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391.バナジウム

「なんか見えるの?」

「ああ」

「エリエリ?」

「の、昔の姿だ」

「そっかー、ねえ、ここ?」


 俺の視線から、エリスロニウムの幻影? がある所を割り出すアリス。

 彼女はぴったり正解、エリスロニウムがいるタカラバコをさした。


「ああ、そこだ」

「そっかー、ねえねえメラメラは見える?」


 アリスの肩にのっかてるメラメラぷるぷると揺らいだ。

 同族である精霊・フォスフォラスにも見えないのか。


 が。


「そかそか。でもいるんだよね」

「ああ」

「じゃあパパッと倒しちゃおうよ。エリエリのために」


 下を向く俺、まだそばにいるエリと目があう。


「そうだな……もうちょっと待ってて」

「……(こく)」


 頷くエリ、俺は銃を抜き、照準をエリスロニウムの幻影が乗っているタカラバコに合わせた。


 ニコリ、と微笑む幻影。


『ありがとう』


 そう言って、彼女の姿が消えた。

 引き金を引く、成長弾がタカラバコを撃ち抜く。


 倒されたタカラバコは、分厚い本をドロップした。


「えっと、これなに?」


 早速駆け寄ったアリス、しかし表紙にある文字が読めずに、俺に困ったような目を向けてきた。


 エリとともにゆっくりと向かい、本を拾い上げる。


「世界で一番最強の元素図鑑……そうか」


 日本語で書かれたそれは、間違いなく向こう(、、、)の本だ。


「これでどうするの?」

「エリの新しい名前のヒントがこの中にあるんだ」

「そうなの?」

「ああ」


 結構分厚くで重さのある図鑑を、別のタカラバコを机代わりにして、その上において、開いた。


「まずはエリスロニウムから調べよう、周期表だな」

「しゅうきひょう?」

「水兵リーベ僕の船……」


 学生時代頑張って覚えて、それで見慣れた形の周期表が書かれているページを開き、目当てのものを探す。


 エリスロニウムだから、「Er」かな。

 それを目当てに探すと……あった。


 原子番号68番のEr、それのページを開く。


「なにっ!」

「なになに、どうしたの?」

「エルビウム……いや確かにこれもErなんだが……それじゃElか? ……ない」

「ねえ、一体どうしたの? あたしにも教えてよ」

「エリスロニウムがないんだ」

「ない?」

「ああ。わかりやすく言うと、この表は118人の精霊の名前全部が書かれてる表だ。15番フォスフォラス()、79番アウルム(Au)、113番ニホニウム(Nh)


 今一緒に住んでる、自分のダンジョンを離れて夜は屋敷に住んでる精霊達の名前を挙げていく。


「テルル、シリコン、アルセニック、セレン、プルンブム、サルファ……」


 更に一緒に住んではいないが、関わったダンジョンや精霊の名前を挙げていく。


「全部あるのに、エリスロニウムだけないんだ」

「どうしてなの?」

「わからん……○○ニウムだし、無いはずはないんだが……」

「ねえ、この中のどこかにエリエリの名前が書かれてるって事は?」

「そうだな、周期表じゃ無くて別の調べ方で行くか」


 今度は索引の方を開く。

 パソコンからスマホと、検索機能のついた端末を使うようになってから、ほとんどやらなくなった辞書や図鑑の調べ方。


「えっと……エリスロニウムエリスロニウム……ない……」

「ないの?」

「ああ」

「なんか別の書かれ方をしてるとか?」

「別の書かれ方?」

「ほら、メラメラがフォスフォラスとか、そういうの?」

「メラメラなんてそれこそ書かれてる訳がないが……」


 他に何かないか、と思考を巡らせる。

 エリ、エリスロニウムに関する事を記憶の中から掘り起こしていく。


「……偽クロム」

「……(びくっ)」


 つぶやいた瞬間、ビクッとなったエリ。


「ごめん! そういう意味じゃ無くて、そう呼ばれてたな、って事」

「……(こく)」


 小さく頷き、再び俺にしがみつくエリ。

 迂闊だった、思ってても口に出してはいけない言葉だったな。


 こんな単語が図鑑の中にあるとは思えないが、一応索引で引いてみる。

 すると。


「……あった」

「え?」

「嘘だろ、あるのかよ」

「本当? あったの?」

「ああ、ちょっと待って」


 偽クロムがあるというページをめくる。


 23番、バナジウム()


 18世紀に発見されて一旦はエリスロニウムと名付けられたが、最初の鑑定ではクロムと認定されてしまう。

 その後バナジウムという元素が見つかった後、かつてのエリスロニウムと同じものだったと判明した。


 つまり、エリスロニウムはバナジウムだった。


「ねえねえ、なんだったの?」

「バナジウム」

「え?」


 せっつくアリスでは無く、俺の袖を掴んだままのエリに言う。

 最初は元素の名前をつけるのはどうかと思っていた。


 エリスロニウムからのエリ、その可愛い名前を変えて元素の名前に付け直すのはどうかと思ったが。


「君の名前はバナジウム。美の女神フレイヤの異名ヴァナディースにちなんでつけられた美しい金属」

「……!」

「バナジウム、それが君の本当の名前だよ」


 それを告げた瞬間、エリの――バナジウムの体と、少し離れた所にあるダンジョンが同時に輝きを放ちだした!

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