火力の成長弾を込めて一番近くにいる一匹を撃ち抜いた。
そして。
「リペティション! リペティション!! リペティションションション!!!」
最強の即死魔法を連射して、部屋の中のGを一掃した。
エミリーでなくとも、精神的にクる部屋をとっとと抜けたかった。
自分でもわかるくらい、リペティション連射の時の顔は大分切羽詰まった顔だ。
Gは一掃されて、同じように券が一枚でた。
精神的にはキツいが、今までの部屋と変わりないようだ。
それを拾って、開いた扉の向こうに行くと――。
「むっ」
瞬間、ダンジョンの外に飛ばされた。
冒険者が列を作って次々と入っていく、ダンジョンの入り口のところに飛ばされた。
「これで終わりなのか?」
「お疲れ様」
横から声をかけられた、振り向くとセルがいた。
「無事に初攻略をこなした――あっ」
ゴトッ!
セルの懐からフィギュアサイズの銅像が落ちた。
手をつきだして、魔法を唱えている俺の姿。
エフェクトがついていて、同じものを連射しているシーンだってのが分かる――が。
「いやこんなに格好良くないだろ!」
盛大に声を張り上げて突っ込んでしまった、まわりの視線を集めてしまった。
俺がGに連射してるやつを、既にもう作っているセル。
それはいいんだが、こんなにキリッとして格好良くない。
顔に三本線がすぅーと降りて、青ざめてて情けない顔だったはずださっきのは。
「余は、歴史は勝者が作る物だと信仰している」
「格好良くいってもダメだろそれ!」
「して、サトウ様は券を何枚手に入れた」
「話逸らすなよ! まあ、三部屋で三枚だった」
「うむ。では次は余とともに入ろう」
「ん?」
どういう事なのかと思ったが、セルはつかつかと入り口に向かっていった。
その後についていき、横入りでダンジョンにはいった。
「良いのか?」
「余があの列に並ぶのは外聞がよろしくない」
「……まあ、そうだな」
若干もやっとしつつも、セルの立場ならそうだろうと理解もできる。
それを飲み込みつつ、部屋の中を見回した。
「蝶々だ」
「出現モンスターはランダムと聞いている」
「なるほど」
「一掃を頼む」
「わかった」
銃を抜いて、追尾弾を連射。
さっきと同じように、弾とよける蝶々がぐるぐると回って、最終的にヒットしたが。
「倒れない?」
「パーティーではいると多少硬くなる」
「なるほど」
もう一発追尾弾を撃つと、今度は無事倒せた。
次は追尾弾を撃って、追い詰めたところに狙い澄ましたような通常弾。
よけきれない蝶々は、追尾弾と通常弾を同時に喰らった。
「おお、さすがだ」
追尾弾をつかって他の弾も当てる方法を編み出した俺は、通常弾を使って蝶々の「硬さ」――つまりHPをはかった。
大体、ソロの時の1.5倍ってところか。
それをはかっていくうちに、部屋の中の蝶々が一掃された。
そして券がドロップされる――三枚だった。
「多いな」
「うむ。パーティーで入ると、一人当たりソロの1.3から1.8倍程度のドロップになる」
「なるほど、二人で三枚だから1.5倍ってことか」
ならパーティーを組んではいった方が得だな――と思ったその時。
「――っ!」
ある光景が頭の中に浮かびあがった。
おそるおそる、セルに向き直って、聞く。
「1.3から1.8倍っていったか?」
「うむ」
「2倍は……?」
「ない」
セルはきっぱりと言い切った。
「流石サトウ様、もう気づいたようだな」
「……ああ」
俺は眉をひそめて、頷いた。
パーティーを組むとドロップが上がる。
しかし、2倍にはならないということは。
もし、分配する必要のあるパーティーだと、どうしても均等に配れなくて、もらいがすくない人間がでる。
構造的に、それは問題だ。