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449.新たなダンジョンへ

 新屋敷から表に出ると、敷地の外に一台の馬車が待ち構えていた。


 こっちの世界に転移してから、何回か馬車に乗ったことはあるし、街中や他の街に移動したりする時もちょこちょこ見かける。


 基本的にこっちの馬車は俺が知っている馬車と同じだが、目の前にあるこの馬車はちょっと違った。


 まずはサイズが違う。


 普通の馬車はそこそこの大きさで二頭の馬が引くのに対して、この馬車は通常の1.5倍くらいのサイズで、馬は四頭繋がれている。


 馬車そのものも、サイズが大きいのはもちろん、作りもかなり豪華だ。


 フレームに相当する部分がいちいち黄金製の装飾をあしらっていて、シンデレラ城か天蓋付きのお姫様ベッドとか、そんなのを彷彿とさせる豪華さだ。


 とにかく「すごい」の一言に尽きる馬車が敷地のすぐ外に止まっていて、行き交う街の人々が興味津々って感じで足をとめて見ていく。


 その馬車の前に、セル・ステムが佇んでいた。

 俺は話しかけつつ、彼に近づいた。


「すごい馬車だな」

「サトウ様にお越し頂くのだ。これくらいは当然である」

「大げさじゃないのか」

「ダンジョンに手を加えて頂ける、いわばこれから恩人になる方だ」


 この程度は当然だ、と、強い眼差しで俺を見つめるセル。


 テネシンの時に後回しにした後、状況が変わって更に後回しになって、ようやくまた「タイミング」というのが巡ってきた。


 セル・ステム一族が管理しているダンジョン、現金がドロップされる、いわば造幣のダンジョンに、これから向かう所だ。


「さあ、どうぞ」


 セルは立ち位置をずらして、俺に馬車の乗り込み口を開けた。


 その瞬間――ゴトン。

 彼の懐から何かが落ちた。


 いつもの銅像だった。


「早いよ! せめてもっと隠せ!」


 思わず突っ込みが入った。

 セルはすまし顔で銅像を拾って、懐にしまった。


 その一瞬だけだが、はっきりと見えた。


 銅像は二人(?)分、だった。


 片方は俺で、もう片方はりょーちんだ。


 俺とりょーちんがバトっている光景で、ドラ○ンボールを彷彿とさせるような躍動感ある超バトルのポーズで作られている。


 ぶっちゃけ、自分がモデルになってる気恥ずかしさを吹っ飛ばして、純粋に欲しくなるというわくわく感が上回った一品だ。


「こういっちゃなんだが、ますます完成度が上がってないか?」

「わかるかサトウ様!」

「近い近い、興奮しすぎ」

「……ごほん。サトウ様の力強さを表現するために、職人達には日夜精進させている。いつの日か究極の一品ができあがると信じている」

「どんだけの人員を投入してるんだか」


 俺は苦笑いして、まずは馬車に乗り込んだ。

 後からセルが乗り込んで、馬車はゆっくりと動き出した。


「これでどれくらい掛かるんだ?」

「約二日ほどといったところだ。途中で一泊していく。宿は既に手配済みだ」

「なるほど、そこそこ遠いな」


 馬車に揺られて、シクロの街中を進みながら、セルに聞く。


「ダンジョンの名前は、たしか……」

「カリホルニウム、である」

「世界で一番高価な元素、か」


 つぶやき、頷いた。


 この辺の元素はあまり知識は無い。

 同じマイナーな元素でも、ニホニウムは聞いた瞬間わかるのに対して、カリホルニウムはまったく知らない。


 事前に、バナジウムの時にタカラバコからドロップした百科事典で調べてきた。


 カリホルニウム、世界で一番高価な元素だ。

 「一番高価」ってつけられるのは用途があると言うことで、100g当たり七兆円もするというとんでもないものだ。


 それを知って、なるほどなと思った。


「普通のダンジョンとは違って、入場制限があるダンジョンでもある」

「入場制限? お前達一族がかけてるヤツか?」

「いや、ダンジョンそのもの。精霊がかけている制限だ。それをクリアして初めて入ることが出来る」

「入場アイテムか」


 珍しい話じゃない。

 今までのダンジョンでそういうのはなかったが、ダンジョンに入場する為のアイテムが必要なのは別に珍しいことじゃない。


 そしてそれは、更に二パターンに分けられる。


「その制限ってのは、消費するのか? しないのか、どっちだ?」

「さすがサトウ様だ。消費する方である」

「なるほどな……」


 結構やっかいなダンジョンかもしれない。

 ゲームで出てくれば、期待と面倒臭さが同居する複雑な想いをするダンジョンだ。


 入場アイテムを集めるために他のダンジョンなり何なりで稼いで、その稼いだ分で入場して攻略する。

 大抵の場合ギャンブル性が高くて、ハイリスクハイリターンな場所だ。


「サトウ様になんとかして頂くにあたって、制限アイテムを十分に用意させた」

「いや、せっかくだがそれはいい」

「え」

「攻略するんだ、一から始めるさ。その方がいざって時いいだろう」


 リペティションだけに頼りっきりにならないのと同じように、セルが前もって用意した物をやんわりと断った。


「さすがサトウ様。では、何卒宜しくたのむ」

「ああ」

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