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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第二章

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43.セレストの魔法、エミリーの魔法

 闇討ちの男達を撃退して、エミリーのテントに戻ってきた。

 セレストを介抱したときの時に移動したっきりそのままだから、ゴミ捨て場が近くにあった。
 これから税金免除の最終日まで人が更に増えて、ゴミも増えるだろうな。

 セレストはゴミと向き合っている。
 少し離れたところに佇んで、魔力を高めて、詠唱して魔法を放ってゴミを燃やす。
 どこからともなく漏れ出すような炎が様々なゴミを包み込み、灰にしていく。

 綺麗で、かっこいい。
 と思った。

 強力な炎の魔法でゴミを燃やしていき、炎に照らし出される凜然とした横顔はとても綺麗だと思った。
 その横顔に見とれているうちに、ゴミの大半が燃やされて、残りわずか――ポリバケツ一杯分程度のゴミだけになった。
 あとは適当に燃やして終わり、終わったら声をかけよう――そう思っていたら。

 セレストは魔法を詠唱した。
 今までと同じ魔法、魔法陣を広げて、髪をなびかせての大魔法。

 トラックいっぱい分のゴミを燃やし尽くせる程の業炎で、バケツ程度のゴミを消滅させた。

 最終魔法で最弱のモンスターを倒す、そんなオーバーキルな光景。
 なんでそんな事をするんだ――って思ってると。

 セレストがふらついた!
 膝から崩れて、倒れそうになる。

 とっさにダッシュして、彼女を抱き留める。

「リョータ、さん」

 おれの腕の中でセレストがうわごとのようにつぶやく。
 出会ったときとまったく同じだ。消耗して、衰弱しきっている姿。
 目の焦点があってなくて、意識があるのかも定かじゃない。

「じっとしてて」

 おれは銃を抜いた、回復弾が装填されたままになってるのを確認して、セレストの二の腕に押しつけてトリガーを引く。
 まるで注射をするかのように、彼女に回復弾を撃ち込んだ。

 一発じゃ足りなくて、二発撃った。
 そこでようやく、セレストの顔色が戻った。

「大丈夫?」
「……」
「セレスト?」

 さっきと違って目の焦点があってる、が、何もいわないセレスト。
 だまったままおれを見つめてる――と思ったら。

「だ、大丈夫。もう平気」

 と、慌てておれを押しのけて、ざざざざと距離をとった。

 距離をとった先で、何故か赤面して、おれをちらちら見てくる。
 なんか困ってるみたいだが、何を困ってるんだ?

「やだわたし、なんでこんなにドキドキしてるの? それに……」

 ちらっとおれをみて、更に赤面するセレスト。
 なんかブツブツ言ってるし、何がどうしたんだ?
 なんか困ってるなら聞いて協力しよう、と、ともっていたら。

 パチーン

 セレストはいきなり自分の頬をひっぱたいた。
 右手で張った、左手で張った、右手で張った、左手で――。

「ってそれはやりすぎでしょ!?」

 慌てて割って入って彼女を止めた。
 なにがなんだか分からないけど、自分で交互に左右の頬をひっぱだく彼女を止めた。

 一通り自分をひっぱだいた彼女は彼女はすぅと息を吸い込んで。

「うん、落ち着いた」

 と、さっきまでみたキリッとした表情に戻った。
 キリッとした顔、長身のセレストにはよく似合う顔だが。

 ……微妙に腫れた頬に、おれは「えーーーー」というしかなかった。

     ☆

「変な事を考えてしまったので気合をいれたんだ」
「な、なるほど?」

 落ち着いた彼女がさっきの奇行の理由を説明した。
 一応は納得した。確かに気合を入れるために自分にビンタをする事はあるな。

 ……うん、あるある。
 ……数には突っ込まないようにしよう。

 気を取り直して、話題そらしもかねて、おれは気になった事を彼女に聞いた。

「さっきゴミを燃やしてたよな。最後もすごい炎の魔法でちょみっとしたゴミを燃やしてたよな。なんで? 節約して簡単な魔法使えばよかったのに」
「わたしはそれしかつかえないから」
「それしか?」

「範囲火炎系レベル3魔法、インフェルノ。この魔法しか使えないもの、わたしは」
「それだけ?」
「これだけだ」

 はっきりと頷くセレスト。
 ……むぅ?

「レベル3って今言ったけど、レベル1とか2? の弱い方? は使えないの?」
「ないね、これだけなんだ」

 風が吹いた、彼女の綺麗な髪がなびいた。
 セレストははっきりと、迷いなんて一欠片もなく頷いた。

 ……つまり、メ○もメ○ミもつかえなくて、メ○ゾーマしか使えないってことか。

 なるほど、だからああしたのか。
 最後までゴミに対してレベル3の魔法でオーバーキルした。

「そういうことはよくあるのか? その、レベル1と2が使えなくて3だけってのは」

 おれの知識でもあまりない、大抵の魔法は下から覚えていくものだ。

「ないな、わたしもわたし以外こうだという人間をしらない」
「そうなのか、それは何故?」

 聞くが、一瞬で後悔する。
 セレストが複雑そうな笑みを浮かべたからだ。

 聞いてほしくないことだ、と一瞬で理解する。
 フォローしなきゃ、話をそらさなきゃ。どうする?

「おかえりですヨーダさん」

 そこに、テントの中からエミリーが出てきた。
 彼女はいつもの様に温かい笑顔でおれを出迎えて、場の空気を優しく塗り替えてくれた。

「おお! おれの女神!?」
「ふぇ?」
「たずかった、キミのような女神にずっとそばにいてほしい」
「ふええええ? な、なんですかヨーダさん!?」

 オロオロする彼女に、おれは何度も何度もお礼をいった。
 赤面させてしまったけど、感謝の気持ちをもっと伝えて、もっともっと赤面させた。

     ☆

 エミリーはごちそうを作っていた。
 おれの仕事が終わったことを聞いて、お祝いのごちそうをつくってくれるらしい。

 テントの横でたき火をおこして、料理を作り始めるエミリー。
 それを眺めてながら、雑談するおれとセレスト。

「すごいな、攻略って、たしかレアモンスターのドロップの確認が残ってるんだよな。それを全部確認したということか?」
「おれの分はな、奇数階だけ確認した」
「奇数階だけ?」

 セレストにシクロとヘテロの話をした。
 最初は首をかしげてたのが、すぐに納得した。

「すごいんだな」
「そうかな」
「一人でそんなことをしてしまうのははじめて聞いた」

 ちょっと照れる。
 セレストの様な美女に持ち上げられるのはそれだけで照れてしまう。
 照れるのと同時に、もっと言ってほしいと思った。
 おれがエミリーに思いっきりお礼を言ったように、ほめられるのももっとされてほしいと思う。

「セレス――」
「お待たせなのです」

 勇気をだしてお願いしようとしたところに、エミリーが戻ってきた。

「焼き上がったばかりなので熱々に注意なのです」
「ありがとう」
「ありがとう――ってケーキ!?」

 受け取ったセレストが愕然とした。
 おれもちょっとびっくりして、ケーキをまじまじと見つめた。
 渡されたのは、白い皿に銀色のフォーク、そして三角形に切られた美味しそうなケーキだった。

「このケーキどうしたの?」
「焼いたのです」
「焼いたって、あのたき火で?」
「はいです」
「たき火でケーキ……たき火でケーキ?」

 ブツブツいって、たき火とケーキを交互に見比べるセレスト。
 おれは小さく吹き出した。

「セレスト、あまり深く考えない方がいい」
「え?」
「戦士が魔法の使い方を理解できないのと同じように、おれらにはエミリーの料理も温かいテントの作り方も理解できないんだ。一生かかってもな」
「あ……」

 テントをちらっとみて、セレストは納得顔をした。
 他の人間はこう言っても納得しないだろう、しかし実際にあのテントを知ってる彼女は、エミリーの不思議(、、、)ときいて納得した。

「そう、だね」
「たき火でケーキを焼いた、エミリーならありなんじゃないか?」
「そうね、ありね」
「ということで、ありがとうエミリー、頂くよ」
「頂きます」
「はいです。どうぞ召し上がれなのです。わたしは次を準備してくるです」

 そういって、パタパタと走って行くエミリー。

 そんな彼女のすがたをみて、くすっと笑い合うおれとセレスト。

「次は何がでてくるんだろう」
「わかんない。でもエミリーだからな、何があっても驚かないよ」
「いろいろあったんだね」
「エミリーはすごい、それだけだ」

 おれが言って、セレストが頷く。
 二人でケーキを食べた。
 クリームは甘くて、スポンジはしっとりしてて、美味しかった。
 どうやったらたき火でやけるのか疑問だけど、美味しいからよしとした。

「お待たせなのです」

 ちょうどケーキを食べ終える頃、エミリーがまた戻ってきた。

「ごちそう様、ケーキ美味しかった」
「はいです、次はこれです」

 エミリーが出したのを受け取るセレスト――だったが

「ってアイス!? アイスなんで?」
「ありがとう、頂くよ」
「えええええ? リョータさん食べるの? 何の疑問も持たずにそのアイスを食べるの?」
「言っただろ、何が出てきても驚くなって」
「えええええ……」

 戸惑うセレスト、ニコニコするエミリー。
 おれは、彼女が作ってくれたアイスを頬張った。

 甘くて美味しくて、体にすっと染みこんでいって。
 セレンで頑張った甲斐があったな、と思った。

「ありがとうエミリー」
「お疲れ様なのです、ヨーダさん」

 おろおろするセレストを挟んで。
 おれ達は、仕事を終えた満足感につつまれたまま、穏やかに笑いあった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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