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440/611

440.ニホニウム、再び

 翌朝。

 ニホニウムダンジョン、地下一階。


 ここ最近すっかりと足が遠のいてしまったここ。

 ある意味俺の原点でもあるここに、スライムを連れてやってきた。


「それじゃ、テストを始めよう」

「はい! どうすればいいですか?」


 カーボンそっくりに変身したスライムがちょこん、と小首を傾げて聞いてきた。

 仕草が可愛らしくて、頭をなでなでしたくなる。


 手がのびかける、スライムは首をかしげたまま「???」って顔をする。

 俺はゴホン、と咳払いして、伸ばしかけた手をそのまま握った拳を口元に持ってきてごまかした。


「今から俺がモンスターを倒すから、そのドロップ品を拾ってみてくれ」

「分かりました」


 スライムを連れて、ダンジョンの中をすすむ。

 すぐにスケルトンとエンカウントした。


 スケルトンに通常弾はききが悪い。俺は肉薄して、接近戦でスケルトンを倒した。

 オールF時代を思い出す接近戦、ちょっとノスタルジックな感じがしつつ、モンスターの骨を砕いた。


 スケルトンが倒れて、HPアップの種があらわれる。


「拾ってみてくれ」

「分かりました」


 スライムは素直に頷いて、近づいてしゃがんで、種に手をのばした。


「あっ……」

「ダメか」

「どうしましょう」

「いやいいんだ。ダメな可能性が大きいのは予想していた。……君は悪くない」


 拾えない事で泣きそうな顔になったスライムをなだめる。

 なんだろうこれ、ものすごく罪悪感を覚える。


「レベル1で上がらないんならここであげるという考え方はダメか。これもダメだろうが、一応次のは君が倒してみてくれ」

「分かりました」


 その場を離れて、ニホニウムの中を進む。

 程なくして、またスケルトンとエンカウント。


 スライムの能力は器用がSで、それ以外全部F。

 つまり戦闘能力はかなり低いから、俺はエンカウントと同時に拘束弾をスケルトンにうった。

 スケルトンを完全拘束してから、スライムに「頑張れ」とゴーサインをだす。


 スライムは頷き、意気込んだ様子でスケルトンに向かっていった。


 見た目は幼くかわいいだけの女の子。

 能力がほぼオールFだから、戦い方もそれ相応だった。

 スケルトンをポカポカ殴ったり、蹴ったり、地面から石を拾って叩きつけたり。


 完全拘束相手に一分近く格闘してから、ようやくスケルトンは倒れた。

 そして種は、当然ドロップしなかった。


「まあそうだろうな、ドロップはFだし」

「ごめんなさい……」

「いや、君が悪いわけじゃない。さて、そうなるとどうしようか」


 俺はスライムの事を考えた。

 最高レベル1なのを活用して、大量に魔法の実を食べさせるか。


 魔法の実。

 それは食べれば魔法を覚えることが出来る、二重の意味での魔法の実だ。


 食べれば無条件で覚えられるが、何を覚えるのかはランダムなうえ、二つ目からは「最高レベル」が1下がってしまう。


 でも、最初から最高レベル1ならなんの問題もない。


 MPもFだから恩恵は薄いが、大量に魔法の実を食べさせて、技の――いや、小技のデパートみたいなのを目指せそうだ。


 うん、それで行くか。


「よし、ここまでにして帰ろう――」


 俺がそう言って、顔を上げた瞬間ちょっと驚いた。


「どうしたんだ? その格好は」


 そう聞くのは、スライムの格好がさっきとちょっと違っていたからだ。

 体――というか肉体はさっきと同じだが、きている服が変わっている。


 もこもこで、ちょっと可愛い感じだ。


「分かりません。さっきのモンスターを倒したら、いつのまにか体が変化してこうなってました」

「体?」

「はい……あっ、これ、私の体なんです」


 スライムは服をつまんでそう言った。


 ……。

 ああ、そういえばスライムから変身した時にはきていたな、服。

 つまり服に見えるのは彼女の「皮」という事か。


 いやスライムに皮はないから――粘膜?


 …………もっと違うか。


 ともかく服も肉体の一部、と言うことは分かった。


「いきなり変わったのか?」

「はい」

「元に戻すのは?」

「えっと……」


 スライムは一度、スライムの格好に戻って、すぐにまた人間に化けた。


 チャプン、って音がして、コミカルでちょっとおかしかった。


 再び変化したスライム、服はもこもこのままだ。


「ごめんなさい、これ以外は出来ないみたいです」

「……スケルトンを倒した影響か……? まさか!」


 俺はある可能性を思いついた。

 そしてもし種が使えた時にと用意してきたポータブルナウボードを取り出して、スライムに渡す。


「使って見てくれ」

「分かりました」


 スライムは頷き、ポータブルナウボードを受け取って、使う。


―――1/2―――

レベル:1/1

HP S

MP F

力  F

体力 F

知性 F

精神 F

速さ F

器用 F

運  F

―――――――――


―――2/2―――

植物 F

動物 F

鉱物 F

魔法 F

特質 F

―――――――――


 さっきよりも、更に驚いた。


 なんと、スライムの器用がFになって。

 代わりに、HPがSになったのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ハグレモノなのになんでダンジョンに入れるの?
[一言] ダンジョンに自由に出入り出来る・・・?
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