表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
423/611

423.+10W鉄壁弾

 カーボンダンジョンの表、閉ざされた入り口に向かって、俺は新しく入手した銃で、四隅にW鉄壁弾を撃って、無理やり入り口を開けた。


「ふぅ、たすかった」

「ありがとうございます!」

「大変な目にあったぜ」


 ダンジョンの中に閉じ込められた冒険者が次々と脱出した。


 脱出する冒険者を眺めると、彼らはダンジョンの入り口の横に設置された注意書きの看板――セルが設置した俺の銅像の前を通る。


 注意書きにはしっかりと、引き返したらダンジョンの入り口が閉じるって書かれている。


 なのに、今朝、起きたら冒険者がすっ飛んできて助けを求めてきた。

 別のルールが出来たのか? なんて、思っている。


「あの……サトウさん」

「ん?」


 名前を呼ばれて、振り向く。

 冒険者が三人俺の方を向いていた。


 話しかけてきた女と、その後ろにいる二人の男。


 装備的に見て、女の人は魔法使い、男の二人は剣で近接戦闘をするという、オーソドックスな三人パーティーって感じだ。


「すみません、多分、私達が……」

「おっ」


 事態把握のために話を聞こうと思っていたところに、向こうからやってきてくれた。


「引き返したのか?」

「えっと……その……どういえばいんだろ?」


 女魔法使いが振り向き、二人の仲間に救いを求めるように目線を送った。


「最初から話した方がいいんじゃないか?」

「そうそう、あっち(、、、)も多分ダンジョンの罠だろうし」

「そっか、そうね」


 二人のアドバイスをもらって、再び俺に向き直った女魔法使い。


「えっと、魔法カートがいっぱいになったのでかえろうとしたんです」

「ああ」

「それで、階段を上ってたら、急に後ろからカールの声が聞こえたんです。振り向くとカールがつまづいて下の段で転んでたんです」

「それで降りたのか?」


 男二人を見る。

 カールはきっと、二人のうちのどっちかだ。

 案の定そうで、二人のうち片方が答えた。


「いや、その時俺はミーナの前にいた。背中が触れるくらいの距離だ」

「ん? って、ことは……前にいたあんたがいつの間にか後ろで転んでた……って状況になるのか?」

「そうだ」


 カールが言い、三人が次々に頷いた。


「一瞬迷ったけど、あっ、これって罠なんだ、って思って、無視して階段を上ったんです。そしたら後ろでころんでたカールが消えて」

「ふむ」

「で、今度は壁が現われたんだ。俺たちの前に」

「かべ?」

「そう、階段の前を防がれちゃって、すすめないってなって」

「もしかしてあの(、、)カールを無視したのがダメだったのかな、って思って思わず一歩だけもどったら――」

「上の方で悲鳴と怒鳴り声が聞こえてきた」


 話を聞いて、俺は頷いた。

 悲鳴と怒号ってのは、ダンジョンの入り口が閉じてしまった瞬間の、近くにいた冒険者の反応なんだろう。


 怒号混じりなのは、もう何度目か分からない位の「やらかし」だからだろうな。


「そのあと壁をすり抜けて上から別の冒険者が来たんです。その時はじめて、あっ、見えるだけの壁なんだって分かったんです」

「まやかしか」


 三人が一斉に頷いた。


 でも……なるほど。

 これで話は分かった。


 二重に張られた罠に引っかかってしまったんだな。

 同じ状況になったら俺も引っかかった気がするし、他の冒険者でもひっかかっただろう。


 一概にこの三人は責められない、と言うことは分かった。


「状況は分かった。あまり気にしないで」

「ありがとうございます」

「すまない、次はもっと気を付ける」

「もうひっかからねえ」


 三人はそう言って、そそくさとこの場から立ち去った。

 俺は開いた出口を見た。


 W鉄壁弾が開いた出口から、一旦全冒険者が退避するために出てきている。


 一度閉じたカーボンダンジョンは、全員出てくるまで閉じたままだ。


 元に戻すため、全員一度外に出るってのは、ここまで何回か閉ざされた経験からの対処法だ。


「えっと」


 W鉄壁弾が消えかかった、俺は慌てて近づいて、追加の弾丸を撃とうとして。


 手を突き出して止めて、銃を構える。

 今まさに出てこようとした冒険者は、俺がやってる所を見たことがあるのか、微笑みを浮かべながら入り口の向こうに立ち止まって、俺が処置するのをまった。


 ふと、ひらめく。

 構えている銃からW鉄壁弾だけを抜いて、銃をグランドイーターのポケットにしまって、代わりに銃+10を取り出す。


 それにW鉄壁弾を込めて、撃つ。


 入り口の四隅に撃つW鉄壁弾、それは入り口を維持した。


 処置が終わったのを見て、冒険者は出てきた。


 次々と冒険者が脱出してきて、最後の一人になったところで、入り口が元通りに戻った。

 W鉄壁弾は消えずに、そのまま入り口の四隅に残った。


 冒険者が次々とカーボンの奥に戻っていくのを尻目に、俺はそこに佇んだまま、じっと見つめた。


 W鉄壁弾で距離が縮んで、効果時間が長くなった。

 それを更に+10で撃てば……?


 俺はまった、じっと観察した。


 弾はいつまで経っても残った、消える気配はまったく無い。

 夜まで待っても残り続けて、観察をお願いした顔見知りの冒険者によると消えたのは翌朝。


 丸一日、存在し続けたということになる。

面白かった

続きが楽しみ

と思ってくれた方は、下の評価ボタンから評価してくれるとすごく励みになります!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ