393.りょーちん、命中
「空っぽかあ、中に何か詰めて使うのかな」
「銃弾に詰められる物といったら火薬だけど、そういうものじゃなさそうだしな」
そもそも、俺がもってる銃弾は火薬とかは関係ない。
火炎弾とか冷凍弾とか、かなり早い段階でただの火薬とは関係がなくなっている。
「エリエリに聞いてみる?」
「いや、自分で試してみるよ」
俺は一回クリアするまで攻略サイトを見ないタイプだ。
だからこれも後でゆっくり試そうと、ひとまず他の弾丸と一緒に懐にしまった。
「リョータ!」
アリスが急に大声を出した。
視線は俺の胸を凝視している。
俺の胸――その奥。
弾丸をしまったばかりの懐が光を放っていた。
手を懐に入れて、光っているものを取り出す。
「さっきのヤツだ」
「ああ。光が収まっていく……むっ」
「片方がちょっぴり光ってるね」
アリスが言って、俺は頷いた。
先端が二色になっている片方が落ち着いた光を放っている。
さっきとは明らかに違う様子だ。
「中も埋まってる」
「どれどれ……ほんとだ。さっきまで空っぽだったのに、半分だけすっごい透明なゼリーみたいに埋まってるね」
アリスのたとえは的確だった。
「どういうことなんだ?」
「ねえ、他のはどうなってるの?」
「え? ああ」
俺はもう一度懐に手を入れ、銃弾を取り出してみた。
手持ちの銃弾を全部取り出して、地面に並べていく。
「むっ」
「どうしたの?」
「加速弾が一個足りない」
「足りない?」
懐をまさぐる、そこには無かった。
もう一度、加速弾の数を数える……やっぱり足りない。
「勘違いとかじゃなくて?」
「いいや、加速弾はリョータの村で一日に一発発生する希少なものだ。いざって時の切り札だし、数はちゃんと把握してる。」
「なるほど。それだけなの足りないのって」
「他はさすがにわからない。無限雷弾と回復弾と成長弾。このあたりの一発のみのはわかるけど」
「そっか」
二人で銃弾の前で首を傾げ合う。
ふと、アリスがちらっと寝ているバナジウムを見てから、おもむろに弾丸の一つ――火炎弾を取って、渦中の新しい弾丸に近づけてみた。
すると――。
「わっ! 吸い込まれた!」
驚くアリス、俺はとっさにバナジウムをかばうように身構える。
火炎弾は新しい弾丸に吸い込まれていくのと共に、光を放った。
懐の中にあったときと同じ光。
光は一瞬まばゆく煌めいた後、徐々に落ち着いていった。
「埋まったね」
「埋まったな」
頷き合う俺たち。
新しい弾丸のもう片方も、火炎弾を吸い込んだ後、ほんのりと光を放ちだした。
「空っぽだった半分も埋まってる……ってことはさ、さっきのは加速弾を吸い込んだって事だよね?」
「そういうことになるな」
「三つ目は入らないっぽいね」
「見た目的にも埋まってるしな」
「ねえねえ、撃ってみようよ、それ。リョータの銃で使う物なんでしょ?それ」
「そうだな、試してみるか。鬼が出るか蛇が出るか……」
「じゃあ、ちょっとまって」
アリスはそう言って立ち上がり、むむむ……って感じで溜めてから、両手を天に突き上げた。
「りょーちん!」
召喚魔法、オールマイト。
空間が割れて、次元の裂け目から俺っぽい着ぐるみなヤツが現われた。
アリスが思う最強の存在――俺とまったく同じ能力をした存在を召喚する魔法。
召喚されたヤツの能力は俺とまったく一緒。
一日一回、制限時間30秒という点以外、俺の能力とまったく一緒だ。
「なんで、りょーちんを?」
「念のため。何が起こるかわからないし、リョータが二人いた方が安全じゃん?」
「なるほど」
「それじゃ、りょーちんに向かって撃ってみてよ」
アリスがパチン、と指を鳴らすと、りょーちんは離れた場所――約20メートル離れた先に移動して、スタンバった。
俺は銃弾を銃に込めて狙いを定めた。
問答は後、りょーちんは一日30秒間のみ。
まずはテスト。
そう思って、引き金を引くと。
「うわっ! りょーちんが燃えた! すっごい! なに、今の! なにも見えなかった」
ものすごく、驚くアリス。
俺にも見えなかった。だから、俺と同じ能力のりょーちんは避けられなかった。
加速弾と……火炎弾。
ものすごく速くなってる……のか?