表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
364/611

364.拒絶の爆風


「ダメだったよリョータ」

「そうか」


 仲間達が見守る中、アリスがダンジョンに入ろうとして、しかし入り口で阻まれて中には入れなかった。

 彼女のレベルは2。


 上限も現在のレベルも2という、ファミリーの冒険者組の中では俺に次ぐ低いレベルだ。


「じゃあ……」


 振り向き、エルザとイーナを見る。


「私達の番ですね」

「今確認したけど、私もこの子もレベル1だった」

「うん」


 頷き、まずは目で感謝の気持ちを伝えた。

 ファミリーの非冒険者組の二人、エルザとイーナ。


 いわば頭脳派の二人は、俺の頼みを聞いてくれて、その上前準備として自分達のレベルを確認してくれた。


 その二人は連れたって入り口に向かい――入った!


 入った二人はすぐに出てきた。


「普通に入れました」

「何も違和感とか無かったね」

「そっか」

「と言うことは、やっぱりレベル制限、しかもレベル1制限と言うことになるわね」


 ずっと様子を見守っていたセレストが眉間に皺を作りながらそうつぶやいた。


「そういうことになるな。他にレベル制限ダンジョンは?」

「あれ? 聞いてないの?」

「何を?」

「セルから」

「……金がドロップする所もレベル制限なのか?」


 頷くセレスト。

 俺は驚いた、そして納得した。


 セルが何故そこまで俺にこだわるのか、原因の一端が分かった気がした。


 が、それは今どうでもいいことだ。


 今はまずこのダンジョン。

 エリスロニウムの事をどうにかするのが前提だ。


 俺の気持ちを読み取ったのか、セレストは更に現状分析をすすめた。


「レベル1制限と言うことなら放っておいても問題はないと思うわね。レベル1のままの冒険者なんて、全ダンジョン協会が把握してる中でも五指に満たないから」

「……ゼロじゃないんだな? もちろん俺以外で」

「ええ、二人、いえ三人いたかしら」

「能力は?」

「不明よ、ただしレベル1でダンジョンに入れる冒険者なのだから……」


 セレストと俺は、同時にアリスの方を見た。

 レベル1でこそなくレベル2だが、彼女も同じ系統だ。


 かくいう俺も、レベル1だけどドロップSでここまで来れたのだ。


「隠してる奥の手があると考えた方がいいわね」

「ってことはやっぱり放っておけん。むしろ危険だ」

「……そうね」


 苦々しい顔で頷くセレスト。

 他にレベル1冒険者がいる以上放っておけん。


「今すぐに攻略するです?」


 エミリーがやや心配そうに聞いてきた。


「ああ、すぐに入る。……この屋敷の庭にピンポイントで出現したのは決して偶然じゃないだろうからな」

「分かったです」

「あたしもはいろっか」


 アリスが申し出てきた。


「アリスが?」

「うん、あたし、もう一個食べればレベルが1に下がるから」

「なるほど」


 大分前にそうしようと思った事だ。


 魔法の実は一つ食べるごとに魔法を一つ覚えられる(俺のドロップSで処理すれば二つになる)。

 しかし二つ目以降、食べるごとにレベルの最大値が1ずつ下がっていく。


 その制限があるために、通常はレベルカンストした状態で一つだけ食べるのがセオリーだ。


 しかしアリスの最大レベルは2、しかも戦闘は仲間のモンスターに任せるサモナースタイルだ。

 もう一個食べても本人の能力はほとんど変わらない――が。


「ホネホネ達は入れるのか?」

「え? あっ」


 ハッとしたアリス、仲間のモンスターに指示を出す。

 スケルトンの仲間、ホネホネが彼女の肩から飛び降りて、エリスロニウムの入り口に向かっていく。

 すると――阻まれる。


 人間達と同じように、見えない壁に阻まれた。


「ありゃ」

「やっぱりそうか」

「ごめん、役に立てなくて」

「いいさ、ああ、りょーちんだけはスタンバっててくれ。必要な時は何かしらの合図をだすから」

「分かった!」


 りょーちんというのはアリスの魔法「オールマイト」で召喚する俺っぽいヤツだ。

 一日に一回だけ、三十秒間召喚出来る「俺とまったく同じ強さの」ヤツだ。


 多分レベルも1だろうが、召喚時間が30秒だからいざって時の為に取っておくことにした。


「よし……じゃあ行ってくる」


 その場にいる仲間達にぐるりと視線を一周させて、ゆっくりとダンジョンの中に入る。


 エリスロニウム、地下一階。

 改めて入ると、いかにもダンジョンらしくない場所だ。


 降りてきたそこは芝生がある、面積がざっと20平方メートルくらいの小さな島だ。


 そのサイズの島がいくつもあって、間にせせらぎを奏でる小川が流れている。

 島と島の間は簡単な橋で繋がれていて、ちょっとした迷路っぽくなっている。


 ある意味ダンジョンと言えばダンジョンだが。


「のどかだな……」


 思わずそうつぶやく程、今までのダンジョンと違う感じの場所だ。

 進むことを考えないのであれば、ここでブルーシートを広げてピクニックをしてもいい感じの場所だ。


 が、そうする訳にもいかない。


 思いっきり遠くに見えている、下に続く階段のある島を見つけて、そこに向かう為の島と橋のルートを考える。


「ん?」


 ふと、ふわふわとした何かが漂ってきた。


 風船――いやシャボン玉か。

 そんな感じでふわふわ浮かんでいる、ソフトボールくらいの綿毛? っぽいのが現われた。


 しばらく眺めていた。

 綿毛はふわふわ飛んでいるだけで、敵意とか一切感じられない。


 モンスターじゃなくてダンジョンスノーのようなものかな――と思って手を伸ばして触れてみると。


 ドオオオーン!!!


 触れた瞬間、ものすごい爆発が起きた。


 目の前が真っ白になって、爆音で耳がキーンとなった。

 肌がヒリヒリする。


「爆弾か!?」


 状況を把握しようとして、真っ白になった視界を必死に戻そうと目を何度も瞬かせる。


 そうして視力が戻ってきたが――驚愕。


 綿毛が――同じサイズだが、真っ赤な綿毛がいつの間にか俺を取り囲んでいて、更に一直線に向かって来た。


「くっ!」


 反射的に腕をクロスさせて防御態勢を取る。


 ドオオオーン!!!

 また爆発が起きた。


「くっ、痛い!?」


 二発目の爆発はさっきよりもダメージが大きいように感じた。


 これは受けちゃいけないヤツだ。

 地を蹴って、距離を取ってかわそうとする――


「体が重い!?」


 すぐに異変に気づいた、体が思うように動かなかった。

 そしてもう一発食らった!


 地面を転がって今度こそ距離を取る。


 一つ体感で分かった。

 パワーも、スピードも、そしてダメージも。

 喰らうたびに能力がさがって、ダメージが上がってる。


 それはつまり――


「デバフか!?」


 ダンジョン攻略の為に常時持ち歩いてる荷物の中からポータブルナウボードを取り出して、使う。


―――1/2―――

レベル:1/1

HP B(-3)

MP B(-3)

力  B(-3)

体力 B(-3)

知性 B(-3)

精神 B(-3)

速さ B(-3)

器用 B(-3)

運  B(-3)

―――――――――


―――2/2―――

植物 S(-3)

動物 S(-3)

鉱物 S(-3)

魔法 S(-3)

特質 S(-3)

―――――――――


 一瞬で能力を確認して、更に迫ってくる赤い綿毛をかわす。


 理解した事は二つ。


 あの爆発の一回で、能力が全部1下がること。

 そして戦闘能力は下がるが、魔法やポーションと同じように、俺のドロップ能力はまったく下がらない。


「――なら!」


 俺は避けつつ、銃を抜いて無限回復弾を込めた。

 魔法を唱える――クイックシルバー。


 今でも日課で仲間達に使っている。

 顔を洗い歯を磨くレベルで日課になっていて、あえて考える事もなくなった魔法。


 一回で全魔力を消費するが、代わりに戦闘能力のどれかを1ランク上げる。


 それを連射、無限回復弾と交互で連射。

 経験上足りるであろう二十回くらいやって、ポータブルナウボードで確認。


―――1/2―――

レベル:1/1

HP A(-2)

MP A(-2)

力  A(-2)

体力 A(-2)

知性 A(-2)

精神 A(-2)

速さ A(-2)

器用 A(-2)

運  A(-2)

―――――――――


―――2/2―――

植物 S(-3)

動物 S(-3)

鉱物 S(-3)

魔法 S(-3)

特質 S(-3)

―――――――――


「よしっ!」


 BからAに戻った。

 クイックシルバーはこの世界に元からあった魔法だから、Sまでは戻せないけど、Aまでならいくらでも戻せる。


 もう一度喰らって、無限回復弾とクイックシルバーを使う。

 体力と精神ともにAなら一発は耐えられる、そしてクイックシルバーと回復弾で対処出来ることがわかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >「そういうことになるな。他にレベル制限ダンジョンは?」 >「あれ? 聞いてないの?」 >「セルから」 >「……金がドロップする所もレベル制限なのか?」 セルからの依頼は、ずっと放置状…
[一言] 魔法の実だとレベル上限が下がるけど裏ニホニウムでのレベルダウンの実だったら普通にいけるのでは? デメリットもないしアリスなら一つだけだし簡単で問題なし! モンスターも外からは入れなくても中に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ