442.新たなる力
ニホニウムダンジョンを順調に降りていく。
後半のモンスターは特殊な倒し方がいるが、既に俺が攻略していて、倒し方を全部知っている。
それをユキが倒せるように、拘束弾とか加速弾とかでフォローして倒させた。
一体倒すごとに、ユキのコスチュームと能力が一種類増えていく。
そして、ニホニウム地下九階。
最後のドラゴンゾンビは、時の雫を掛けてからユキに倒させた。
倒した後、ユキは自分の手のひらをじっと見つめる。
これまでの八階層にはなかった反応だ。
「どうしたん?」
「その、何も変わりませんでした。何か間違ったのでしょうか」
「何も変わらなかった?」
「はい、今までモンスターを倒すと『あっ、新しい力来た』って頭の中でファンファーレみたいなのがなるのですが」
レベルアップ音みたいな感じか。
「それが今回だけなかったのです」
「それはおかしいな。本当に増えてないのか?」
「はい、九種類のままです」
「そうか……ん? 九種類?」
「はい、九種類です」
「……最初の、ユニークモンスターになった時のってどんなだったんだ?」
「ちょっと待ってください」
ユキはそう言って、一旦スライムの姿を経由して、姿を変えた。
「これです」
「能力はたしか……」
「運がSです」
ポータブルナウボードを使わずに、ユキが答えた。
一度は確認した自分の能力、ちゃんと把握しているようだ。
「わかった。俺が最後に上げたのが運だったんだ」
少し前の事、ニホニウムと実際に会う少し前の事を思い出す。
ドラゴンゾンビを倒して、運がEになった。
それで精霊の部屋前までいって、全能力がSSじゃないと次にすすめないことが分かった。
他はもう全部SSになってて、最後の運をドラゴンゾンビ周回であげた。
そして、ユキがユニークモンスター化した時に最初についた能力が運だ。
ニホニウムでモンスターを倒して能力を手に入れるのと、俺の波動でユニークモンスター化して俺の最後にあげた能力と一致している。
偶然ではないだろうな、これは。
まあ、何はともあれだ。
「これで九種類揃ったってことだろう」
「そうなんですか」
「俺はそう思う」
「そうですか……」
ユキはほんのり嬉しそうに微笑んだ。
「さて、そういうことならもうここもいる必要ないだろ。戻るか」
「はい」
俺たちは引き返した。
もう既にユキに倒させる必要はないから、帰り道のモンスターは俺が倒すことにした。
転送ゲートのある一階まで、俺が。
早速ドラゴンゾンビに出会った、カウントが99なのだが、リペティションでサクッと倒した。
「あっ」
消えたドラゴンゾンビ、下に続く階段が現われた。
それを見て、不思議がるユキ。
「ここのダンジョン、九階までじゃなかったのですか?」
「普通はそうだ。この下は精霊の部屋に続く道で、例外的な場所だ」
「そうなのですね」
「……」
「どうしたのですかパパ」
「降りてみよう」
「……? はい」
不思議がるも、俺の意見に反論はしないユキ。
ユキはバナジウムと手を握って、一緒に階段を降りていく。
懐かしさと不気味さが同居する不思議な部屋。
5メートル四方の立方体、脈動する腐った肉のブロック。
気味の悪いオブジェは、前とまったく変わることなくそこにあった。
「これは?」
「怖くないのか?」
何となくそれを聞いた。
「はい。私と同じ感じですから」
「なるほど」
俺の感覚ではこれはおどろおどろしくて気持ち悪い物体だが、ユニークモンスターのユキからすれば同族だからそういうことはないようだ。
精霊であるバナジウムも、むしろ面白そうに脈動する血管っぽい場所を突っついている。
「それで、どうするのですか、パパ」
「ここにナウボードがある。はかってみて」
「分かりました」
かつて俺がそうしたように、ユキもナウボードで能力を測っていく。
が、何も起こらなかった。
「俺がやらないとだめか」
そうつぶやいて、ナウボードで能力をはかる。
戦闘面はオールSSって表示された後、塊は溶け落ちて、モンスターが現われる。
カウント9のドラゴンゾンビ。
「来たか。時の雫を掛ける、倒してみろ」
「わかりました」
さっき上の階でやったのと同じように、時の雫を掛けて、ユキにドラゴンゾンビを倒させた。
すると、今度は「8」カウントの三つ首犬が現われる。
ニホニウムに会いに行った時と同じだ。
ダンジョン攻略として、いちどこれをユキにやらせたいと思った。
俺とは違って、ユキは魔法も銃もない。
「さっきと同じ、俺が首をより分ける」
「はい!」
代わりに、力をSにする事ができるから、止めて倒す事ができる。
俺は追尾弾を撃って、W加速弾を自分にうって時を止める。
追尾弾があたる直前に弾そのものを弾いて、残りの二つの首を更により分けてさししめす。
その首を、ユキは一撃で吹っ飛ばした。
次々に倒させていく。
カウント7、電気マミー。
カウント6、ポイズンゾンビ。
カウント5、レッドスケルトン。
カウント4、特殊マミー。
カウント3、マミー。
カウント2、ゾンビ。
カウント1、スケルトン。
それを全部倒させると――入り口が現われなかった。
ユキの体がぼわっ、と一瞬ほんのりと光ったが、それだけ。
階段は現われなかった。
いや階段はいい、この際いい。
重要なのは――
「どうだ? 新しい力がついたか?」
「えっと……ありません」
「ないのか」
「はい……」
ユキは落胆した様子で俺を見あげる。
何か間違えたのか? それとも何か工夫して、ユキの計測で動かさないと何もないのか?
そう思いながら、何となくもう一度能力を測る。
HP―SS
MP―SS
力――SSS
体力―SS
知性―SS
精神―SS
速さ―SS
器用―SS
運――SS
「――えっ?」
肉の塊はそのままだったが、俺は、表示されたステータスに目を疑った。
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